退役操縦士によるオスプレイ操縦の所感
先日、オスプレイ飛行大隊のファミリー・ディのイベントにおいて、MV-22のシミュレーターを操縦する機会を得ました。それを断ることなんて、私にできるはずがありません。
何年も前、ノースカロライナ州のニュー・リバー海兵隊航空基地にオスプレイ初号機が配置される前に、オスプレイのシミュレーターを見たことがありました。その時、私をエスコートしてくれた若い中尉は、「オスプレイは、飛ばすのは簡単だが、上手に飛ばすことは難しい航空機です」 と説明してくれました。その説明が正しいということが、今回分かりました。
オスプレイの計器盤は、すべてグラス・コックピット化されています。私が退職したときには、アナログの計器が一般的でしたので、まずこれに違和感を感じました。しかし、そこに表示された情報は、旧式のアナログ計器よりもはるかに判読や理解が容易でした。実際にシミュレーターを操縦してみると、オスプレイの操縦は(少なくとも、着陸しようとするまでは)滑らかであり、安定した飛行が可能でした。
ただし、当たり前のことですが、着陸時には何回も操作に遅れが生じることがありました。操縦して分かったことは、この航空機は、どの飛行モードにおいても、完全に固定翼機のように飛ぶわけでも、完全にヘリコプターのように飛ぶわけでもないということです。オスプレイは、固定翼機ともヘリコプターとも全く違う航空機なのです。
私にとって問題だったのは、ほとんどの飛行時間をヘリコプターで経験した老いぼれパイロットであるがゆえに、操作に遅れが生じると(海軍や海兵隊のすばらしい訓練のおかげで)本能的にヘリコプター・パイロットとして反応してしまうことでした。それは、シミュレーターの操縦中に困った問題を引き起こしました。固定翼のパイロットであれば、固定翼機を飛ばしているように反応してしまうに違いありません。繰り返しますが、これは決して良いことではありません。「ティルトローター」の操縦において本能的に適切な反応ができるのは、自分の飛行時間の大半をオスプレイが占めているパイロットだけなのです。
比較的「新人」に属するこの航空機が部隊に配備されるとき、その飛行大隊や派遣隊の指揮官たちは、回転翼機グループか固定翼機グループのどちらかの出身であることでしょう。このことは、海兵隊、空軍および近い将来の海軍のオスプレイ・グループに、他のグループとは違った、特異な状況をもたらすに違いありません。ベテラン・パイロットたちの豊富な経験は、この航空機を操縦する上で利点にも欠点にもなり得るからです。成熟した操縦技量、状況理解および判断能力という利点と、身に着いた本能的な反応という欠点の組み合わせは、致命的な間違いを引き起こす可能性があります。
オスプレイは、ある特定の飛行プロファイルにおいて、ヘリコプターとも飛行機とも異なる挙動を示します。それは、オスプレイに独特な挙動です。私の知る限りの情報では、最近のオスプレイ事故の発生状況は、この航空機に対する私の見方を裏付けているように思われます。
現在、私たち(海軍と海兵隊)は、財政的縮小のあおりを受け、飛行時間の減少を余儀なくされています。かつての歴史を振り返ると、このことは航空安全に重大な問題を引き起こす可能性があります。1970年代の後半から1980年代の初めにかけ、F4ファントム・グループにおいて、ベテラン・パイロット(軍での飛行時間が1,000時間から2,500時間)による事故が多発したことがありました。オスプレイ・グループが現在直面している状況は、これとよく似ているのです。
当時、その状況を改善するのに役立ったのは、パイロットの訓練および技量回復におけるシミュレーターの活用と飛行計画の適切な立案でした。これらは、オスプレイが現在直面している状況においても役立つに違いありません。
出典:APPROACH-MECH, Naval Safety Center 2016年01月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
「オスプレイは、飛ばすのは簡単だが、上手に飛ばすことは難しい航空機です」個人的には、この言葉は、オスプレイの特性を非常に良く表していると思います。