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海兵隊航空100周年

海兵隊少佐 ジェフ・マッキール、米海兵隊

1912年5月22日、アルフレッド・A・カニンガム少尉が、メリーランド州アナポリスの海軍航空基地に出頭し、「航空関連業務」を行った時に海兵隊航空の歴史は始まった。それから4年の間に、更に4名の海兵隊員が加わって操縦技能を修得し、海兵隊航空の最初の核を形成した。

第1次世界大戦の直前だったこともあり、海兵隊航空の成長は、ゆっくりとしたものであった。海兵隊が航空を導入したのは、米軍の中で最後であったが、最初に飛行部隊を海外に完全に訓練・装備された状態で派遣したのは海兵隊であった。米国の第1次世界大戦への参戦に伴い、ドイツ軍の潜水艦を駆逐するため、第1海兵航空中隊(the First Marine Aeronautic Company)をアゾレス諸島に派遣したのである。海兵航空は、第1次世界大戦が終結した後も、ハイチ、ドミニカ共和国、ニカラグア(「バナナ戦争(訳者注:第一次世界大戦後にアメリカ合衆国によって行われた中央アメリカ諸国に対する軍事介入)」として知られるている会戦)および中国における国外作戦を支援し続けた。また、まだ未完成ではあったものの、前方運用態勢の整備が開始され、それは海兵航空の特質となっていった。

海兵航空が最も成長を成し遂げ、第5海兵航空団(five Marine Aircraft Wings)の勢力がそのピークに達したのは、第2次世界大戦中のことであった。CAS(近接航空支援)の戦術および手順が考案・認可されたのも、この頃である。バナナ戦争中に始まった訓練に続いて、1943年のタラワの戦い(訳者注:第二次世界大戦中の1943年11月21日から11月23日にかけて、ギルバート諸島タラワ環礁ベティオ島(現:キリバス共和国)で行われた日本軍守備隊とアメリカ海兵隊との戦闘)の後、地上で戦う海兵隊員に対する海軍独自の効果的なCAS(近接航空支援)を実施する能力の向上が図られた。その際、敵地上部隊と戦闘中の海兵隊員と密接に連携した航空攻撃を行うため編成・派遣されたのが航空連絡派遣班であった。海兵隊は、他の軍以上にCASを有効活用し始めていたが、第2次世界大戦が終わると、朝鮮戦争が始まるまでは、海兵隊と海兵航空の大幅な縮小が行われた。

ただし、海兵隊の新たな戦術および技術の利用拡大は、途絶えることがなく、海兵隊航空戦力の基盤は、今日まで維持され続けた。1947年には、海兵隊によるジェット機の運用が開始され、朝鮮戦争において海兵隊が自らCASを行うことの効果が実証された。また、朝鮮戦争の初期においては、後に大統領専用ヘリコプターを運用する飛行隊として知られるようになったHMX-1(第1海兵隊ヘリコプタ開発飛行隊)が設立され、戦闘行動に参加した。

海兵隊空地任務部隊は、韓国およびベトナムにおける紛争を通じ、有効な戦闘力として成長を続け、今日においても、ベトナム戦とほぼ同じくらいの頻度で戦闘任務を遂行している。戦術の向上と、機動展開作戦での汎用性向上のために設計された新型航空機の導入(AV-8BおよびMV-22ならびに将来のF-35B等)を通じて、海兵隊は、その革新を継続し、将来の課題に対応するための革新を続けているのだ。

一方、技術および戦術の飛躍的な発展および過去10年間の世界各地における継続的な作戦の実施は、関連する危険性を増大させ、その低減が必要となった。このため、海兵航空は、各種安全プログラムを推進し、航空安全施策の充実を図った。特に、NAMP(Naval Aviation Maintenance Program, 海軍航空整備プログラム)やNATOPS(Naval Air
Training and Operating Procedures Standardization, 海軍航空訓練運用手順標準化プログラム)などは、事故発生率の低下に大きく寄与した。また、航空安全担当士官コースやクルー・リソース・マネジメントなどのプログラムは、安全確保のための学術的基盤を確立した。これらの安全プログラムが航空科部隊に確固たる安全文化を醸成・定着させるに従って、海兵隊および海軍の事故発生率は、着実に改善されてきた。

このような改善に努めていたにも関わらず、この10年間は、海兵航空の安全確保にとって、最も困難な時期であった。2004年の海兵隊におけるクラスA航空事故の発生率は、過去30年間で最悪となったのである。合計18件のクラスA航空事故が発生し、11名の海兵パイロットの死亡と20機の航空機の破壊または深刻な損傷をもたらした。このため、海兵航空は、2004年、過去2年間も航空事故が増加傾向にあったことを踏まえ、海兵隊航空の全レベルを通じた積極的な航空リーダーシップの徹底を図った。海兵隊司令官の方針書1-05により、数多くの安全施策が開始され、航空事故の多発傾向に対し、積極的な対応が行われたのである。その施策は、基本基礎の徹底から各種安全施策実施状況の確実な報告にまで及んだ。また、この方針書は、航空部隊指揮官を対象とした特別教育プログラムの実施を指示し、安全文化を指導すべき立場にある者たちの意識の鼓舞を図った。これらの組織的かつ徹底的な取り組みは、今日まで着実に継続されてきたのである。

