CV-22オスプレイの救難訓練、強いダウンウォッシュの中でどう人を吊り上げるのか

東北防衛局は2026年10月7日、米空軍横田基地所属のCV-22オスプレイ2機が、10月19日と20日(予備日は22日と23日)、青森県の小川原湖でホイスト訓練とヘリキャスト訓練を実施すると発表しました。発表では、ホイスト訓練が「航空機から降下用ロープで乗員が降下し、要救助者を吊り上げて救助する訓練」、ヘリキャスト訓練が「低高度を低速で飛行する航空機から乗員が跳躍して降下し、要救助者を救助する訓練」と説明されています。
本稿では、これら二つの訓練がどのようなものか、CV-22Bがどのような機体で、なぜ救難の訓練を行うのかを解説します。あわせて、ヘリコプターよりも強いと言われるオスプレイのダウンウォッシュ(ローターの吹き下ろしの風)の中で、どのように人を水上から吊り上げているのかを、米軍の教範などから読み解きます。
日米合同委員会の合意に基づく訓練
今回の訓練は、日米合同委員会(日米地位協定の実施について日米両政府が協議する機関)が2026年5月14日に承認した合意に基づくものです。合意は、米軍が救難訓練のために小川原湖の一部を限定使用することを認めたもので、6月から12月までの間に4回、各回最大4日間、各日は日没前後の最大6時間と定めています。
米空軍の記録によれば、横田基地のCV-22は2020年9月から小川原湖で救難の訓練を行っています(表1)。
表1:小川原湖でのCV-22の訓練の実績
| 年月 | 予定された訓練日(予備日) | 実施(確認できた日) |
|---|---|---|
| 2020年9月 | ― | 21日 |
| 2021年10月 | 6日・7日(27日・28日に延期) | 27日 |
| 2022年7月 | 18日・20日 | 18日、20日 |
| 2022年8月 | 10日・12日(24日・26日) | 10日、12日 |
| 2023年6月 | 12日・14日(26日・28日) | 確認できず |
| 2023年8月 | 21日・23日(28日・30日) | 実施(日は確認できず) |
| 2025年7月 | 22日・24日(23日) | 中止 |
| 2025年8月 | 18日・20日(25日・27日) | 18日、25日(20日は悪天候で中止) |
| 2026年10月 | 19日・20日(22日・23日) | (予定) |
出典:予定は青森県のプレスリリース(東北防衛局からの連絡を受けたもの)、実施は米空軍の写真・動画(DVIDS。2020年9月、2022年8月)とデーリー東北の報道による。2022年以降の訓練は、日米合同委員会の合意(2022年5月19日、2023年4月20日、2024年11月20日、2026年5月14日)に基づく。
ホイストとは
ホイストは、ホバリングしている機体からケーブルを繰り出して救助員や器具を降ろし、人を吊り上げる装置です。樹木や建物に囲まれた狭い場所、険しい斜面、荒れた海の上など、着陸できない場所から人を救い出すために使われます。ケーブルの先には、要救助者の状態に応じて、担架や吊り上げ用の座席などの器具を取り付けて使用します。

CV-22は、胴体後部のカーゴ・ランプ(貨物の積み降ろし用の傾斜板)から吊り上げを行います。操作するのは機上整備員(flight engineer)です。米空軍の教範によれば、荷重の上限は600ポンド(約272kg)で、折りたたみ式の座席が付いたフォレスト・ペネトレーターと呼ばれる器具なら3人を同時に吊り上げることもできますが、荷重の上限を超えるおそれがあるため、時間が切迫しているときに限られます。巻き上げの速さは毎分300フィート(約90m)以上です。

