AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター


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訓練は生命を救う

上級准尉3 ジェフリー・S・ブランマイアー
ルイジアナ州フォート・ポーク統合即応訓練センター
第5航空大隊陸軍航空救急分遣隊

戦闘地域におけるIMC(instrument meteorological condition, 計器飛行気象状態)での飛行というものがどんなものなのかは、それを行ったことのある者でなければ理解できません。若年操縦士である我々は、IIMC(inadvertent instrument meteorological conditions、予期していなかった天候急変等による計器飛行状態)に入ることの恐怖について教育を受け、「緊急」飛行時以外はその状態に陥らないように訓練されています。

我々は、IIMCを何が何でも避けるように訓練されているのにも関わらず、それに陥ってしまうというのは、どういうことなのでしょうか? 搭乗員たちは、天候が悪化すれば、方向転換して戻るか、速やかに着陸して天候が回復するのを待つように訓練されています。もちろん、IMCおよびIFR(instrument flight rule, 計器飛行方式)飛行について訓練、装備、準備ができており、それに熟練している搭乗員ならば、ATC(air traffic control, 航空管制機関)にIFRクリアランスを要求し、任務を継続することもできます。ただし、戦場においては、IFRクリアランスをもらえる航空管制機関なんてありませんし、着陸して待機するわけにもいかないのです。

この問題を解決するためには、GPSを使うしかありません。我々は、任務を遂行するため、毎日のようにGPSを使用しています。GPSは、IFR飛行のための航法機器として認められていませんが、正式な航法機器のバックアップとして使用することは可能です。このため、IFR飛行の訓練および状況把握だけではなく、戦場においても欠かせないツールとなっています。AO(Area of Operations, 作戦地域)では、「緊急GPS」進入と呼ばれるものが行われていました。IIMCに陥ってしまった場合に安全な場所まで飛行するためには、これに頼るほかなかったのです。

航空救急中隊の空中部隊指揮官としてアフガニスタンおよびイラクに派遣されていた私は、AOにおける患者後送支援任務を何度も行ってきました。ただし、航空の世界に足を踏み入れてから最初の7年間を攻撃ヘリ部隊で勤務しており、飛行任務の重要性を叩き込まれていました。このため、航空救急中隊においても、あらゆる機会をとらえて飛行訓練を実施し、ホイスト訓練、ピナクルアプローチおよびランディング、ダスト・ランディング、そしてもちろん緊急GPS進入も行ってきました。

当時の指揮官も、戦闘環境下での最悪のシナリオに対応できるように若手のパイロットを鍛えられるとして、この訓練を評価してくれていました。私自身も、若いパイロットたちと一緒にこの訓練を行うことによって、着陸進入時におけるGPS活用の有効性を認識することができました。若いパイロットたちは、最初の頃、GPSを使用した着陸進入要領をそれほどまでに頻繁に訓練する理由が分からないようでしたが、これから説明する患者後送任務があってからは、この訓練の価値を理解してくれるようになりました。

それは、月齢ゼロの暗い嵐の夜のことでした。夜の11時ころに、目を負傷した1人の兵士の空輸を要求する緊急救助要請を受領しました。砂嵐の影響で視程は300メートルもなく、飛行場はIFR(instrument flight rule, 計器飛行方式)でしたが、その患者はレベル3の治療を必要としていました。空軍の気象予報官から情報を得たのち、2機分の搭乗員たちは、安全を確保しつつ任務を遂行する方策にについて話し合い、必要に応じ、利用可能な器材を用いた計器進入を行うことにしました。

この任務を行わなければならないことに、誰も異存はありませんでした。ただし、随伴機の機長から、この任務は、機上任務指揮官と機長が搭乗した単機任務として実施すべきだという意見があり、それが採用されました。一旦、飛行場外まで飛行し、問題があれば、警備基地に帰投し、任務を中止することになりました。搭乗員ブリーフィングにおいて、私は、再度、任務中止の条件を明示し、患者後送を成功させるための最後の手段として、緊急GPS進入を行う可能性があることを伝達しました。

新たに編成された搭乗員たちは、患者後送機に飛び乗り、負傷した兵士を回収するため、離陸しました。警備基地の灯から離れると、対地高度90フィート以下、計器速度70ノットで飛行していても、地面がほとんど見えない状態になってしまいました。我々のクルー・コーディネーションは完璧であり、救難員および機付長は、パイロットの見張を援助し、高度および障害物を注意喚起してくれました。患者回収地点に無事に着陸し、IMCではあるものの、レベル3の治療施設まで飛行する必要があることを確認しました。

副操縦士と私は、計器飛行の準備を整え、計器進入用の経路図を取り出して、FOB(Forward Operating Base, 前方運用基地)に向けて離陸しました。FOBへの飛行は、それまで何ヵ月も行ってきた訓練飛行と変わらず、問題なく行うことができました。

この任務が完遂できたのは、搭乗員間の強固な連携のおかげです。それぞれの飛行前には、完全な搭乗員ブリーフィングを実施していました。そのことは、我々の状況把握に大いに役立ちました。また、訓練飛行を頻繁に実施し、緊急GPS進入を行ってきたことにより、このような状況で任務を遂行するための準備を整えることができていました。

患者後送機の搭乗員たちが敵の脅威下において任務を遂行し、生き残るためには、そのための訓練が不可欠なのです。想定外の事態の発生を抑止し、作戦規定に記載された緊急事態対応基準を満たすための訓練は、効果的なクルー・コーディネーションをもたらします。このような訓練は、患者の命を救うだけではなく、すべての搭乗員を救うために必要なのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2020年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    緊急時のGPSを用いた進入要領について、具体的に書かれていないのが残念ですが、アメリカ陸軍においても、航法機器のバックアップとしてGPSが重要なものとなっていることが理解できます。