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陸軍航空の情報センター

米陸軍における教範類の公開(改訂版)

米陸軍の教範類は、そのほとんどがネット上で入手できます。米陸軍の公式サイト(Army Publishing Directorate)でも公開されていますし、個人のサイトで公開されている場合も多いようです。

公開されている教範類は、陸上自衛隊の野外令にあたるFM 3-0 Operationsから一般的な整備実施規定や機種別の取扱書まで、広範にわたるものとなっています。ただし、今のところ、機種別の整備実施規定は公開されていません。また、一部の秘匿性の高いものは、閲覧者が限定されています。

教範の体系・種類(ADP / FM / ATP)については、別記事を参照してください。

米陸軍の教範類との出会い

自分が米陸軍の教範を見たのは、3等陸曹だった1985年頃に米陸軍の航空科運用のコピーを見たのが最初です。それは、ジアゾ式複写機(青焼き)でコピーされたものでした。青焼きでコピーされた資料は、再度青焼きではコピーできませんでしたので、貴重なものでした。その頃、やっと現在と同じようなコピー(白焼き)が一般的になり、それをコピー屋さんでコピーできた時は、大変うれしかったものです。(若い人には何のことか分からないでしょうね)

1996年にUH-60修理課程に留学すると、航空兵站学校(現在の第128航空旅団)の図書館に各種教範がそろっていました。自転車で30分かかるコピー屋さんまで何度も通い、段ボール1箱分ほどのものをコピーして帰国しました。その中には、航空機の整備段階区分に関するものやドアガン射撃ホイスト救助に関するものなどがあり、その後の業務に大変参考になりました。

自分としては、大変に貴重な資料だと思っていましたが、当時、興味を示してくれた人はいませんでした。たまたま自分の事務所を訪問した海上自衛隊の幹部が、机の後ろの棚に米陸軍の教範が揃っているのを見て、驚いていたのが唯一の例外です。

その後、インターネットが一般に普及し始めると、米陸軍は教範類のネット上での公開を始めました。公開の実務を担ったのは、APD(Army Publishing Directorate:陸軍出版局)で、2000年代にはオンライン配信プラットフォームを整備し、2001年の同時多発テロ後には対反乱作戦(COIN)関連の教範を急速に開発・公開するなど、ドクトリン出版の急増に対応しました。最初はPDF(テキストなし)形式で配布されていましたが、一旦HTML形式に変更され(一部)、その後PDF(テキストあり)形式に戻されたと記憶しています。いずれにせよ、苦労して米国から持ち帰った教範類は、そのほとんどがいつでもネット上で最新版を見られるようになりました。

陸自における教範類の公開

陸上自衛隊においては、教範類は厳格に管理されており、ネット上に公開など絶対にできない状態にあります。教範類を流出させたことが大きな問題となったこともあります。

米陸軍が教範類を広く公開できる背景には、1966年に制定された情報自由法(FOIA:Freedom of Information Act)があります。FOIAは、政府機関が保有する行政文書へのアクセスを国民に保障する連邦法であり、9つの適用除外事由に該当しない限り、原則として開示が求められます。教範類の大部分は作戦機密に直接かかわるものではないため、この枠組みのもとで積極的な公開が進められてきました。

教範を非公開にする最大の理由は、敵に手の内を明かしたくないという点でしょう。しかし、教範類を厳重に管理しようとしても、おのずから限界があります。米陸軍のように、作戦機密に直接かかわらない部分——飛行原理、整備手順、安全管理、リスクマネジメント等——については、積極的に公開することで部内者に対する教育の質が向上し、部外者も知識を共有できるようになるなど、メリットが大きいのではないかと思っています。

本サイトが公開している米陸軍の教範類を含む各種資料の一覧はこちら

米陸軍の教範類の公開に関する調査結果はこちら

           

発行:Aviation Assets

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2件のコメント

  1. 管理人 より:

    こちらのニュース記事へのリンクを追加しました。

  2. 管理人 より:

    生成AIの進歩により、いろいろな調べ物が簡単にできるようになりました。
    米陸軍における教範公開の経緯について調査し、その結果を盛り込みました。