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陸軍航空の情報センター

着氷(アイシング)とは、友達になれません

リスク・マネジメント編集員

操縦課程を約1年前に卒業したばかりの私は、ある地方空港で、ある教官操縦士といっしょに計器気象状態(instrument meteorological condition,IMC)の訓練を行っていました。季節は春先で、天気は曇り、気温は氷点下でした。飛行前の気象ブリーフィングでは、予定していた飛行地域での着氷について、予報や報告がありませんでした。着氷が生じやすい時期でしたので、実機での訓練に問題がないというブリーフィングの内容を嬉しく思っていました。

地上試運転においては、着氷が予報されていませんでしたが、ブレード除氷装置の点検を行いました。点検の結果、すべての機能に問題はありませんでした。また、飛行中は、予防措置として、すべての防氷/除氷装置を使用することにしました。それから、計器飛行方式(instrument flight rule, IFR)によるローカルでの飛行を2時間実施し、雲中での計器進入を何回か繰り返しました。

右席に座っている私は、飛行中の通常の計器クロスチェックのたびに、アイス・レート・メーターを確認するつもりでいました。しかし、飛行時間と気象条件のどちらに関しても、経験の浅いパイロットであった私は、それを見逃しがちになっていました。最後の進入のためレーダー誘導を受けている最中に、アイス・レート・メーターが重度のアイシング状態を表示していることに気づきました。その時の高度は平均海面高度4,000フィート(地上2,000フィート)、計器速度は120ノットでした。アイス・レート・メーターは、100ノットの速度に合わせて校正されているため、表示されている状態は、実際の状態よりもわずかに重いはずでした。それでも、できるだけ早くその状態から離脱したいと考えました。

まだ雲中を飛行しており、空港はIFRの状態だったため、レーダー誘導を受けながら、最終進入を継続しました。ILSのグライド・スロープを使って降下中に、ドカンという大きな音がした後、甲高い異音が響きました。コックピットの計器をチェックしましたが、何も異常はありませんでした。このため、グライド・スロープを継続し、雲を抜けるとすぐに軍用エプロンに向かいました。

飛行後点検の結果、No.2エンジンのインレットに損傷が発見されました。整備員が詳細な点検を行いましたが、エンジン本体には損傷がありませんでした。ドカンという音の原因は、何だったのでしょうか? それは、飛行中にヘリコプターの機体に発生した、中程度の着氷(アイシング)によるものであると推定されました。グライド・スロープに従って降下中に、その一部がNo.2エンジンのインレットに入り込んだと考えられます。その結果、クラスCの事故に相当する損傷が発生したのでした。

この飛行は、貴重な教訓を与えてくれました。まず、重要なのは、完全かつ正確な気象ブリーフィングを受けることです。欲している情報が得られていないと感じた場合には、ブリーフィング担当者に対し、それについて具体的に質問すべきです。気象予報において、私が欲している情報のひとつは、雲頂の高さです。この情報は、IFR飛行中に着氷(アイシング)が発生した場合に重要なものとなります。

もう1つの教訓は、進入中の対気速度を下げるべきだったということです。対気速度を遅くすれば、氷が溶ける速度を遅らせることができ、安全な進入および着陸ができた可能性があります。着氷(アイシング)とは、友達になれません。陸軍のパイロットは、常にそれに備えておかなければなりません。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2021年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 早田 より:

    明けましておめでとうございます。今年も勉強させていただきます。

    • 管理人 より:

      明けまして、おめでとうございます。
      皆様に少しでもお役に立てる情報を発信できるように、今年も頑張りたいと思います。
      どうぞ、よろしくお願いいたします。