AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

FRCE(東部艦隊即応センター)が新たなV-22整備業務を遂行

HMX-1において運用されているMV-22Bオスプレイの最初の入場機をV-22整備ラインから清掃・塗装施設へと牽引しようとしているFRCEの輸送専門官。この機体の在場期間は150日の予定であったが、122日で払い出しを完了し、28日間の短縮に成功した。入場から機能点検飛行への移行までに要した期間は74日間であった。(撮影:6月17日)
PMI-2の作業工程の一部である塗装作業を完了したMV-22Bオスプレイ。この機体のPMI-2整備が予定よりも短期間で完了したことを受け、数ヶ月後には別の機体が入場する予定となっている。
MV-22Bオスプレイの塗装の仕上げ状態を検査するFRCE塗装工場の作業長ロン・グレイ。
MV-22Bオスプレイと機体清掃剥離工場の職人であるライリー・ローレンス。(撮影:7月23日)

ノースカロライナ州チェリー・ポイント海兵隊航空基地FRCE(Fleet Readiness Center East, 東部艦隊即応センター)は、8月11日、アメリカ大統領のヘリコプター輸送を任務とする海兵隊飛行隊が使用するMV-22Bオスプレイの整備作業を初めて完了し、その歴史に新たな章を開いた。

FRCEは、オスプレイの整備を開始した2009年以来、海軍および海兵隊機の改修およびPMI(Planned Maintenance Interval, 定期機体整備)を実施してきた。今回、整備支援を行ったHMX-1(Marine Helicopter Squadron 1, 第1海兵ヘリコプター飛行隊)は、「ナイトホークス」と呼ばれ、「グリーントップ」と呼ばれるMV-22Bオスプレイを多数保有している。PMI-2を完了した最初の機体が運用に復帰したならば、他の機体についても、今後数ヶ月以内にの当該整備が開始される予定である。

「HMX-1のV-22は、注目度の高い重要な任務を遂行する機体です」とFRCEの指揮官であるトーマス・A・アトキンソン大佐は述べた。「V-22のPMI作業および塗装作業が迅速かつ適切に完了したことを誇りに思っています。機体の状態が良好だったため、予定より1か月近く早く、払い出しを完了することができました。」

HMX-1は、海兵隊における強襲支援ヘリコプターおよび関連装備品の実用試験実施部隊でもある。この部隊に対しするFRCによる支援の長い歴史が、新しい整備作業を成功させるための基盤を作り上げてきたのである。1967年に大統領ヘリコプターの整備を開始したFRCEは、これまで、HMX-1が装備する「ホワイト・トップ」と呼ばれるVH-3Dシー・キング(「マリーン・ワン」)およびそのエンジンであるT58-400Bだけではなく、同じくこの飛行隊が装備するCH-46およびCH-53ヘリコプターの整備も実施してきた。FRCEに拠点を置くVH-92サポートチームは、新しいマリーン・ワンとして使われる予定のVH-92A「ホワイト・トップ」機の技術および兵站支援を担うことになっている。

FRCEの職人たちは、HMX-1の最初のオスプレイの整備を予定在場期間よりも28日短い期間で完了した。150日間の期間が予定されていたが、わずか122日で機体を払い出した、とFRCEのV-22部長であるアンドリュー・ロックは述べた。また、V-22の整備ラインが整備入場から機能点検飛行(functional check flight, FCF)への移行を74日間で完了したことが整備期間の短縮に大きな役割を果たした、と付け加えた。

「入場機が着陸してから、わずか74日で機能点検飛行可能な状態になるとは、全くもって信じられないことです」とロック部長は述べた。「これは、FRCEの能力の高さを示すものだと言って良いでしょう」

ロック部長によれば、このHMX-1に所属するオスプレイのPMI-2整備は、当初、バージニア州のクワンティコ海兵隊基地で実施することになっていた。しかし、チェリー・ポイントの職人たちを長期間にわたってクワンティコに派遣することは、FRCEのV-22整備ラインに兵站支援上の問題をもたらすことが予想された。このため、FRCEとHMX-1は、最初のV-22を目標在場期間150日でFRCEに送ることで合意した。 FRCEがこの目標を達成したならば、HMX-1の残りのオスプレイの整備もFRCEで行われることになったのである。