要救助者が意識を失っているなどの理由で自ら器具を使えない場合は、ホイストの訓練を受けた乗員を降ろし、その乗員が要救助者を器具に固定してから吊り上げます。東北防衛局の発表にある「乗員が降下し、要救助者を吊り上げて救助する訓練」は、この要領にあたります。
ヘリキャストとは
ヘリキャストは、着陸もホバリングもせずに、低く、ゆっくり前進する機体から、人員が水に飛び込む方法です。パラシュートを使わず、ロープやホイストで降りるよりも短い時間で、人員を水上に送り込むことができます。米空軍の教範は、水面から10フィート(約3m)以下、対地速度10ノット(約18.5km/h)以下で実施し、人員はカーゴ・ランプから降りると定めています。

ヘリキャストは、救助員を要救助者のもとへ送り込む手段であるとともに、特殊作戦部隊がゴムボートとともに水上へ潜入する手段でもあります。2022年8月に小川原湖で行われた訓練について、米空軍は、戦闘員のスイマーやダイバー、ゴムボートなどの小型の舟艇を水上に投入する手段であり、現実的な戦闘捜索救難の訓練になると説明する一方で、特殊作戦部隊が隊員を作戦地域や戦闘捜索救難の現場に送り込むための手段であるとも説明しています。
教範には、水上でのヘリキャストとホイストの訓練では、救命浮舟を積んだ安全のためのボートを待機させ、10分以内に駆け付けられるようにすることや、人員が負傷した場合に備えて、ホイストを使える状態にしておくように努めることが定められています(表2)。
表2:ホイストとヘリキャスト(CV-22の場合)
| 項目 | ホイスト | ヘリキャスト |
|---|---|---|
| 機体の状態 | ホバリング | 水面から10フィート(約3m)以下、対地速度10ノット以下で前進 |
| 人員の動き | ケーブルで降下し、要救助者とともに吊り上げられる | カーゴ・ランプから水に飛び込む |
| 主な用途 | 要救助者の吊り上げ、救助員の降下 | 救助員の投入、特殊作戦部隊の水上への潜入 |
| 主な規定 | 荷重の上限600ポンド。水上ではダウンウォッシュの外で準備させ、真上から吊り上げる | 電波高度計とホバリング表示が作動していること。事前にホイストを準備 |
| 共通の規定 | 救命浮舟を積んだ安全のためのボートを待機させる | 同左 |
出典:米空軍の教範 AFMAN 11-2CV-22, Volume 3「CV-22 Operations Procedures」(2021年9月13日)
特殊作戦機のCV-22Bが、なぜ救難訓練を行うのか
CV-22Bは、米空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)が運用するティルトローター機です。米空軍のファクトシートによれば、その任務は「特殊作戦部隊のための長距離の潜入、離脱、補給」であり、救難は任務に含まれていません。
この特殊作戦部隊を運ぶための機体が、なぜ救難訓練を行うのでしょうか。第一の理由は、それ自体が特殊作戦の一部だからです。米空軍の教範は、ホイストとヘリキャストを、懸垂下降やファスト・ロープと並んで、機体が着陸する代わりに隊員を送り込み、連れ戻す方法(教範の用語では「代替の投入・回収」)として定めています。また、特殊作戦部隊は人員救助を任務の一つとしており、横田のCV-22も、2020年11月に沖縄沖で、特殊戦術の隊員と組んで、海上で孤立した人員をホイストで吊り上げる訓練を行っています。
第二の理由は、災害への備えです。防衛省は、大規模災害が発生した場合には、CV-22が「捜索救難などの人道支援・災害救援活動を行うことが可能」と説明しています。
つまり、ホイストとヘリキャストは、特殊作戦部隊の投入・回収や人員救助といった特殊作戦に欠かせない戦術であり、災害の際には被災者の救助にも生かせる技能でもあります。今回の訓練は「救難訓練」として告知されましたが、CV-22の部隊にとっては、その戦術・技能を夜間を含めて維持するための訓練であると考えられます。

