T901で未来を築くGEアビエーション社
陸軍航空は、大きな変革の時代を迎えようとしている。航空科部隊は、地上部隊の高い要求に応えるべく、幅広い任務に対応できる戦闘能力の保持に努めている。地上部隊の戦士たちに対し、戦場における決定的な優位性をもたらし、その任務の完遂を容易にならしめようとしている。この優位性を維持向上するため、FVL(Future Vertical Lift, 将来型垂直離着陸機計画)およびITEP(Improved Turbine Engine Program, 改善型タービン・エンジン・プログラム )を中心とした野心的な航空近代化計画が進められている。これらの計画は、次世代の作戦用航空機の能力を決定づけるものである。GEアビエーション社は、陸軍に対する主要なエンジン・システム供給会社として存在することを誇りとし、将来にわたって、この役割を果たし続けてゆきたいと考えている。
T700という伝統的かつ類まれなエンジンからの発展
今日のブラック・ホークおよびアパッチの搭乗員たちは、クラス最高の信頼性、前方整備性および低ライフサイクルコストを誇るT700エンジンの恩恵を受けている。このエンジンの成功の鍵は、独自の完全モジュラー設計にあった。今日、30ヵ国以上の国で12,000台以上が運用されているT700エンジンは、このクラスで最も多く生産されたエンジンである。1億時間を超える総運用時間を記録しているT700は、戦場での危険な状況においても、完全な信頼を得ている。
革新的な1歩となるT901の導入
イラクおよびアフガニスタンにおける過酷な運用環境がもたらした課題を克服するために必要なのは、エンジン性能の劇的な向上である。現在運用中のヘリコプターだけではなく、FVLにおいて開発中の次世代機についても、その性能を向上させるためには、新しいエンジンの搭載が必要なのである。
T901エンジンは、T700エンジンに比較して50%以上の出力増加(3,100shp)、25%の特定燃料消費率の向上、20%のエンジン寿命の延長、50%の信頼性向上を実現するとともに、FVLの等級1~3の機体に搭載されるエンジンに必要とされる性能を満足している。
これらの数値は、理論値ではなく、実測値である。ITEPに応募した企業には、エンジンの選定に先立って、2台の実証用エンジンを生産することが求められた。GEアビエーション社は、それに加え、3台目のエンジンを製造して追加の試験を実施した。GE社の負担で製造したそのT901試作エンジンは、陸軍の要求性能を満たしていることが確認された。試作エンジンの製造と試験は、T901の設計および技術が完全であることを証明するとともに、陸軍関連計画に与えるリスクを大幅に減少させたのである。
GE社は、陸軍が行う各種任務に関する豊富な経験に基づき、適切な投資を行ってきたことを確信している。GE社がT901に適用した先進技術は、すでに民間機用エンジンに適用されている。これらのエンジンは、T901エンジンが運用を開始するまでの間に、何百万時間もの飛行時間を記録し、その技術の有効性と信頼性を証明することになるであろう。セラミック・マトリックス複合材料などに関する技術は、GE社が単独で開発したものであり、GE社が真の技術リーダーとなることを決定づけた。積層造形などのその他の技術についても、GE社は、その技術を成熟させるため、過去何十年にも渡って多額の投資を行ってきた。GE社が有効性を証明してきたこれらの技術は、今日のT901エンジンに直ちに利用可能であり、かつ、陸軍にとってリスクが低い技術なのである。
T901の利点
T901は、パイロット、整備員および管理者に対し、多くの利点をもたらす。
パイロットに対して
・高温・高標高環境での任務遂行に必要な出力
・目標地点までの距離と時間
・安全な運行ー運行可能領域の拡大
・エンジンの応答性の改善ー機体の操作性向上
整備員に対して
・T700と同様の完全モジュラー構造-前方整備能力の充実
・先進的なエンジン・ヘルス・モニタリング・システム-故障探求の容易化
・T700エンジンよりも50%の信頼性の向上
・非計画整備の減少
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2019年12月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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