AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

意図的な降下?

上級准尉4 アーロン・T・ケルナー
ミズーリ陸軍州兵第135攻撃偵察大隊司令部および司令部付隊
ミズーリ州ホワイトマン空軍基地

かなり前のことですが、NVG飛行中に大失敗をしたことがあります。アリゾナ州ツーソン郊外の西部陸軍航空訓練機関(Western Army Aviation Training Site)のAH-64A教官操縦士課程を修了したばかりだった私は、操縦以外の教育課程への長期の入校を控えており、その前に追加の飛行訓練を行って、技量を定着させたいと思っていました。その時点では、所属部隊での最後の飛行を行ってから約2か月、後席に乗って夜間に飛行してからも同じくらいの期間が経過していました。アパッチの教官操縦士課程では、ほとんどの飛行を前席で行っていたからです。

その日の午後は、地元の空軍州兵の機体といっしょに共同航空攻撃任務に参加していました。その間、副操縦士として後席に搭乗し、所属部隊周辺の地形を再確認しつつ、後席での操縦の感覚を取り戻すことができました。その夜の飛行は、ある若手パイロットと一緒に行う、標準的な飛行経路を用いた昼間離陸・夜間帰投の任務でした。その後、近郊の戦術訓練場へと向かい、恒常的に利用している飛行場に立ち寄ってから、夜間飛行で逆順で所属部隊まで帰投することになっていました。

整備上の問題で機体を変更した後、所属部隊の所在する飛行場を出発し、まずは標準的な経路の飛行を問題なく終了しました。戦術訓練場においては、狭あい地への進入および超低空水平飛行を行いました。その後、飛行場に向かい、通常着陸を演練しました。次に、NVGを立ち上げ、進入・着陸を何回か繰り返しました。

NVG飛行というものは、自転車に乗るのとはわけが違います。通常、NVG飛行を1、2週間以上行わないと、ウォームアップに少し時間がかかるようになります。今回の訓練は、そのウォームアップを行うのが目的でした。夜間に訓練場に向かう前に、NVG飛行の可否を判断し、その感覚をよみがえらせることができました。

何回か同じパターンでの飛行を繰り返したのち、残りの訓練時間の都合もあったため、戦術訓練場に向かうことにしました。前席の副操縦士が操縦して、戦術訓練場への進入を開始しました。対地高度約1,200フィート、対気速度約110ノットで飛行中に、副操縦士が訓練場への進入に必要な無線周波数の変更と無線通話を行うため、後席の私が操縦を交代しました。

無線通話が完了したことを確認した私は、訓練飛行高度へとゆっくりと降下し始めました。そして、UHFを航空管制情報の周波数から部隊に割り当てられた周波数に変更しようとして、手を伸ばしました。コックピットの暗い照明の中でプリセットスイッチを手さぐりで探しましたが見つからず、手元に視線を落として探さなければなりませんでした。コックピットの反対側にある照度調整ノブを探し、照明を調整した後、UHFのプリセットスイッチに再び眼を移して、周波数を変更しました。

その時、前席の副操縦士が切迫した声で「機長、降下率を確認されていますか?」と言うのが聞こえました。頭を上げると、降下率が毎分1,000フィートをはるかに超えており、対地高度が400フィートよりも低くなっていることに気づきました。「ああ、分かっている」私は、意図的に降下していたように聞こえるように、平静を装いながら答えました。それから、急激な操作を行わないようにしながら安全な高度を維持した状態で水平飛行に移行すると、その後の任務を問題なく継続しました。

この小さな出来事が起こってから今日まで、何が起こるところだったのかを考え続けてきました。私と副操縦士が一緒に飛ぶのが初めてではなく、お互いの操縦に安心しきっていたらどうなっていたでしょうか? 副操縦士が、もっと臆病で、彼女自身よりも私の能力と判断力を信じて声を上げなかったらどうなっていたでしょうか? 訓練間の状況付与や飛行状態の流れに身を任せ、飛行前ブリーフイングを完全に行っていなければどうなっていたでしょうか? 十分な時間的余裕を確保したうえで水平飛行に移行できたでしょうか? そうだったことでしょう…いや、そうではなかったかもしれません。この小さな出来事は、はるかに悪い結果をもたらしたかもしれないのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2021年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    私が(自分の過去への反省を込めたうえで)一番問題だと思うことは、副操縦士に「意図的に降下していたように聞こえるように、平静を装いながら答え」たことだと思います。彼女にまた同じようなことが起こった時、同じように適切な確認を機長に対して行ってくれるでしょうか?