気圧高度計


ポール・コルスマンが最初の気圧高度計を導入し、パイロットが気圧に基づいて高度を決定できるようにすることで、航空界に革命をもたらしたのは1928年のことでした。それから今日に至るまで、気圧高度計は軍用および民間航空全体で使用される重要な計器であり続けています。気圧高度計は、機体の静圧孔で測定された圧力と、パイロットが高度計の「コルスマン・ウィンドウ」に設定した実際の海面気圧(「アルティメーター・セッティング」とも呼ばれる)を比較することにより、MSL(Mean Sea Level, 平均海面)からの高度を表示します。その高度は、海面気圧と測定された静圧との差によって決定されます(高度が上がるにつれて静圧は減少します)。
気圧高度計は、種類が異なるいくつかの誤差の影響を受け、それぞれの誤差には許容範囲が設定されています。これらの誤差はすべての圧力計器に存在します。軍用機に特有のものではなく、軍用および民間航空で使用されるすべての気圧高度計に共通するものであり、航空機相互間のセパレーションや障害物とのクリアランスを決定する際に考慮が必要となります。気圧高度計には、主に2つの種類の誤差、すなわち計器誤差(機械的誤差または校正誤差とも呼ばれる)と位置誤差(取り付け誤差または静圧位置誤差とも呼ばれる)があります。これらの誤差は独立的かつ相加的ですが、常に同じ方向に作用するわけではないため、互いに加算されることもあれば減算されることもあります。
計器誤差は高度計自体の誤差であり、機械部品の校正誤差、機械的摩擦、ケースの漏れ、およびヒステリシス(「上昇して気圧が下がっていく時」と「下降して気圧が上がっていく時」で生じる誤差)などの要素で構成されます。エア・データ・コンピューターを使用するより近代的なデジタル・システムにおいては、旧来の高度計のような機械的な問題が生じないかもしれませんが、依然として測定誤差や校正誤差の影響を受けます。日常の整備中にピトー・静圧系統が点検される際、あるいは飛行前に高度計が飛行場標高と照合される際に確認されている誤差は、高度計の計器誤差です。計器誤差はランダムである傾向があり、高度計ごとに異なります。軍用機におけるこれらの誤差の許容範囲は、過去には軍事仕様書(ミルスペック)で規定されていましたが、現在ではFAA(Federal Aviation Administration, 連邦航空局)の民間規格により規定されることが多くなっています。
位置誤差は、静圧孔の位置および機体上の空気流に起因する、実際の静圧測定における誤差です。機体構造による静圧孔での空気流の角度や、特定の飛行状態などの要因が測定静圧に影響を与え、位置誤差を生じさせる可能性があります。位置誤差はランダムではなく、同一の機種、形態(コンフィギュレーション)および飛行状態(高度、対気速度、トリムなど)であれば同じになります。位置誤差の許容範囲は、過去には軍事仕様書によって定められていましたが、現在ではFAA民間規格によって定められるのが一般的です。位置誤差は、航空機を認定する過程において、確立された飛行試験技術を用いて評価されます。その技術の一つには、校正されたピトー・静圧源を「トレイリング・ボム」と呼ばれる装置に組み込み、航空機やローターの後流(ウェイク)の影響を受けない十分な距離をとって、航空機の後方に曳航するものがあります。別の方法としては、高感度の圧力計器を内蔵し、航空機の影響を受けないように機首から遠く前方に伸びたエア・データ・ブームを使用するものもあります。
最後に、気圧高度計は測定された静圧と仮定された標準大気温度プロファイルに基づいて高度を決定することを理解することが重要です。真高度(MSLからの実際の高さ)を決定しようとする場合、仮定された標準温度からの差異を考慮しなければなりません(例えば、標準温度より低い場合、高度計は真高度より高い高度を表示することになります)。パイロットにとってこの温度補正が必要となるのは、計器進入図(Instrument Approach Chart: IAC)に記載されたIAP(Instrument Approach Procedure, 計器進入方式)に雪の結晶のアイコンが付けられたCTA(Cold Temperature Airports, 低温空港)で運航する場合だけです。温度効果とその適切な補正に関しては、第7章第3節のAIM(Aeronautical Information Manual, 航空情報マニュアル)にも記載されています。
AIM第7章第3節からの抜粋
低温時の気圧高度計誤差、設定手順、および低温空港 (CTA):気温は、気圧高度計の精度、指示高度、および真高度に影響を与える。海面における標準温度は、摂氏15度(華氏59度)である。海面からの気温減率は、1,000フィートあたり摂氏マイナス2度(華氏3.6度)である。例えば、海抜5,000フィートでは、標準日の外気温度は摂氏5度となる。(飛行高度における)外気温度が標準より低い場合、航空機の真高度は指示気圧高度よりも低くなる。外気温度が標準よりも高い場合、航空機の真高度は指示気圧高度よりも高くなる。
スティーブン・ブラッダム氏は、アラバマ州レッドストーン兵器廠にある米陸軍・コンバット・キャパビリティーズ・ディベロップメント・コマンド・アビエーション・アンド・ミサイル・センター、システム・レディネス・ディレクトレートの副耐空性エンジニアです。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2025年11月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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