AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

悪視程環境(DVE)プロダクト・オフィス

ショーン・グレシャム

想定される敵に対する陸軍航空の絶対的優位性を維持し、リスクを軽減するため、悪視程環境(Degraded Visual Environment, DVE)プロダクト・オフィスは、悪視程環境下で飛行および機動できる能力をパイロットに与えるための解決策の提供に尽力している。

The DVE Product Office
写真提供:PM DVE

米国陸軍航空においては、DVEを搭乗員の状況把握や航空機の制御が完全に失われる可能性があるか、または、飛行任務間に良好な視程を確保することが困難となる可能性のある視程悪化環境と定義している。DVE状態は、11種類に区分される。煙、スモッグ、雲、雨、霧、雪、ホワイトアウト、夜間、コントラストの低下、砂煙およびブラウンアウトである。生地の埃っぽい地表面への離着陸時に遭遇しやすいブラウアウトは、ヘリコプターのダウン・ウォッシュが地表面の土埃やに砂粒に作用することにより生じるものであり、搭乗員の正確な地面との相対的な位置、高度、および動きの把握を大きく妨害する。すべてのDVEの中でも、ブラウンアウトは、特にアメリカ中央軍(U.S. Central Command, CENTCOM)の担当地域で活動する派遣部隊の兵士たちにとって、最も身近な脅威である。

DVEが陸軍航空にもたらす影響

陸軍航空は、想定される敵に対する陸軍航空の絶対的優位性を維持し、リスクを軽減するため、悪視程環境下においても飛行および機動できる能力を確立する必要がある。搭乗員は、敵の兵器システムと同様に、DVE運用時の各種の障害および危険を克服しなければならない。我が戦闘員たちは、DVEに関連するリスクを軽減するための戦術、技法および手順を戦闘経験に基づいて編み出してはいるものの、隊員および戦闘力投射能力の双方に対し重大な脅威が引き続き存在している。

段階的な改善の進展

戦闘指揮官の能力を最大限に確保しつつ、DVEの脅威を低減することに焦点を当てた米国議会は、DVEを重要な課題と位置づけ、この複雑な問題の解決に向けた投資を継続し、陸軍に対する確固たる支援を行っている。DVEプロダクト・オフィスは、戦闘コマンド(combatant command, COCOM)、TRADOC航空旅団能力マネージャー(TRADOC Capability Manager for Aviation Brigades, TCM-AB)および国防省内の主要な関係者との連携を保ちつつ、以下の2つの取り組みを通じてDVEにおける運用を強化するための解決策を陸軍航空に供給する態勢を整えている。

最近では、2017年5月25日にある要求指示(directed requirement, DR )に焦点が当てられ、1つ目の取り組みが第8部副参謀長により承認された。そのDRは、CENTCOMの作戦地域において、2020年までに15機のHH-60M患者後送(Medical Evacuation, MEDEVAC)用ブラックホーク・ヘリコプター)の開発および装備化に関し、COCOMによるDVEに関する物的解決策を推進することを目的としている。このDRの実行は、ブラウンアウトDVEにおける対応能力に関する当面の問題に対処するものであり、MEDEVAC関係者が認識している緊要な要望事項を具現するものである。COCOMのDVEに関する物的解決策は、現在のところ、赤外線カメラおよびレーザー・イメージ検知および測距システムという、2つのセンサーによって実現されている。合成ビジョン用アビオニクス機器により融合された双方のセンサーからの信号は、計器盤に取り付けられた統合ディスプレイにより表示され、搭乗員の状況把握を補助する。

2つ目の取り組みは、段階的かつ継続的な能力向上に焦点をあてたものであり、敵に対する卓越した運用能力および戦術的優位性をもたらすためのものである。TCM-ABは、最近になって、DVEの将来プログラム(Program of Record, POR)に関し、段階的な能力向上を示す能力開発書(Capabilities Development Document, CDD) 10を発簡した。このドキュメントは、DRに併せて起案されたものである。DVE PORにより、配備のための分析が行われ、COCOMのÐVEに関する物的解決策をもって陸軍要求事項監督委員会が認証したCDDの具現についてその実行の可能性が判断され、かつ、必要に応じ、効果的かつ確実な進展を得られるように調整が行われることになる。HH-60MおよびUH-60Mブラックホーク・ヘリコプターを対象とした第1段階の処置に関するPORに従い、システム・ソフトウェアの修正、センサーおよび融合器材の準備、システム能力の改良、機体の搭載改修、兵站支援の継続、開発試験および実用試験評価項目の作成などがスケジュールに沿って実施される。初期運用能力(Initial Operational Capability, IOC)の付与は、2020年の初めから中ごろになると見積もられる。

ショーン・グレシャム氏は、アラバマ州レッドストーン工廠にある航空計画管理室の航空システム・プロジェクト・オフィスのDVEプロダクト・マネージャーです。

           

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2017年10月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    米陸軍におけるDVEに対する取り組みは、順調に進捗しているようです。