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陸軍航空の情報センター

JAGM(Joint Air-to-Ground Missile)の開発等進捗状況

軍属デイブ・ハーゼンおよびジェイミー・フリント

AH-64アパッチは、AWS(Area Weapons System, 地域攻撃兵器システム)の30mmガンへの更新、APKWS(Advanced Precision Kill Weapons System, 先進精密攻撃兵器システム)のレーザー誘導ロケットM151 HEPD(High Energy Point Detonating, 高エネルギー弾頭起爆)弾の導入および待望のAGM-179 JAGM(Joint Air-to-Ground Missile)の装備により、多用途性と火力が向上されようとしている。

JAGM

JAGMは、最終的に、陸軍のAH-64D/E攻撃ヘリコプターなどに搭載されている、すべてのAGM-114ヘルファイア系列のミサイルを更新する予定である。ヘルファイア系列のミサイルには、SAL(Semi-Active Laser, セミアクティブ・レーザー)のヘルファイアⅡAGM-114K,M,NおよびR系列、ならびにMMW(Millimeter Wave, ミリ波 レーダー)のAGM-114ロングボウ系列の誘導方式がある。

セミアクティブ・レーザーのヘルファイアⅡは、目標が反射するレーザー・エネルギーを誘導に用いるものであり、射手は、誘導間、レーザーを目標に照射し続ける必要がある。ロングボウは、ミリ波レーダーを用いることにより見通し外の撃ち放し能力を持ち、厳しい気象条件および戦場環境においても運用が可能となっている。

これら2つのヘルファイア系列ミサイルを、単一のJAGMで置き換えるためには、どうすれば良いであろうか? JAGMは、セミアクティブ・レーザーとミリ波レーダーの誘導部を組み合わせた複合モードのシーカーを装備している。そのシーカーに、R型の弾頭、モーター、および飛行制御システムが加えられることによりミサイルが完成する。これらのシステムが融合されることにより、JAGMは、いかなる環境にも対応し、悪天候などの視程不良状態であっても、昼夜を問わず、海上を含めた運用が可能となっている。JAGMは、爆発する前に構造物の内部に侵入することにより、破壊効果を高める機能も有している。射手は、種類の異なるヘルファイア・ミサイル搭載せずとも、数秒以内で2つの誘導方式を切り替えたり、双方を組み合わせたりすることができる。「撃ち放し」能力を持つJAGMは、敵の防空システムの射程外のスタンドオフ領域から、目標を攻撃できるように設計されている。パイロットは、発射後、ミサイルの最終飛行段階において目標にレーザーを照射し続ける必要がなく、射撃地域から離脱することができる。

AH-64Eバージョン6は、「目標」中心の設計アプローチにより、PVI(Pilot Vehicle Interface, パイロット・ビークル・インターフェィス)が改良され、パイロットのワークロードの軽減が図られている。副操縦士・射手(Co-Pilot Gunner, CPG)が、いくつかの目標種類の中から一つを選択することにより、その戦闘に最適な弾道、信管設定およびシーカー・モードが自動的に設定される。

統 合

この統合装備品の認定作業を主導しているのは、アメリカ陸軍である。この装備品の要求事項は、アメリカ陸軍戦闘能力開発コマンドの航空及びミサイルセンター(U.S. Army Combat Capabilities Development Command Aviation & Missile Center, CCDC AvMC)が、2014年に、AH-64D/E、MQ1Cスカイ・ウォーリアUAV(Unmanned Aerial Vehicle, 無人航空機)およびMH-60を対象として制定した。その後、アメリカ海軍が、AH-1Zバイパーを対象として、追加の要求事項を制定している。

ヘルファイアの認定作業をJAGMのベースラインに用いることにより、電磁干渉効果、耐環境性能、母機への統合性などに関する新たな要求事項の認定作業の削減が図られている。

JAGMの作業と連携して、従来のAD06およびCD17ソフトウェアの後継となる、M299ミサイル・ランチャー用の新しいソフトウェアが開発されようとしている。

開発および調達

JAGMの開発および調達プロセスは、どこまで進んでいるのであろうか? 海上目標を含む静止および移動目標に関する評価は、その大部分が完了した。試験の結果、JAGMの弾頭の致死性能は、従来のヘルファイア・システムと同等であることが確認されている。

アリゾナ州ユマ試験場での試験において、AH-64Eから発射されたJAGMが弾着する瞬間

AAAA(Army Aviation Association of America, アメリカ陸軍航空協会)の雑誌の2020年2月号で述べたとおり、AH-64Eバージョン6は、2019年の夏、じ後の試験および評価(Follow-on Test and Evaluation, FOT&E)において評価された。この試験及び評価に併せて、完全に統合化されたJAGMミサイルの初めての試験であるJAGMの初期実用試験(Initial Operational Test and Evaluation, IOT&E)が使用部隊により実施された。陸軍試験評価コマンド(Army Test & Evaluation Command, ATEC)およびテキサス州フォート・フッド第1騎兵師団第1航空戦闘旅団により起案された「陸軍試験評価コマンド実用性評価報告書」は、肯定的な内容となっている。

JAGMは、今後数か月以内に部隊配備が開始される予定である。M299ソフトウェアの耐空性認定作業がJAGMに適合するように進められていることを確認するため、追加の実弾発射訓練が計画されている。

デイブ・ハーゼン氏はアラバマ州レッドストーン工廠のアメリカ陸軍戦闘能力開発コマンド航空およびミサイルセンター(CCDC AvMC)システム準備局の開発および近代化システムチーム長であり、ジェイミー・フリント氏はアパッチ耐空性チーム武装システムエンジニアです。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2020年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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