AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

バード・ストライク

ダグ・バラード
第210航空連隊第3大隊
テキサス州フォート・ブリス

車が150ポンドの鹿に衝突すると、大きく破損し、場合によっては廃車になるかもしれません。120ノット(時速約222キロメートル)以上で飛行する航空機が5ポンドの鳥に衝突するとどうなるか、想像できるでしょうか? その損害が思った以上に大きく、人命にさえも影響しかねないということを知ったのは、2人の飛行学生と一緒に行った、ある晴れた日の訓練飛行のことでした。

事故が発生した時、右席に搭乗していた学生パイロットが操縦し、対気速度約120ノットで対地高度150フィートを水平に直進していました。左席に搭乗していた私は、視線を下げて無線機を調整していました。突然、大きな音がキャビンに響き渡り、ガラスや破片が飛んできました。操縦している学生を見て、キャビンの後壁まで続いている1羽の鳥の痕跡を確認するまでは、一瞬、何が起こったのか分かりませんでした。

操縦していた学生と私は、ブリーフィングで指導されていたとおり、ヘリメットのバイザーを下げていました。しかしながら、ジャンプ・シートに座っていたもうひとりの学生は、バイザーを下ろしておらず、顔中に飛んできた破片が当たってしました。最も近い場外着陸場に着陸すると患者後送ヘリの派遣を要請し、バイザーを下げていなかった学生を病院まで空輸してもらいました。幸いなことに、彼女の怪我は、軽傷で済みました。

その学生が勤務に復帰すると、バイザーを装着していなかった理由を確認しました。パイロット・ブリーフィングでは、飛行前の着意事項として、破片からから目を保護するため、ヘルメットのバイザーは常時下げておくように、いつも指導されていたからです。彼女の答えは、パイロット席に座っていないので不要だと思った、というものでした。この事故は、彼女にとって、大きな苦痛を伴う教訓となりました。

バード・ストライクは、毎年、多くの人命を奪い、数百万ドルの損害をもたらしています。ニューヨーク市のハドソン川に墜落したA-320エアバスの事故を覚えている人も多いでしょう。離陸直後にガチョウの群れがエンジンに衝突し、川に着水することを余儀なくされたのです。幸いなことに、搭乗者全員が無事に救助されました。アメリカ陸軍も例外ではありません。私の経験した事故のように、数多くのバード・ストライクにより、人命を失ったり、機体を損傷または喪失したりしてきました。

私は、事故後も、いろいろな機種で世界中を飛び回り、バード・ストライクが発生しやすい地上500フィート以下の飛行を繰り返してきました。その間も、軽微なバード・ストライクはありましたが、眼を保護するための処置についてブリーフィングで注意喚起し、自分自身も実施することを忘れたことはありませんでした。

一方、バード・ストライクの発生を防止するために、何かできることはないのでしょうか? まず、効果が期待できるのは、高度500フィート未満の飛行を努めて避けることでしょう。また、最近の研究では、鳥の視覚は非常に発達しており、灯火を使用すると、鳥が航空機を発見および回避しやすくするのに効果があることが分かっています。ただし、何もよりも重要なのは、バイザーを下げることです。それは、あなたの命を救うことにつながるのです。

知っていますか?

連邦航空局(Federal Aviation Administration, FAA)の報告によると、2019年に報告された民間機と野生動物との衝突は、17,358件でした。世界全体では、1988年から2020年の間の野生動物との衝突により、300人近くが死亡し、271機の民間および軍用機が損傷し、数十億ドルの損失が発生しています。また、その半数以上が7月から10月までの間に発生しています。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2022年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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