詳細な地上滑走指示をいだだけますか?
空港の舗装に描かれているマーキングやサインの目的は、離陸、着陸および地上滑走するパイロットに必要な情報を提供することです。ただし、副操縦士がその情報が何を表しているかを理解していなければ、これらのマーキングやサインは何の役にも立たないのです。
問題なのは、これまで、機長が副操縦士に詳細な地上滑走指示を指示してきたことです。考えてみてください。副操縦士に「ここで曲がれ」、「ここで止まれ」、そして「OK。そのまま前進」などと言っていないでしょうか?こんなことは、やめるべきなのです。なぜならば、副操縦士にマーキングやサインを自分で解釈させていないからです。つまり、理由を理解させることなく、手順を暗記させようとしているからです。
問題なのは、操縦士が地上誘導員またはタワー(管制塔)からクリアランス(管制承認)を受けたにもかかわらず、副操縦士がどこに行くのかを理解できず、機長に頼り切っているということです。さらに問題なのは、副操縦士が機長に話しかけようとしている時、機長は無線機で何かを聞き取ろうとしているかも知れないということです。操縦課程では、空港のマーキングやサインの解釈までは教育していません。操縦課程やその後の部隊訓練で、常に詳細な地上滑走指示を与えられてきた副操縦士は、手順を理解するよりも行動を真似ることに習熟してしまっているのです。
ここで、私の経験を紹介したいと思います。数週間前、私は、飛行時間が250時間ちょっとのある副操縦士に地上滑走を行わせていました。旋回を開始するのが遅れ、機体が大きく傾むくことがありました。副操縦士にはよくあることです。しかし、彼の場合は、3秒から5秒毎に過剰な修正操舵を行い、ブレーキをかける傾向がありました。大丈夫かと尋ねると、副操縦士は、尾輪を誘導路の中央線に合わせることができず、落ち着かないのです、と言いました。私は他の状況に注意をはらい、衝突しないことに集中するように笑いながら言いました。
副操縦士が、地上滑走を続けている間に、他の航空機に進路を譲るため、管制塔への当初の要求は取り消したということを伝えました。引き続き前進し、隣接した誘導路まで進み、停止位置マーキングで停止するように指示しました。すると副操縦士は、私の方を見て「それって何ですか?」と聞くのです。驚いたことに、副操縦士は、我々がどの誘導路にいるのかも、私が何を言っているのかも、全く理解できていなかったのです。そこで私が何をしたかですって? 詳細な指導です。
私がこの経験をお話したのは、航空科職種全体で地上滑走間の事故が増加しているからです。この種の事故が増加している原因は、経験の不足と操縦課程における地上滑走に関する訓練の不足ではないでしょうか? それは、大きな問題の中の小さな要因にすぎないかも知れませんが、一因になっていると思えるのです。機長は、常に、副操縦士を即座に援助できる態勢にあるとは限りません。副操縦士であっても、運用上の環境を理解し、状況を認識する必要があるのです。
パイロットという職業は、生涯学習が必要な専門的な職業です。操縦課程を非難し、「マーキングやサインについて、教育を受けたことがないぞ」というのは簡単です。防止することの事故を再発させる前に、専門家として、個人の責任を認識し、勉強すべきなのです。
ご参考までに
停止位置マーキングは、4本の黄色のラインで構成されており、そのうち2本が実線、2本が点線である。それぞれの線は6から12インチ離れており、滑走路または誘導路の幅いっぱいに描かれている。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年06月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
アクセス回数:1,830