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陸軍航空の情報センター

テクニカルトーク:点検間隔の設定

デイビッド クリシップス

setting inspection intervals

航空機の整備実施規定が、なぜ各部の点検を異なる時間で実施するように要求しているのか疑問に思ったことはありませんか?また、点検には、飛行時間に基づいて行われるものと、暦日に基づいて行われるものがあるのは、なぜなのでしょうか?さらに、安全通達、整備通達または安全情報で、その間隔の変更が指示されることがあるのは、なぜなのでしょうか?部隊にとっては、全くもってイライラすることだと思います。

ある航空機が最初に「安全性」を有すると判断するためには、その機体および構成部品について、通常の運用においてその航空機がさらされる環境を可能な限り再現した、文字どおり何千もの試験が行われます。その試験は、定常状態だけではなく、振動負荷、環境条件(雨、塩水、電磁波、高低温、低圧、雷など)、電気的負荷など、その航空機が予想外の挙動を示す可能性のある状態でも行われます。そして、不具合に至るすべての事象(故障モード)を調査し、ある特定の不具合が何によって起こるのか、それが時間の経過とともにどのように進展するのか、そして、その部分が実際に破壊や故障に至った場合にどのような不具合が生じるのかを正確に把握します。さらに、それぞれの故障モードについて、分析または試験を行い、安全な飛行継続に及ぼす影響を判断します。これらすべてのことは、FMECA(failure mode effects and criticality analysis, 故障モード影響致命度解析)と呼ばれる文書にまとめられます。このFMECAは、取扱書(operator’s manual)(例えば、故障モードを引き起こす可能性のある飛行状態を回避するために運用制限を設定する)や整備実施規定(maintenance manual)(例えば、故障モードを引き起こす環境にさらされているシステムや部品の給油、点検、修理や交換の手順を規定する)など、多くのものに利用されることになります。

点検の設定においては、ある特定の故障モードが始まった兆候を事前に検知できることが求められます。故障モードによっては、肉眼で容易にその兆候を検知できる場合もありますが、拡大鏡が必要なものもありますし、さらに特殊な点検方法(例えば、浸透剤、超音波、渦電流など)が必要となる場合もあります。中には、全く検知が困難なもの(例えば、疲労破壊)もあり、これらについては、予想される使用環境に応じた交換間隔が定められることになります。検知可能な故障モードに関しては、それが検知可能な状態になってから、最終的に故障するまでの時間(進展速度と呼ばれる)に応じ、その時期より前に品質が検査されるように点検間隔が設定されます。その間隔は、通常、飛行時間に基づいて設定されますが、暦日に基づいて設定される場合もあります。また、その点検要領は、それぞれの故障モードに最も適合し、かつ、可能な限り、必要となる特殊工具が少なくなるように規定されます。

その点検方法は、必要な大きさの欠陥を検知でき、かつ、その点検を実施する人員の技量に応じたものである必要があります。整備員がある点検方法を用いて、ある大きさの欠陥をどれくらいの確率で検知できるか(発見率と呼ばれる)を考慮し、検知した欠陥の進展速度に関する経験値に基づいて、各故障モードごとに特定の点検方法を適用します。いずれにせよ、不具合に至る前に余裕をもって欠陥を検知するできるように、十分な頻度をもって点検することが必要となります。整備員の技量は、一般的に訓練と経験に左右されますが、その他の要因にも影響されるものです。十分に訓練され、かつ、十分な休養を取っている整備員が昼間に格納庫の中で点検を行う場合と、同じ整備員が雨の降る夜間に遠く離れたFOB(forward operation base、前方運用基地)で12時間連続で勤務しながら点検を行う場合とでは、同じ結果にならないのです。このため、ある欠陥が不具合に至る前に、十分な余裕をもって高い確率でそれを検知できるできる点検方法を用い、かつ、必要な大きさの欠陥を検知できる機会が複数回得られるように点検間隔を設定する必要があります。

ただし、そのままでは、それぞれ別個の間隔で実施される点検を文字どおり何百とおりも行わなければならないことになります。これらを個別に整備実施規定に記載したうえで、そのすべてを実行し、記録するのは、非現実的なことです。このため、点検間隔が突出して長いものを除き、これらの点検を間隔が十分に近いものごとにいくつかのグループに集約して、それぞれのグループごとに実施するようにしています。

しかしながら、時には、運用中に予期していなかった故障モードが発生することがあります。また、陸軍航空の継続的進化に伴い、我々の航空機の運用も変化しています。このような場合、新たに得られた経験は、整備実施規定が改訂されるまでの間、安全通達、整備通達および安全情報により、部隊に伝えられることになるのです。

デイビッド クリシップス氏は、アラバマ州レッドストーン工廠の米陸軍航空およびミサイル研究、開発および工学センターの航空技術部局の副部長です。

           

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2017年12月

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備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    現役のころ、会社の技術者の方が「FMECA」のことを「エフメカ」と読んでいた記憶があります。英語圏でもそのように読む場合があるのかネットで検索してみましたが、そういった情報を見つけることはできませんでした。

  2. 管理人 より:

    軍用機における点検間隔の設定に際しては、劣悪な環境で作業を実施することを考慮しなければならないという点は、ややもすると忘れがちな観点だと思いました。

  3. 管理人 より:

    添付されている画像の計器には、「RISK LEVEL」の文字が描かれています。仮想の計器だと思います。