AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター


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安全な「夜の支配」を実現する白色蛍光体NVG

上級准尉5 ジョセフ・W・サンティー
FVL(Future Vertical Lift, 将来型垂直離着陸機計画)CFT(Cross Functional Team, 機能横断型チーム)生存技術アドバイザー
アラバマ州レッドストーン工廠

アメリカ陸軍が歴史上最強の夜間戦闘組織であることに議論の余地はない。この組織は、世界中のいかなる組織よりも、多数のNVG(night vision goggle, 暗視眼鏡)対応機を保有し、多様な任務を遂行してきた。陸軍のパイロットおよびその他の搭乗員が何世代にもわたって使い続けてきたNVGは、AN/AVX-6航空用暗視眼鏡システム(Aviator’s Night Vision Imaging System, ANVIS)と呼ばれる緑色蛍光体を用いたNVGであった。このNVGは、1985年に導入されて以来、世界各国で訓練および作戦を実施するすべての陸軍機で用いられ、陸軍による「夜を支配」を可能にしてきた。しかし、そのような絶対的地位を誇っていたNVGにも、時間の経過と技術の進歩に伴い、追いつかれ、追い越される時がきたのである。

夜間における任務の遂行

アメリカ陸軍は、これまで20年近くにわたって、主にCOIN(counterinsurgency, 対反乱)脅威に対応してきたが、今後は、MDO(Multi-Domain Operations, マルチドメイン作戦)およびLSCO(Large-scale combat operations, 大規模戦闘作戦)において想定される、さらに殺傷性の高い脅威への対応することが求められている。このような状況を踏まえ、陸軍航空は、9.11以前には頻繁に行われていた超低空水平飛行を実施することによって、すでに現実のものとなりつつある対等もしくはほぼ対等な敵のIADS(integrated air defense systems, 統合防空システム)に対抗しようとしている。今日の搭乗員たちは、敵のIADSまたはA2D2(anti-access/anti-denial, 接近阻止・領域拒否)の脅威に対応するため、暗闇を活用しながら、より遠くから、より低い高度で敵地に侵入し、敵が何十年にもわたって準備してきた兵器システムが存在する戦場において、任務を遂行しなければならないのである。

現有NVGの老朽化

現在使用されているNVGには、2002年に導入されたタイプ7の映像増強管(image intensifier tube, IIT)が使用されている。導入当時の装備数は、16,902台以上であった。

図1:映像増強管(image intensifier tube, IIT)の相対解像度(画像:C5ISRセンター)

この映像増強管は、その20年の経済的耐用年数(economic useful life, EUL)に到達しつつあり、2022年度以降は、NVGの故障発生率が増大し、映像増強管の性能が劣化し、最終的には更新しなければならなくなると見積もられている。このため、経済的耐用年数に到達したタイプ7の映像増強管を、より高い性能指数を有する白色蛍光体を用いたタイプ8の映像増強管に更新するための事業が進められている。

NVGの性能指数とは?

NVGの性能指数は、SN比(signal to noise ratio, 信号対雑音比, SNR)と解像度(Resolution, inline pair/mm)の積で求められる(性能指数=SN比 x 解像度)。 解像度が高いということは、視力が良いことを意味する。新型映像増強管の解像度(視力)の向上を可能にしたのは、マイクロチャンネル・プレート(microchannel plate, MCP)の改良であった。図1は、変調伝達関数(modulation transfer function, MTF)に応じた解像度の度合い、つまり、映像増強管が個々の空間周波数を再現できる度合いを表している。

図2:低照度環境下における、現行(左)と新型(右)映像増強管に緑色蛍光体を用いた場合の光電陰極強度の比較(写真提供:C5ISRセンター)

 

図3:高照度環境下における、緑色蛍光体と白色蛍光体を用いた新型映像増強管の光電陰極強度の比較(写真提供:C5ISRセンター)

新型映像増強管の特徴とは?

