航空管制プロダクト・オフィス
航空管制(ATC)は、世界中での陸軍航空の活動で重要な役割を果たしつつ、その戦術装備品を改善し、その運用に関する教義の修正を続けてきた。航空管制システム全体にわたる装備の近代化により実現したこの変革は、支援能力の向上をもたらしてきた。この変革において、職種全体、連邦航空局およびその他の利害関係者と調整・協力するという重要な役割を果たしてきたのは、航空管制プロダクト・オフィス(PO)であった。
航空管制プロダクト・オフィスは、航空システム・プロジェクト・オフィスの中の5つのプロダクト・オフィスのひとつであり、陸軍航空管制のあらゆる戦術および固定施設システムのライフサイクルを管理している。その役割は、調達、供給、維持、改修および払下げの過程を通じた兵士第一主義の実行であり、新型システムの調達およびシステムの改修を通じて、将来の航空運用要求に合致する体制の維持に貢献し続けている。
近代化
航空管制プロダクト・オフィスは、過去1年間、TTCS(Tactical Terminal Control System, 戦術ターミナル管制システム)AN/ TSQ-198B、MOTS(Mobile Tower System, モバイル・タワー・システム)AN/MSQ-135AおよびATNAVICS(Air Traffic Navigation, Integration, Coordination System, 航空交通航法統合調整システム)AN/TPN-31バージョン8の装備化を継続してきた。このうち、MOTSおよびTTCSシステムは、前線部隊への配備を完了している。
TTCS(Tactical Terminal Control System, 戦術ターミナル管制システム)AN/ TSQ-198B
「汎用」のラックに収納されたTTCS 198Bは、HMMWV(High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle, 高機動多目的装輪車)M1097およびM1165A1のいずれにも搭載可能であり、高性能で生存性・整備性に優れ、迅速に展開可能な戦術航空管制通信システムである。近代化されたTTCSには、AN/PRC-117G無線機、味方追尾装置、PRC-150高周波無線機および3キロワット発電機が装備され、すべての航空管制戦術システムとの共通化が図られた。TTCS AN/TSQ-198B の供給は、2019年度第3四半期に完了する予定である。TTCSのさらなる近代化策としては、TOCNET(Tactical Operations Center Inter-Communication System, 戦術運用センター内部通信システム)、新型監視用パッシブ・レシーバー、航空管制戦術無線ネットワークおよびおよびデータ送信装置の装備、ならびにメッシュ無線および統合軽戦術車両への搭載キットの開発などが計画されている。
MOTS(Mobile Tower System, モバイル・タワー・システム)AN/ MSQ-135A
MOTSは、1976以来使用されてきた7A戦術管制塔の老朽化に伴い、その後継機として開発された移動式管制塔であり、航空管制用の秘匿無線通信およびデジタル接続能力を有している。M1083A1中型戦術車両に改修型のS-280シェルターを搭載し、18キロワットの発電機および兵員用器材を装備する展開用急速集結シェルターと一緒に供給される。さらに、陸軍の最新機種だけではなく、その他の統合軍および同盟軍の航空機とも通信が可能な最新型の無線機を装備している。TAIS(Tactical Airspace Integration System, 戦術空域統合システム)空域ワークステーションを装備するMOTSは、空域に関する状況把握能力が向上しており、より高度な情報をパイロットの状況判断のために提供することができる。MOTS AN/MSQ-135Aは、過去の教訓事項を踏まえ、デジタル・サービス・アクセス・ノードからTOCNET(Tactical Operations Center Inter-Communication System, 戦術運用センター内部通信システム)へ、そして、AN/PRC-117F無線機からAN/PRC-117G無線機へと改修され、航空管制戦術システム群との将来的な共通性が確保されている。ペンシルベニア州に所在するトビーハナ陸軍補給処は、AN/MSQ-135に対する最終MWO(modification work order, 航空機等改造指令書)の適用を実施し、AN/ MSQ-135Aの装備化を2019年度第2四半期に完了する予定である。過去2年間の諸作戦における支援を通じて、大きな成果を上げてきたMOTS AN/MSQ-135Aシステムは、部隊における信頼性および性能の向上を約束するものとなっている。
ATNAVICS(Air Traffic Navigation, Integration, Coordination System, 航空交通航法統合調整システム)AN/TPN-31
航空管制プロダクト・オフィスは、ATNAVICSバージョン8の供給を既に開始しており、2020年度第2四半期までにそれを完了する予定である。
バージョン8は、AN/PRC-117Gおよび改良型プロセッサーを搭載するとともに、TPX-56インテロゲータ(質問機)に代えてモード5のIFF(Identification, Friend or Foe,敵味方識別装置)能力を有するTPX-57インテロゲータを搭載している。