これらの諸施策のひとつに、航空教育システムがある。これは、操縦における基本基礎の徹底とリーターシップの発揮を焦点とした訓練を包括的かつ継続的に実施するものである。また、今後の航空安全担当将校の指定にあたっては、指揮官経験者であることを要件とすることが明示された。これらの諸施策において、海兵隊が重視しているのは、安全文化と既存の指揮系統との融合である。これらの積極的施策の実施により、クラスA事故は、継続的に減少し続けてきた。「イラクの自由」および「不朽の自由」作戦、「アフリカの角」への派遣任務、人道支援および災害派遣作戦、および全世界におけるMEU(海兵機動展開隊)の継続的な支援活動の最中にあっても、より顕著なクラスA事故発生率の低減が見られた。

一方、海兵隊は、戦闘即応態勢を維持するにあたり、その独特な戦闘用装備および生来の前方重視思想によってもたらされる課題に直面している。これらの課題に対応するため、海兵隊は、時として、その装備と能力を見直したり、即応態勢を継続的に維持するための方針を決定しなければならなかった。最も良く知られているのは、2000年に2件のクラスA事故を発生させ、3年間に渡って飛行任務中断を余儀なくされたMV-22である。この間、海兵隊は、この国防省全装備の中で恐らく最も特殊な航空機の安全性と運用性能の確立に、最大限の努力を指向したのであった。オスプレイは、任務中断が解除されて以降の5年間、海兵隊が保有するすべての回転翼機の中で最良の航空事故発生状況を維持し続け、自らが並外れた能力を有する戦闘多目的ツールであることを証明してきた。今日では、国家から海兵隊員に対し、安全を確保しつつ任務を完遂するように求められたならば、いつでも、どこでも、積極的に使用することを進言できる航空機となったのである。

戦術的リスク・マネジメント・コースは、MAWTS-1( 海兵隊航空兵器訓練第1飛行隊)において、将来の兵器・戦技教官たちに対する教育を行っている。このコースは、戦術に関する新たな中核要員を養成し、戦闘航空技能教官や運用リスク管理者に必要な資質を付与するものである。このプログラムは、海兵隊が戦術的練度と兵力維持のバランスを保持することの重要性を示すものでもある。

海兵隊が将来、国家の要求に応える場合の状況は、継続的に変化し続けていることが明らかである。この不確かな未来には、敵の脅威下にある不慣れな飛行場からの機動展開飛行などが含まれている。この複雑な運用の中に、事故発生の可能性を見出すことは極めて容易なことである。それにもかかわらず、包括的かつ効率的な安全文化を構築できる基盤を自ら確立できたことは、海兵隊の誇りとするところである。

海兵隊司令官のジェームズ・F・アモス大将は、安全および兵力維持に関する政策声明において、「安全は、即応態勢に関わる考え方の中心に位置するものであり、戦場における我々の行動の結果論であってはならない」と説明している。運用中における安全確保の概念は、海兵隊にとって、アメリカの即応機動展開戦闘能力を発揮するための礎であり続けてきた。

これまで以上に多角的かつ動的な将来作戦が予想される中、今日、そして明日の戦場において、海兵隊航空が最も洗練された戦力であり続けることを願うとともに、これからも積極的に即応性と安全性の確保に努めてゆきたい。

 マッキール少佐は、海兵隊司令部海兵隊司令官安全部航空安全部長である。

出典:APPROACH, May-June 2012, Naval Safety Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    このたび、米海軍安全センターから、APPROACHに掲載された記事を翻訳し、本サイトに掲載することについて、承認を得ることができました。電子メールで依頼をしてから返信をいただくまで、約3日間という極めて迅速な対応でした。

  2. 管理人 より:

    本記事の原文が発行されたのは2012年ですが、海兵隊はこの時点で既にV-22を用いた任務の遂行に強い自信を持っていることが分かります。

  3. 管理人 より:

    MEU(Marine Expeditionary Unit)の訳語を「海兵機動展開隊」に修正しました。
     海兵隊の部隊名の訳語は、防衛省(陸自)と米軍(海兵隊)で異なっていますが、本サイトでは、防衛省が使用している訳語に統一したいと思います。
     平成18年版防衛白書には、次の記述があります。「米海兵隊は、さまざまな事態に対し、迅速かつ柔軟に展開して対応するという機能を果たしており、その戦力は陸上、航空及び支援部隊が1つのまとまりとして迅速に展開できるよう組織されており、海兵空地任務部隊(Marine AirGround
    Task Force)とよばれています。そのまとまりの単位として、米海兵隊においては、その規模別に① 海兵機動展開部隊(MEF 数万人程度(通常4万人程度))② 海兵機動展開旅団(MEB 3,000人~2万人程度)③ 海兵機動展開隊(MEU 2~3,000人程度。)があります。」
     なお、防衛省(陸自)のHP等においても、防衛白書と同一の訳語が用いられています。