白色蛍光体を用いたタイプ8の新型映像増強管(White Phosphor High Figure of Merit IIT, WOP HFOM IIT)を組み込んだNVGには、次のような特徴がある。

・現行のタイプ7の映像増強管と新型のタイプ8の白色蛍光体映像増強管とは、見た目が全く同じであり、取付および操作に関し、新たな訓練を行う必要がない。また、あらゆる用途において、現行の映像増強管と同じ機能を有している。改良されたマイクロチャンネル・プレートを使用する新型映像増強管は、蛍光体に新しい色を用いているだけではなく、それ以外の性能についても向上が図られている。

・現行の映像増強管の性能指数が1800であるのに対し、タイプ8の新型映像増強管は、それをはるかに上回る2300から2400の性能指数を発揮する。一方、その視力はほぼ同じ(現行:20、新型:25)であるが、奥行き知覚とコントラストが向上している。白色蛍光体を用いた新型映像増強管は、月の高度が低い場合や星明りだけしかない場合などの低照度環境での性能に優れている。改めて言うまでもないことであるが、指揮官による任務の完遂を可能にするためには、搭乗員の安全確保のための手段を講じることが重要である。

・空軍研究所が2017年に行った研究によれば、新型の映像増強管は、従来の映像増強管(陸軍契約コマンド・プロジェクト番号:18-240R)と比較して、光電陰極感度の約30パーセントの増加に加え、ハレーションの減少(0.85mmの要求に対し、約0.65mm)およびSN比の増加(28lp/mmだったものが33lp/mmへ)などの改善が確認されている。

図2は、低照度環境下における現行の映像増強管と新型の映像増強管との映像の明瞭さの違いを示している。図3は、高照度環境下における現行の映像増強管と新型の白色蛍光体映像増強管とのハレーションと解像度の違いを示している。

図4:白色蛍光体と緑色蛍光体のスペクトル強度の比較(航空医学研究所技術通達2017-12)

新型映像増強管の特性とは?

現行のNVGは、旧システムで用いられていたP22緑色蛍光体に代わってP43緑色蛍光体を用いていたが、新型の映像増強管は、P45白色蛍光体を用いている。図4は、白色蛍光体と緑色蛍光体のスペクトル強度を比較したものである。白色蛍光体(P45)のスペクトル強度は、緑色蛍光体(P43)と酷似しているが、青色成分(400~450nm)が増加している。図5は、白色蛍光体(P45)と緑色蛍光体(P43)のハレーションの大きさを比較したものである。

短期的スケジュール

NVG整備担当者が新型の映像増強管への交換を行えるようになるまでには、まだ、いくつかの問題が残っている。

まず、この映像増強管を使用するためには、陸軍の認定手続きを完了しなければならない。この記事を執筆している時点で、陸軍が保有している新型映像増強管は、COTS(Commercial Off-The-Shelf, 民生)品だけである。兵士機動センサー・プロダクト・マネージャーの航空用暗視眼鏡システム・アシスタント・プログラム・マネージャーであるロナルド・ボワスト氏によれば、新型映像増強管の認定試験は、現在実施中である。この取り組みを支援するため、2019年1月、TCM-AB(TRADOC Capability Manager for Aviation Brigades, TRADOC航空旅団能力マネージャー)アメリカ陸軍大佐ライアン・コイルは、旧型映像増強管の新型映像増強管への更新手続きの開始を承認した。

図5:緑色蛍光体(左)と白色蛍光体(右)のNVGのハレーションの大きさ(航空医学研究所技術通達2017-12)

また、新しい規格に適合した映像増強管の生産を行わなければならない。陸軍がCOTS品の映像増強管を認定したならば、2つの企業により、それぞれ毎月約2、300個の新型映像増強管が製造される予定となっている。

試験及び評価

新型映像増強管の評価は、陸軍及び空軍研究所、航空医学研究所(U.S. Army Aeromedical Research Laboratory, USAARL)、第160特殊作戦航空連隊などの複数の機関において実施されている。これらの機関においては、ベンチテストに加えて、運用者による飛行試験も行われている。ベンチテストにおいては、新型のタイプ8映像増強管と従来のタイプ6およびタイプ7映像増強管の間には顕著な改善が確認できたが、P45白色蛍光体とP43緑色蛍光体の間にはわずかな違いしか確認できなかった。ただし、運用者には、P45白色蛍光体を好む者が圧倒的に多かった。

航空医学研究所の調査結果には、次のように述べられている。「実験室での測定では、解像度、利得、ハレーション・サイズ、ABC(automatic brightness control, 自動輝度調節)などに関し、白色蛍光体と緑色蛍光体のNVGの間に有意差が見られなかった。しかしながら、飛行試験の結果によれば、ほとんど満場一致で白色蛍光体のNVGが支持された。このことは、試験を行ったパイロットたちが、実験室では測定や評価ができない、特別な考慮要件を持っていることを示すものである。」(航空医学研究所技術通達2017-12)

航空教育研究センター(U.S. Army Aviation Center of Excellence, USAACE)のパイロットたちは、現在、暫定的な安全性改善通報(Airworthiness Release, AWR)に基づき、試験的な運用を行っている。最新の安全性改善通報は、昨年9月に航空設計部局(Aviation Engineering Directorate, AED)から発出された、CH-47に関するものである。この暫定的な安全性改善通報は、新型映像増強管の審査が終了した時点で無効となる。航空設計部局は、既存のNVGに関する安全性改善通報の中に新型映像増強管に関する記述を追加する予定である。