強いダウンウォッシュの中でどう救うのか
V-22のダウンウォッシュは非常に強いと言われますが、大型のヘリコプターと比べて極端に強いわけではありません。米陸軍と米航空宇宙局(NASA)の研究者による論文によれば、地面や水面に当たって外側へ広がるダウンウォッシュの最大の速さは、MV-22で100ノット(約185km/h)と計測されており、CH-53Eの95ノット、CH-47Dの90ノットとほぼ同じ水準です。
ただし、その吹き方は、ヘリコプターと違っています。前述の論文によれば、ローターが1つのヘリコプターでは、ローターの下に風の勢いが弱い領域があり、人員にとって安全な場所とされてきました。これに対して、米陸軍の技術報告書(2014年)によれば、V-22では左右のローターが離れているため、機体の下で地面から上向きに吹き上がる流れが生じます。このため、V-22では、真下にいる人員も乱れた風を受けることになります。
米国防総省の実用試験評価局長は、2010年の年次報告で、CV-22のダウンウォッシュは、ファスト・ロープやホイストによる作業を難しくし、水の激しい乱れのために、戦闘員のスイマーにとってさえ水上での作業を難しくすると評価しました。ただし、運用上の工夫によって、機体と搭乗員は与えられたすべての任務を遂行できると結論づけています。
では、V-22では要救助者をどのように吊り上げるのでしょうか。米空軍の教範は、水上での吊り上げでは、ケーブルを伸ばしたまま機体をずらし、吊り上げの準備をしている間は要救助者が強いダウンウォッシュの中に入らないようにすると有利な場合があるとしています。そして、要救助者の準備ができたら、器具の真上でホバリングして、まっすぐ上に吊り上げます。米海軍の捜索救難のマニュアルにも、救難スイマーが要救助者を担架に収容する間は、機体を左後方にずらして、ダウンウォッシュの範囲からローターの直径1つ分以上離れておくという手順が記載されています。
吊り上げる高さも、ヘリコプターとは異なります。ヘリコプターでは、高度約30〜50フィート(10〜15m)程度でホイスト救助を行うのが一般的ですが、V-22は、水上では、水面から150フィート(約46m)より低い位置でホバリングすると、ダウンウォッシュが巻き上げる水しぶきが激しくなり、要救助者や救助員がさらされるため、それ以上の高さから吊り上げます。
小川原湖での訓練の意味
筆者も現役のころ、UH-1Hで、池に浮かぶ救難浮舟から人員を救助する訓練を行ったことがあります。機体が軽く、ダウンウォッシュの弱いUH-1でも、浮舟がダウンウォッシュで流されてしまい、なかなか思うようにはいきませんでした。
V-22であれば、その難しさはさらに増すはずです。米軍は、要救助者の真上で待たずに準備ができてから真上に入ることや、高い位置から吊り上げることで、それを回避しているようです。小川原湖での訓練は、その手順を、日没後の暗さも含めて、乗員と救助員の体に覚えさせる場であると考えられます。
本記事の略語
| 略語 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| AFSOC | Air Force Special Operations Command | 空軍特殊作戦コマンド |
| NASA | National Aeronautics and Space Administration | 米航空宇宙局 |
※この記事は、2026年10月13日時点で公表されていた資料に基づいて執筆したものです。
関連リンク
東北防衛局|小川原湖における在日米軍による救難訓練の実施について(2026年10月7日)
Jディフェンスニュース|米空軍CV-22オスプレイ2機 小川原湖で救難訓練へ(10月19日~)(2026年10月9日)
防衛省|日米合同委員会合意について(2026年5月14日)
米空軍|AFMAN 11-2CV-22, Volume 3, CV-22 Operations Procedures(2021年9月13日)
米空軍|CV-22 Osprey(ファクトシート)
予備役ブルーリボンの会|ヘリコプターのホイストとは何か?(2025年11月8日)
Aviation Assets|テクニカルトーク:ヘリコプターのローターウォッシュとアウトウォッシュ
Ramasamy, Potsdam, Yamauchi|Measurements to Understand the Flow Mechanisms Contributing to Tandem-Rotor Outwash(AHS第71回年次フォーラム、2015年5月)
米陸軍RDECOM|Rotorwash Operational Footprint Modeling(RDMR-AF-14-02、2014年7月)(Web Archiveの保存版)
出典:Aviation Assets 2026年10月13日
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