AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

安全の大切さを理解した時

ジェイソン・ウッド
アイダホ陸軍州兵第1-183航空大隊E中隊
アイダホ州ボイシ市ゴーウェン・フィールド

後期課程を卒業したばかりの新兵は、安全のことなんて何も考えていないものです。私が陸軍に入隊したのは、10年間、民間人として働いた後のことでした。建設現場で働いていた私は、壁伝いに歩いたり、足場を上ったり、屋根板を貼ったりというような作業を行っていましたが、落下防止などのための個人用保護具(personal protective equipment, PPE)を使ったことなんかありませんでした。防護メガネや防音器具すらも与えられていなかったのです。仕事の内容は分かっていましたが、安全文化というようなものは、作業員の間に全く浸透していませんでした。会社の私たちへの態度は、「そのためにたくさんの給料を払っているんだ。仕事をやる奴は、他にいくらでもいるんだぞ!」という感じでした。

民間の会社を辞めて軍に入隊した後も、かろうじて自分自身の安全だけは守れるようにはなったものの、安全に関する規則や理論については、まだ「蚊帳の外」という感じでした。そんな私が安全の世界を知ったのは、原隊に配属されてからのことでした。陸軍航空のすべてが安全に関係しているということを学んだのです。また、各種の訓練を行う際には、恐怖に満ちた数々の安全ブリーフィングも受けてきました。しかし、私が安全の大切さを本当に理解できたのは、ホット・リフュエル訓練に初めて参加した時のことでした。

24時間体制でFARP(orward arming and refueling point, 燃料弾薬再補給点)を開設していた我々のところには、四六時中ヘリコプターが燃料を求めて飛んできていました。コンクリートの着陸点には、必要な通路を確保しつつ、パイロットが機体を適切な場所に着陸させ、給油を受けられるようにするための表示が行われていました。進入禁止エリアとして指定されていた場所のひとつが、テールローターであり、駐車場の「駐車禁止」エリアのような格子模様で表示されていました。ただし、ヘリコプターの場所が変わると、テールローターの位置が表示範囲から外れる場合もありました。このため、常に周囲を確認しながら行動することが求められていました。

夜間訓練に参加した私は、AH-64アパッチへの燃料ノズルの接続を担当していました。私のバディであるスミス2等兵は、私の後ろで消火器を準備していました。燃料補給を終え、ホースを定位置に戻した私たちは、列線から歩き出しました。コンクリート上に表示された境界線ばかりを見て歩いていたスミスは、航空機の位置がずれていることを忘れてしまっていました。私は、指定された通路上を歩く彼が、アパッチのテール・ローターに向かって真っすぐに進んでいることに気づきました。大声を出しましたが、ヘリコプターの騒音が激しく、個人用保護具で耳がふさがれているため、彼には聞こえないようでした。彼に向かって突進した私は、その体を半分つかみ、半分タックルして、安全な方向に跳ね飛ばしました。そして、回転していて、ほとんど見えない状態のテール・ローターを指差しました。スミスは、うなずき、私に感謝してくれました。我々は、列線を離れ、その危機一髪の出来事を忘れようとしていました。

しかし、私の行動は、他の人にも知られることなってしまいました。一部始終を見ていた列線安全係が、小隊長に報告したのです。数日後、私を呼び寄せた小隊長は、私がとった行動に感謝し、安全賞として素晴らしいポケット・ナイフをプレゼントしてくれました。そのナイフを手にした時、私は、自分の行動がスミスの命を救ったのかもしれないということをやっと理解したのでした。

兵士という職務は、本質的に危険なものです。一瞬の不注意が、致命的な結果をもたらす可能性があります。私が自分の仲間が危険にさらされていることを認識できたのは、中隊が行っていた訓練とそれで身につけられた状況認識のおかげです。任務を安全に完遂するために必要なツールを兵士に提供することも、陸軍における部隊の重要な役割なのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年11月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

アクセス回数:1,312

コメント投稿フォーム

  入力したコメントを修正・削除したい場合やメールアドレスを通知したい場合は、<お問い合わせ>フォームからご連絡ください。

1件のコメント

  1. 管理人 より:

    私も2回ほど、同じような状況で半分つかまれ、半分タックルされたことがあります。
    (つかんだり、タックルしたりした経験はありません。)