AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

タキシング中の不安全

上級准尉3 コディ・T・スクーノヴァー
第1-3攻撃偵察大隊A中隊
カッターバッハ, ドイツ

それは、ドイツのアンスバッハでのひどく寒い夜のことでした。その頃、私は、レディネス・レベル2に昇格したばかりの操縦士のひとりと地域慣熟訓練(local area orientations, LAO)を行っていました。その訓練は、順調に進んでいました。操縦操作は素晴らしかったし、状況判断や無線通話にも問題がありませんでした。地域慣熟訓練を終了し、より難しいトラフィック・パターンで訓練を行うようになっても、安心して操縦を任せるられるようになっていました。飛行に関する状況判断についても、自分で行わせるようになっていました。

その夜は、地域慣熟訓練の一環として、エンジン停止前にホット・リフューエルを行うことにしました。有視界飛行方式の通報点で飛行場への進入を要求しました。タワーへの無線通話を終えたとき、C列線で別のアパッチがメイン・エンジンの始動を要求しているのが聞こえました。この無線が重要な鍵だったことを若き副操縦士と私が知るのは、後になってからのことでした。

ダウンウインドに進入すると、いつものとおり着陸前チェックを行いました。副操縦士は、ベースから旋回してファイナルに入ると、滑走路に向けて降下を開始しました。その時、C列線に駐機していた航空機のブレードが回転し始めたのが見えました。前席の副操縦士が着陸操作だけに集中してしまい、他の航空機の状況を把握できていないとは、思ってもいませんでした。副操縦士は、滑走路の末端に着陸すると、ウエスト誘導路に向かってタキシングしはじめました。

着陸後のチェックを始めた私は、少しの間、視線を下に移していました。その間に、タワーがタクシーを許可する無線が聞こえました。私はそれを自分たちに対するものだと思っていましたが、実際には、C列線にいる別の航空機に対するものでした。その無線が聞こえている間に、副操縦士が私に質問を始めたので、全部を聴き取ることができなかったのです。

すでに着陸していたこともあって、私の警戒心は薄らいでいました。視線を下げていた私は、副操縦士がウエスト誘導路の停止位置標識を超えて進んでいることに気づきませんでした。視線を上げると、私たちが許可を受けないまま、別のアパッチと同じ場所に向かっていることに気づきました。その機体の操縦士たちも、私たちが彼らの移動経路に侵入しようとしていることに気づいていなかったと思います。

その瞬間、私は異状を感じ取りました。操縦桿をつかみ取ると、思いっきりパワーを使って機体を急停止させ、さらには後進させて、その航空機に進路を開けました。私の記憶が正しければ、衝突を回避しようとするあまり、機体がウィリーするくらいだったと思います。

そのアパッチが私たちのそばを通り過ぎるとき、その機体のパイロットたちがこちらを見ているのが分かりました。その機体のブレードからは、10フィートも離れていませんでした。無事に通り過ぎたのが確認できると、やっと状況を理解しました。照明が完備した飛行場でホット・リフューエルを行うためにタキシングするという平凡な行動が、重大な事故を引き起こすところだったのです。そして、その責任は間違いなく私にありました。

私は、副操縦士にその航空機が見えていたのか、そして、それがタキシングしていることを知っていたのかを尋ねました。副操縦士は、他の航空機がいることさえ知らなかったと言いました。私たちは、かなりの時間を費やしてAAR(after-action review, 任務後の検討会)を行い、次の金曜日の操縦士ブリーフィングでこの不安全を紹介しました。

私たちの不注意と操縦ミスにより、99.99%回避可能な事態を引き起こすところでした。0.01%の確立でしか発生しない壊滅的な事故により、私と副操縦士、そして他の航空機のパイロットさえも命を失うところだったのです。その後は、着陸後も警戒を怠らないようにしています。タキシング中に視線を下げたり、副操縦士に指示がないまま停止位置標識を通過させたりすることは、絶対にあってはならないのです。

参考:カッターバッハ飛行場(ドイツのアンスバッハ近郊)の衛星写真(Google Mapから訳者が引用したもの)
                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2022年10月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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