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戦闘における損益分析

上級准尉2 ザック・ムナー
第6騎兵連隊第6飛行隊C部隊
フォートドラム、ニューヨーク

私の所属していた偵察チーム(Scout Weapons Team)は、アフガニスタンで、ある車両部隊を支援していた。その車両部隊は、アサダーバードからコナー川渓谷のFOB(前方運用基地)ボスティックまでの補給品の輸送を行っていた。アサダーバードでの燃料再補給を完了した我々は、その車両部隊のところへと戻ろうとしていた。FOBボスティックまでの経路の概ね中間位置を飛行中、敵と接触したマッド・ドック16から緊急航空支援の要求を受けた。マッド・ドック16は、渓谷の中央を流れるコナー側の西岸に、敵の攻撃が予期されていた道路に沿って配置されていた警戒部隊であった。

戦闘加入後、マッド・ドック16から敵と撃ち合いになっているという報告があった。敵は、川の東岸にある丘のふもとにある岩場から機関銃を射撃していた。マッド・ドックの隊員たちは、4台のMRAP(Mine Resistant Ambush Protected, 耐地雷・伏撃防護車両)に分乗し、退避していた。その車列の位置を直ちに把握した我々は、敵の位置を12.7ミリの曳光弾で指示するようにマッド・ドックに依頼した。各車両の射手が、丘の上の別々な場所に向かって射撃していたからである。「目標に向けて20発発射する」と回答があった。

長機に搭乗していた私は、目標を確認した。僚機に搭乗していた空中部隊指揮官は、敵陣地に対する制圧射撃の実施を命じた。長機である我々は、旋回して最初の進入を行い、約1,500メートルの距離から攻撃を開始し、2発のロケット榴弾および150発の12.7ミリ弾を発射した。我々は、僚機が射撃しやすくなるように、目標の約800メートル手前で左に離脱した。離脱を開始すると、マッド・ドックから、敵は射撃位置を移動し、目標を航空機に変換したと考えられる、という通報があった。数秒後、僚機が無線で叫んだ。「射撃を受けている...射撃を受けている!」

我々は、機首方位をもとに戻し、僚機の離脱を支援しようとした。改めて戦闘加入を宣言した我々は、僚機の離脱を掩護するため、残りの5発のロケットを敵に向けて速やかに発射した。右席のパイロットが武装を12.7ミリ重機関銃に切り替えようとしたとき、2発の曳光弾が飛んできて、右ドアの横3メートルくらいのところを通り抜けた。次に、3発の曳光弾がローター・ディスクの左上1.5メートル位のところを左から右にかすめた。私が「射撃された、射撃された!」と叫んだ。右席のパイロットは、直ちに回避行動をとった。私は、僚機に無線で、射撃を受けたが被弾しておらず、攻撃を続行する、と連絡した。私には、射撃を受けた僚機を掩護しようとして、敵に近づきすぎていたことが分かっていた。機体を曳光弾がかすめた時、目標からの距離は400メートルくらいしかなかった。

その後、空中部隊指揮官の機体よりも後ろを飛行する形になっていたが、もう一度前に出て、長機を交代した。長機の位置に戻ると、再攻撃の準備を行った。今度は、敵の有効射程の手前で離脱できるように、進入する前にその距離を確認した。弾薬が少なくなっていたので、あと一回しか攻撃できないことが分かっていた。マッド・ドック16は、まだ同じ位置から射撃を受けているが、その量は明らかに減少している、と報告してきた。私は、あと一回の攻撃分の弾薬しか残っていないが、FARP(Forward Arming and Refueling Point、弾薬燃料再補給点)に戻る前に「ウィンチェスター(呪われた屋敷)」に飛び込むことを伝えた。攻撃態勢を取った我々は、1,800メートル手前で攻撃を開始し、1,000メートル手前で離脱することを申し合わせた。今度は、攻撃を実施している間、長機および僚機のいずれも敵の射撃を受けずに済んだ。マッド・ドック16は、敵の射撃が完全に停止した、と報告してきた。戦場から離脱した我々は、アサダーバードで燃料補給を行った。

FARPにおいて、機体を確認したが、幸運なことに、どこも損傷を受けていなかった。燃料および弾薬の再補給を行った後、北に向けて飛行し、マッド・ドックと再び合流した。マッド・ドックからは、我々が戦場を離脱して以降、敵からの射撃を受けていない、と報告があった。我々は車列と一緒に北上した後、任務を終了した。

教訓事項

いかなる状況にあっても、常に損益分析を行わなければならない。確かに、マッド・ドック16は危険にさらされていたが、航空機をそれよりもさらに危険な状態にさらす必要があったであろうか? MRAPに搭乗し、800メートルの距離から敵の射撃を受けている隊員たちは、どのくらいの危険にさらされていたのであろうか? 特定の行動方針を選択する前に、このような問いかけを行うことが必要なのである。
可能ならば、飛行前に、このような状況についての飛行前および任務ブリーフィングを終えておくことが望ましい。それぞれのブリーフィングにおいては、その時点での状況における焦点を見据えた損益分析を行わなければならない。状況は常に異なるものであり、飛行中に新たなリスクがもたらされる可能性もあるが、事前のリスク分析は、現地における個人の判断をより適切に行うための基礎なのである。

参 考
この任務の成功のカギは、搭乗員間の意思の疎通および相互の連携であった。各機の搭乗員は、それぞれが重要な役割を担っていた。戦闘であろうが、訓練であろうが、航空機の搭乗員は、常に連携を維持しなけらばならない。戦闘において、飛行中に複数機による作戦を立案することは、あたりまえのことになりつつある。飛行中における作戦の計画・実行を適切に行って、あらゆる任務を完遂することが指揮官の責務なのである。

出典:KNOWLEDGE, March 2018, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    機種が明記されていませんが、口絵の写真や記述されている武装の種類などからOH-58Dカイオワであると推定されます。

  2. 管理人 より:

    注意していただきたいのは、この記事が掲載されいるのは運用に関する雑誌ではなく、安全に関する雑誌である「Knowledge」であるということです。ここに米陸軍のCRM(Composite Risk Management)(陸上自衛隊のCrew Resource Managementとは異なります)の考え方が表れていると思います。