AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター


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30セントのワッシャがもたらした不安全

上級准尉3 マイケル・ブッシュマン
ナショナル・トレーニング・センター 運用グループ イーグル・チーム
カリフォルニア州フォートアーウィン

イラクのバラドで行われたその任務は、いつもの夜と同じように始まりました。それは、いつもと同じような任務、同じような時程、同じような飛行前点検でした。副操縦士と私は、バグダッド上空で地上支援任務を行う2機のアパッチ編隊の僚機として飛行する予定でした。機体に不具合が生じた場合に備え、予備機の飛行前点検も長機の搭乗員と一緒に行いました。その後は、いつもどおりに変更事項の確認を行った後、機体に乗り込んでエンジン始動を開始しました。

最も信頼している整備員から、この機体がフェーズ点検を終えたばかりであると聞いていた私は、十分な注意を払いながら地上試運転を行いました。試運転は順調に進み、すべてのシステムが正常であることが確認されました。バックアップ制御システムのチェックが完了した我々は、機体を離陸させました。

パワーチェックが完了すると、長機に連絡し、ノース・スポットまでのタクシー移動の指示を待ちました。長機が離陸したならば、その後方を追従すると伝えました。HITチェックが完了すると、長機は、管制塔に南方向に向けて離陸する準備が完了したことを通報しました。コレクティブを引いた時、通常よりも重いことに気づきましたが、操縦系統にも、重量重心にも異状は感じられませんでした。長機が離陸し、双方の機体が5フィートのホバリングを行いました。長機のダウンウォッシュと砂塵が消えたならば、長機に続行しようと思っていました。

しかし、ほんの数秒の間にコレクティブ・レバーの動きが急激に重くなり、スムーズに操作できなくなってしまいました。トルクの急上昇を防ぐため、コレクティブが動いたら、すぐに押し戻さなければならないような状態でした。砂塵から抜け出し、長機の後方に同じ高度で追従した後、前席の副操縦士に状況を伝え、コレクティブ・レバーの動きを妨げている物がないかどうかを確認させました。副操縦士からは、問題ないという答えがありました。私も、自分のコレクティブ・レバーの状況を確認しました。その時、出発するという無線連絡が長機からありました。私は、「こちら2番機、機体に異常あり」と報告しました。

先輩パイロットである長機の機長兼編隊長は、冷静に状況を判断し、行うべき故障探求手順についてアドバイスをしてくれました。前席のコックピットでペン、鉛筆、ジュース缶などがコレクティブに引っかかっていないかをもう一度確認した後、副操縦士に操縦を交代させて、後席のコックピットも詳細に点検しました。どちらのコレクティブ・スティックにも問題が見当たりませんでした。副操縦からは、コレクティブを操作できないと報告があったため、私が操縦を交代し、Uターンしなければならないことを長機に連絡しました。編隊長は、重大な緊急事態に進展する可能性があると判断し、直ちに帰投するように指示してくれました。また、私の機体に随行しながら、管制塔に必要な連絡を行ってくれました。

我々は、まだ出発したばかりだというのに、攻撃モードに入らなければなりませんでした。コレクティブの拘束は、さらに強くなり、上下に操作するのが極めて困難になっていました。この状態では、ホバリング状態で機体を制御するのは、とうてい不可能だと思われました。バラドの攻撃ヘリコプター用駐機場の南端には、十分な地積のあるヘリポートがありました。私が離陸した最北端の位置から滑走着陸を行えば、十分な距離を確保できました。一方、少し離れた場所にあるアルファ・タクシーウェイも利用することができました。他の航空機も進入しておらず、滑走着陸を行うための、もっと広い地積もありました。また、もし必要になった場合には、レスキュー車両が素早く到着できるという利点もありました。しかし、最終的には、駐機場南端のヘリポートに着陸することを決心しました。

進入間、副操縦士は、対気速度と高度を読み上げてくれました。機速を約35ノットに維持し、教科書どおりの理想的な滑走着陸を行うことができました。そのまま地上滑走を続け、機体を駐機場まで移動させました。通常よりも速い速度でヘリポートに進入してくる機体を目撃した多くの地上要員たちが、機体まで駆け付けてくれました。

2分間の冷気運転を開始すると、副操縦士に機体から降り、私が信頼している、ある整備員を乗り込ませるように指示しました。ヘッドセットを装着した整備員にコレクティブを引いてみるように言いました。その整備員は、操作に予想以上の力が必要なことが分かったようでした。重大な不具合が発生していたことを理解し、こんな機体をどうやって飛ばしてきたのか想像できない、と驚いていました。

私は、機体を降り、装具を携行して予備機に向かいました。その日の任務は、予備機で無事に終えることができました。その不具合の原因を知らされたのは、次の日のことでした。たった30セントのワッシャ1枚が、機長席側のコレクティブ・ガイドに正しく取り付けられていなかったため、コレクティブ・レバーの動きを阻害していたことが分かりました。離陸するまでは正常に作動していたのですが、離陸のためコレクティブを引いたことにより、ワッシャがガイドに食い込み始めたと推定されました。ワッシャを正しく取り付けると、コレクティブ・レバーは正常に動くようになりました。

この不安全を振り返ってみると、すべてがうまくいったことにとても感謝しています。悲惨な結果につながりかねなかった状況を切り抜け、貴重な経験と安堵の笑顔を得ることができたのは、副操縦士だけではなく、長機の先輩パイロットの適切な対応があったおかげなのです。ただし、他の機長たちからは、アルファ・タクシーウェイを使った方が滑走着陸が容易であったし、レスキュー要員にも、あらかじめ連絡を入れておくべきであった、というアドバイスがありました。たった30セントのワッシャ1枚が引き起こした不安全は、私だけではなく、ほかの機長たちにも、少なからぬ教訓を与えてくれたようです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2021年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    「30-cent washer」は、そのまま「30セントのワッシャ」と翻訳しました。ちょっと安すぎる気がしたので、ひょっとすると「25セント硬貨より少し大きい」という意味なのかなとも思いましたが、ネットで検索した限りでは、そういう意味で使われることはないようです。