AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

基本の遵守

上級准尉3 ジェイソン・L・リリー
3-2全般支援航空大隊B中隊
キャンプ・ハンフリーズ、韓国

チヌークを操縦したことがない人が、まず最初に知っておくべきことは、垂直方向の操縦を行うのがコレクティブではなく、スラスト・コントロール・レバーであるということです。そして、クルー・コーディネーションに関して、恐らくタンデム配置のアパッチに次いで、高いレベルの問題を抱えていることです。2人のパイロットの間に存在する広い空間が、相互の意思疎通を阻害するのです。月照度の低い夜間飛行においては、一方のパイロットからもう一方のパイロットの行動が見えないため、さらに深刻な問題を引き起こします。以下は、私の経験です。

それは、アフガニスタンでの典型的な夏の、月照度ゼロの夜のことでした。私は3機のチヌーク編隊の3番機の右側座席に搭乗し、3ヵ所のヘリコプター降着地域(helicopter landing zone,  HLZ)への強襲任務を行っていました。搭載地域までの飛行および強襲部隊の搭載、目標地域への飛行および同部隊の卸下、ならびに給油地点への飛行を、いずれも問題なく終了しました。編隊は、燃料補給を完了した後、APU(auxiliary power unit, 補助動力装置)を回したままの状態で待機しました。数時間後、地上部隊をピックアップできるという連絡がありました。この時点までは、すべてが計画どおりに進んでいました。

地上部隊の離脱を支援する際は、私が操縦することになっていました。地上部隊の隊員たちは、いつものように離脱用ヘリコプター降着地域の付近にある凹地の中で待機していました。ただし、その夜は、いつもと少し違うことがいくつかありました。地上部隊は、ある人物の身柄を確保しており、降着地域から離脱する際に解放することにしていました。その人物のバイクと羊の群れが近くにあったため、地上部隊は、ヘリコプター降着地域の付近にある唯一の建物である小屋に近い場所で待機していたのです。

機長と私は、進入開始までに現地の地形地物を把握できていました。地上部隊の真上を飛行しないようにするためには、その小さな小屋の上から進入する必要がありました。私は、小屋の奥に接地するように進入角度を浅く保っていました。前進を続けていると、機体が塵雲に包み込まれました。すると、機長が機体を接地させようとして、スラスト・コントロール・レバーを押し下げてしまったのです。その瞬間、左後方の降着装置が小屋に接触したように感じられ、機首が右下に傾きました。何とか姿勢を修正した私は、前進を続け、無事に機体を接地させることができました。この間、ダウン・ウォッシュで倒れたバイクが羊の群れの間を転がり落ちてゆきました。接地後は、通常どおりにランプを下げ、地上部隊を搭乗させました。

それ以降の行動は、計画どおりに進捗しました。現地から前方作戦基地に戻ると、搭乗員の一人が、左側燃料タンクの後端に大きな擦り傷があり、ランプ・ドアの外板にも小さな傷があることに気づきました。小屋に接触したのは、降着装置ではなく、胴体だったのです。もしそれが降着装置だったならば、降着装置が大きく損傷し、脱落してしまっていたかも知れません。

着陸間、方位、距離、高度に関しては、機長と私の間で十分なクルー・コーディネーションが維持されていました。しかし、その小屋については、それが障害になるということ以外には、何も言葉を交わしていませんでした。小屋との接触を避けるために前進し続けるつもりであるという私の意図や、接地させるためにスラスト・コントロール・レバーを操作するという機長の意図をお互いに伝え合えれば、このような事態は回避できたはずでした。たったそれだけのことを怠ったばかりに、危うく大惨事を引き起こすところだったのです。いかなる立場にあろうとも、すべての飛行のあらゆる場面において、クルー・コーディネーションという基本の遵守を怠ってはなりません。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2023年06月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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