「それは、試作機のようなものだったのです」とロック部長は言った。「目標とすべきスケジュールが明示されていました。当初は、入場する機体の状態が不明だったため、実際の在場期間がどのくらいになるのか見当が付きませんでした。PMIのため分解し始めたときに、何が見つかるのか分からなかったのです。」

PMI(Planned Maintenance Interval, 定期機体整備)は、定められた期間ごとに行われる整備作業である。PMI-1においては、機体の分解、状態の評価、必要な整備の実施、システムの更新および機体の組み立てが実施される。PMI-2においては、PMI-1において実施される項目に加えて、機体の再塗装が実施される。いずれの場合にも、FRCEへの入退場は、機体を飛行させて行う。PMIは、海軍の統合整備プログラム(Integrated Maintenance Program)の一部を構成し、機体構造の完全性を保証することを目的としている。

補給処(Dレベル)では、飛行隊(Oレベル)で行われる点検整備では発見できない問題を確認できる。「FRCEで発見される問題の多くは、PMIでなければ発見できないものなのです」とロック部長は説明する。「たとえば、飛行隊においては、スポンソンから燃料セルを取り外して、その構造部材を点検することができません。FRCEでは、それを行うことができるのです。ただし、燃料セルを取り外した結果、構造部材に欠陥を発見した場合は、在場期間が数週間延びることになります。」

現在整備中のHMX-1の機体は、全般に「クリーン」であり、問題が発見されることが少なかった、とロック部長は言った。このことが、入場から機能点検飛行までの移行が極めてスムーズに行われた理由だった。HMX-1の次のV-22の入場は、この秋に予定されている。ただし、最初のオスプレイが150日の在場予定期間よりも早く払い出されたため、その入場日は、前倒しになる可能性もある。

「150日の在場日数で整備が完了するかどうかについては、いくつかの懸案事項がありました。それを解決できたことを嬉しく思っています」をロック部長は言う。「我々は、それをやり遂げました。そのことは、我々の指揮官がまさに欲していたことだったのです。」

入場から飛行点検までの期間を短縮できたことは、私やチェリー・ポイントのV-22の職人たちが大きな誇りとするところです、とロック部長は語った。そして、その要因のひとつには、大統領を支える海兵隊員を支援することによる士気の高まりもあった、と付け加えた。

「部隊整備ばかりが注目されがちですが、その背景には、FRCEの多くの職人たちの多くの努力があることを忘れてはなりません」ロックは言った。そして「職人たちは、すべての事業の裏方として、その実行を支えているのです」と続けた。「兵站が充実さえしていれば、我々の技術と能力をもってできないことは何もない、と私は信じています」

FRCEは、ノースカロライナ州で最大の整備、修理、オーバーホール、および技術サービスの実施機関である。4,000人を超える軍属、軍人、および契約労働者が勤務しているこの期間の年間予算は、10億ドルを超える。アメリカ海軍、海軍航空システム・コマンド、艦隊即応センターの隷下部隊として機能しつつ、艦隊への支援を提供している。

PMI-2が完了したMV-22Bオスプレイの前でポーズを取るFRCEの職人たち。この機体のPMI-2整備が予定よりも短期間で完了したことを受け、数ヶ月後には次の機体が入場する予定となっている。
                               

出典:NAVAIR News, Naval Air Systems Command 2021年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

アクセス回数:1,410

コメント投稿フォーム

  入力したコメントの修正・削除が必要な場合は、<お問い合わせ>フォームからご連絡ください。

1件のコメント

  1. 管理人 より:

    「Fleet Readiness Center East」は、「東部艦隊即応センター」と翻訳していますが、「艦隊を即応させるための指揮所」と勘違いしそうで、あまり適切な訳語ではないと思っています。

    この場合の「Fleet」は「航空機」のことです。「Fleet Readiness Center」は、「East」を含めて7箇所あるのですが、いずれも航空機を対象としているようです。

    また、「Readiness」は、「修理」や「技術業務」を包括するものを指しているようです。アメリカ陸軍にも「Systems Readiness Directorate」という組織があり、その業務には、修理だけではなく技術業務も含まれているようです(https://www.avmc.army.mil/Directorates/SRD/)

    よって、「東部艦隊即応センター」というよりは、「東部航空機即応維持センター」のような呼び方がふさわしいと思います。
    しかしながら、アメリカ海兵隊岩国基地などが「艦隊即応センター」と訳しているので、現状では、それに従うしかありません。

    防衛省などが適切な訳語をあててくれるのを期待したいと思います。