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陸軍航空の情報センター

民間機用アビオニクスの軍用機における新たな役割

ボブ・サンチェス

Commercial-Avionics左:多目的制御表示器(Multi-Function Control Display Unit, MCDU)とUNS-1Fw型MMMS(Multi-Missions Management System, 多目的ミッション管理システム)
上:ロッキードマーチンC-130/L-100ハーキュリーズ用のインサイト・ディスプレイ・システム・コンセプトのコックピット

下:インサイトの系列機器:EFI(electronic flight instrument, 飛行情報表示)-1040、ECDU(EFIS Control Display Unit, EFIS制御表示器)およびANK(Alphanumeric Keyboard, 英数字キーボード)

10年前の「リーマンショック」は、それまでの商慣習で中核を占めていた教義を揺るがし、他の産業と同じく、航空宇宙および防衛産業も大きな影響を受けることとなった。その影響には、予算の削減などの予期されていたものもあったが、予期していなかったものもあった。
金融危機による政府予算の減少(停滞)は、既存の軍事航空システムの使用を継続すべきか、それを更新すべきかという選択に変革をもたらしたのである。結果的には、新型航空機の生産が停滞するようになった。新型機の調達よりも旧型機の耐用命数延長に国防予算が使われるようになり、軍用機の改修および改善に対する需要が高まった。このことは、高性能の航法機器やデータリンク通信機器の搭載を促すことになった。

COTS(Commercial Off-The-Shelf, 民生品)を軍用機に統合させ、既存のTSO(Technical Standard Order, 航空機搭載品認証技術基準)機器を軍用アビオニクスの改善要求に適合させる製造業者が出現したことにより、この傾向がさらに促進されることとなった。結果的には、以前と比較して、より多くのCOTS機器が軍用機に用いられるようになった。

従来、政府用および軍用の航空機の搭載機器は、FAR(Federal Acquisition Regulation, 連邦調達規則)の第15部に示された、軍用機専用品を生産する部品製造会社のみによって供給されてきた。第15部には、基本的には新型機およびそれに関連するシステムに適用するための詳細な軍用規格が規定されている。しかしながら、その規定は非現実的なものとなった。特に国防省が民間派生型機を使用する場合、第15部が規定する機器を開発する場合の期間とコストが、その性能の向上に見合わなくなったためである。機数の少ない機種を機器当たりのコストを抑えつつアップグレードしなければならないのだが、FARの第15部に規定された専用品では高価すぎる場合が多くなった。

このため、FAR第12部に規定された、COTSと呼ばれる機器が検討の対象にあがるようになったのである。高い柔軟性を有するCOTS製品は、FAR第15部に規定された企業と連携して巨大な開発プロジェクトを立ち上げる場合に必要となるコスト(時間と予算)の増加を回避しつつ、旧型機を最新のテクノロジーを用いてアップグレードする、という難問に対するひとつの解決策であると考えられるようになった。各COTS機器は、コックピット全体を根本から「作り替える」のではなく、既存の機体構成品を利用しながら、従来機のアビオニクスの基本設計概念に統合されるのである。

FAR第15部に示された機器の開発やコックピットの完全改修が必要な場合が全くなくなったわけではないが、少なくともCOTS製品を軍用機に統合する余地があると考えられるようになった。実際には、「四角形」の民生品を軍用機の「丸い穴」に合わせるためには、精密な調整が必要となるが、それは実行可能であり、それに見合った効果が得られる場合が多かった。

UASC関係:COTSの躍進

FAR第12部に規定されたアビオニクス供給会社が米国防総省向けの製品を供給することには、いくつかの問題が発生したものの、それらは乗り越えられてきた。UASC(Universal Avionics Systems Corporation, ユニバーサル・アビオニクス・システム社)は、CASA社のCN-235, ボーイング社のRC-135、シコルスキー社のUH-60、ロッキードマーチン社のC-130、ダッシュ8ARL-Eおよびリアジェット社のC-21などの多くの民間型機において、インサイト・ディスプレイ・システムおよびFMS(Flight Management System, 飛行管理システム)用戦術任務コンピューターを既存のアビオニクスに統合させた実績をを有している。

UASCの軍用機における革新的なアビオニクス改善策は、航空機の性能を向上させ、戦術的状況把握能力を増大し、飛行安全を確保するとともに、CNS/ATM(Communications, Navigation, and Surveillance/Air Traffic Management , 衛星システムや自動化されたシステムなどの新技術を活用した航空交通管理システム)の革新的な要求に応えるなど、飛行任務の実施に幅広い分野にわたって貢献している。

インサイト:最新のディスプレイ・デザイン

インサイトは、ユニバーサル社の最新ディスプレイ・デザインであり、先進的な地図、電子航空図、無線制御および気象予報の合成表示機能を有する、より統合されたコックピットの具現を可能にしている。インサイトは、旧来のアビオニクス・システムに比べて基本的機能の発揮に必要なLRU(Line Replaceable Units, 部隊交換可能部品)が少なくて済むため、アビオニクスの軽量化や機体内部配線の削減を実現できる。その機能には、次のものが含まれる。

離陸から着陸までの航法

ユニバーサル社のSBAS(Satellite-Based Augmentation System, 静止衛星型衛星航法補強システム)対応型FMSは、極めて精度の高い航空機搭載SBAS GPSレシーバーを装備し、GPSによる位置情報の正確性および健全性を向上させている。特殊作戦任務に関し、MMMS(Multi-Missions Management System, 多目的ミッション管理システム)に匹敵する性能を有する機器は他に見当たらない。このFMSは、最先端の技術を取り込んだ多様な機能および高い性能を有するシステムであることに加えて、特殊なインターフェースに対応し、かつ、6個の独立した捜索パターンで飛行する能力を有している。これらの機能は、ソフトウェアにより実現されるため、追加の機器やLRUを必要としない。その他にも、次のような特徴を有する。

ユニバーサル・アビオニクス社は、過去20年間の大部分において、米陸軍を支援し続けてきた。そして、FMS、MDFシステム、または通信および臨界飛行安全システムのいずれにおいても、陸軍の固定翼および回転翼プログラム・オフィスと直接連携し、民間機型および軍用規格の機体に関し、民間機において実績のある最新の民間用アビオニクス技術を適用させてきた。

当社は、プログラム・オフィスに対し、最近になってFAA(Federak Aviation Administration, 連邦航空局)により課せられたすべての義務を順守できるようにするため、その要求性能の策定に関する援助を数多く行っている。米軍がその任務を遂行するために必要な能力を維持しつつ、民間機に対する義務事項を満たすための技術的解決策を確立するためには、民間機用アビオニクス・テクノロジーと軍特有の任務要求の間のギャップを埋める相互協力が不可欠でなのである。

当社は、陸軍以外の各軍のプログラムに対する支援において、陸軍航空に適用できる共通的技術要求事項に遭遇することが多い。調達だけではなくライフ・サイクル維持についても、これらのプログラムから得られた成果を活用して、コストスケール・メリットを利用し、国防予算を最大限に活用することに貢献してきた。コストの増加を伴わずに民生品の能力を最大限に再利用することは、ユニバーサル・アビオニクス社の米陸軍に対する支援における教義となっているのである。

ボブ・サンチェス氏は、アリゾナ州ツーソンに所在するユニバーサル・アビオニクス社政府ビジネス開発部の部長である。

           

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2017年12月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    COTSの軍用機での利用促進は、予算に制約を受けている軍隊であるほど、喫緊の課題であると言えるでしょう。なお、本記事の著者は、文中にも記載がありますが、ユニバーサル・アビオニクス・システム社の部長であることに留意する必要があります。