TAIS(Tactical Airspace Integration System, 戦術空域統合システム)AN/TSQ-22およびTAIS空域ワークステーションAN/FSQ-211
バージョン12ソフトウェアがインストールされたTAIS B(V)1の供給は、2019年度第1四半期に開始された。ATNAVICS(Air Traffic Navigation, Integration, Coordination System, 航空交通航法統合調整システム)から航空機位置情報を得ることにより、リアル・タイムの状況把握能力および空域管理能力の向上が図られている。その改修項目には、モバイル・サーバー・ユニットから内蔵型TOCNET(Tactical Operations Center Intercommunications System, 戦術運用センター内部通信システム)およびSRNC-17準耐衝撃型ラップトップへの変更や、防空システム・インテグレーターから拡張航空機位置情報センサー・インターフェィスへの変更などが含まれている。
2018年のTTCS(Tactical Terminal Control System, 戦術ターミナル管制システム)198B、MOTS(Mobile Tower System, モバイル・タワー・システム)135A、ATNAVICS(Air Traffic Navigation, Integration, Coordination System, 航空交通航法統合調整システム)バージョン8およびTAIS(Tactical Airspace Integration System, 戦術空域統合システム)B(V)1の供給開始により世界最先端の航空管制システムを装備することとなった米陸軍航空管制部隊は、あらゆる環境における陸軍航空の運用において、緊要な役割を果たし続けてゆくことであろう。
固定施設
航空管制プロダクト・オフィスは、固定施設用装備品に関し、DASR(Digital Airport Surveillance Radar, デジタル空港監視レーダー)およびDAAS(DoD Advanced Automation System, 米国防総省新自動化システム)の改修を継続的に実施している。すでに改修が始まっているインターリム・ボイス・スイッチは、世界中の陸軍飛行場に装備される予定である。精密進入レーダー能力に関しては、2020年度に計器着陸システムへの更新が開始され、2021年度に測距装置を備えたドップラーVOR(Very High Frequency Omni-Directional Range, 超短波全方向式無線標識)への更新が行われる予定である。
維持・整備
航空管制プロダクト・オフィスは、過去1年の間、多くの利害関係者と提携し、マスター・メインテナンス・データ・ファイルおよび整備実施規定を改訂するとともに、すべての戦術システムに関する報告を支援し、航空管制システムの維持・整備能力を改善して、即応性の向上に努めてきた。また、トビーハナ陸軍補給処は、維持・整備に関わる改編の一環として、MOTS(Mobile Tower System, モバイル・タワー・システム)の補給処整備体制を確立し、MWO(改造指令書)に基づくAN/MSQ-135からAN/MSQ-135Aへの改修を実施してきた。一方、TTCSの整備を担任する米陸軍通信電子コマンドは、将来のAN/TSQ-198Bへの改修に関し、トビーハナ陸軍補給処がその能力を確立するのを支援してきた。
今後も、航空管制プロダクト・オフィスは、戦術システムの維持に関わる構想について検討を継続し、部隊の即応性向上のため、兵士たちが最高の支援を受けられるように最大限の努力を傾注してゆく。
パトリック・レイデン氏は、アラバマ州レッドストーン工廠の航空プログラム・エクゼクティブ・オフィス航空システム・プロジェクト・オフィスの航空管制プロダクト・マネージャーである。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2018年11月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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4件のコメント
航空管制は専門外なので、訳語に不適切なものがあるかも知れません。より適切な訳語があれば、教えて下さい。
「固定施設」の項の「インターリム・ボイス・スイッチ」の意味が分かりません。ご存知の方がいたら教えてください。
以前から気になっていたので色々検索してみたのですが、「meaning Interim Voice switch」で検索してみたところ、Airport Technologyの「Frequentis USA Supplies Modernised Voice Switch Solutions for US Army」とTechopediaの「Voice Switching, Control and Applications (VSCA)」という記事を見つけました。
グーグル翻訳を読んだ解釈ですが、電話交換機やメディアゲートウェイを合わせたような機器ではないかと思います。
ありがとうございます。教えて頂いた資料を読んでみます。