補給および生産

プログラム・マネージャーのボワスト氏によれば、新型映像増強管に関しては、AMAM(Aviation Maintain Action Message, 航空整備実施指示)の改訂が既に完了しており、第9種航空部隊資金を用いた発注が行える状態になっている。また、この件に関する陸軍省司令部の通達も、最終草案の段階にあり、数週間以内に発出される予定である。

装備化計画

新しい映像増強管の戦闘航空旅団への供給は、損耗更新により行われる。つまり、損耗したタイプ7の映像増強管から、順次、タイプ8の映像増強管に更新されることになる。新型映像増強管の価格は、1個あたり約2,600ドルと見積もられており、そのための費用は、各戦闘航空旅団の第9種地上資金から支出される。つまり、1コ戦闘航空旅団のすべての映像増強管を更新するためには、190万ドル近い費用が必要となる。なお、各戦闘航空旅団の航空支援大隊は、NVGの改造に必要な準備を既に完了している。

NVGの将来

MDO(Multi-Domain Operations, マルチドメイン作戦)およびLSCO(Large-scale combat operations, 大規模戦闘作戦)において想定される戦場は、現在直面しているいかなる戦場よりも複雑なものになると予想される。低空飛行の頻度の増加は、「頭を上げて、外を見る」ためのシステムの必要性を増大させる。この必要性を満たすため、2つの新しいシステムが企業において開発されつつある。その1つはENVGB(enhanced night vision goggle binocular, 改良型NVG双眼鏡)であり、もう1つはIVAS(integrated visual augmentation system, 統合視覚増強システム)である。これらのシステムは、統合ディスプレイ(統合ヘッド・アップ・ディスプレイなど)を使って、搭乗員が頭を上げてコックピットの外を見ることを可能にし、状況把握を容易にすることであろう。

また、これらのシステムの重量は、現行のNVGよりも軽くなると見積もられており、パイロットの負担軽減にも役立つと考えられている。さらには、IVASにAR(augmented reality, 拡張現実)能力を付与し、DVE(degraded visual environments, 悪視程環境)において、地形地物や飛行指示を合成表示できるようにする計画もある。これらのシステムは、クルー・チーフやドア・ガナーにも、目標情報やシステム状態を提供し、任務および機体に関する状況認識を容易にすることであろう。

結 論

陸軍航空は、ヘリコプターを用いたすべての任務を夜間に遂行できる能力を保持し続けなければならない。MDO(Multi-Domain Operations, マルチドメイン作戦)においては、敵の高度なIADS(integrated air defense systems, 統合防空システム)を潜り抜け、所望の地点に戦力を投入できなければならないからである。現有のNVGの映像増強管を白色蛍光体を用いたものに交換することは、搭乗員たちの夜間暗視能力を著しく向上させることであろう。

参考文献:
・ACC Project 18-240R, High Figure of Merit White and Green Phosphor Night Vision Goggle Update Force Development Evaluation, May 2018, Air National Guard Air Force Reserve Command Test Center, Tucson AZ
・Rubinstein, J, Chambers, S, Stachowiak, C, Fedele, P, Starvis, K, Merritt, J, A Human-Performance Comparison of Green-Phosphor and White-Phosphor Night-Vision Goggles, Aug 2017, US Army Research Laboratory, Aberdeen Proving Ground, MD
・MFR, Recommendation for Modification AN/AVS-6, Aviator’s Night Vision Imaging System (ANVIS) with White Phosphor Intensifiers, 4 Jan 2019, USAACE, Ft. Rucker AL
・MFR, High FOM Green and White ANVIS Limited Laboratory and Flight Results, USAARL Technical Memorandum 2017-12, US Army Research Laboratory, 6 June 2017, Ft. Rucker, AL

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    NVGと言えば緑色という常識も、変わりつつあるようです。

  2. 管理人 より:

    原文には、非常に多くの頭字語(NVGのような略称)が使われています。通常、Aviation Assetsでは、頭字語はそのまま使っているのですが、この記事にはあまりにも多いため、基本的には和文に翻訳した言葉に置き換えています。また、原文では、航空機用NVGを「航空用暗視眼鏡システム(Aviator’s Night Vision Imaging System, ANVIS)」と呼んでいるのですが、和文に置き換えても冗長なので、NVGという言葉に置き換えています。