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陸軍航空の情報センター

MH-47GブロックIIの部隊配備-ボトムアップ・ソリューションの有効性

少佐 ジョン・ファーロウ

市街戦訓練場でファスト・ロープによる潜入訓練を実施するMH-47Gチヌーク

MH-47GブロックIIの初号機が第160特殊作戦航空連隊(空挺)内のある実動大隊に配備されてから2年が経過した。陸軍が装備品の新規導入および改修に際して推進しているトータル・パッケージ・フィールディング(Total Package Fielding, TPF)モデルは、大幅に改修された特殊作戦用航空機の配備という特殊な状況において必ずしも現実的なものではなかった。予算の制約、複雑なテクノロジー、厳しい配備スケジュール、維持管理上の諸課題は、新型機を配備する航空部隊の即応性の維持に重大な問題をもたらした。現在の技術の進化および作戦環境の変化速度は、教義、訓練および維持基盤の整備速度を超えている。高い国外展開頻度(operational tempo, OPTEMPO)を維持しながら配備を推進することで得られた最大の教訓は、戦術レベルからの迅速かつ効果的なフィードバックの必要性であった。受領部隊は、DOTMLPF-P(Doctrine, Organization, Training, Materiel, Leadership and Education, Personnel, Facilities, and Policy, 教義・組織・訓練・資材・統率力及び教育・要員・施設並びに方針)のフレームワークの不完全さを克服し、ボトムアップ・アプローチを推進することにより、短期間での装備化に伴って生じる問題点を克服しなければならない。

財政上の制約

過去3年間、国防総省予算に占めるアメリカ特殊作戦軍(Special Operations Command, SOCOM)の予算の割合は減少を続けており、2022会計年度には国防総省予算全体の1.29%を占めていたものが2024会計年度には1.15%になっている。加えて、特殊な航空宇宙システムおよびその構成品の維持費は、インフレの影響により大幅に増加している。こうした財政上の制約は、MH-47GブロックIIの配備の規模および速度に影響を及ぼし、配備部隊数を減少させ、即応性および能力の双方を低下させている。加えて、維持費の上昇は、ブロックII専用の補用品の調達にも影響を与えた。航空機用クラス4(整備用部品)が無尽蔵に調達できる時代は終わったのである。その一方で航空機搭乗員および整備員には、戦闘即応性の低下を回避するため、ミスが許されない環境で任務を遂行しなければならないというプレッシャーが重くのしかかっている。

このようなMH-47GブロックIIの部隊配備における財政上の制約に対処するため、大隊レベルの指揮官達は、ワーキング・グループを毎月実施してきた。それは、配備プロセスの早い段階で問題を把握し、将来の大きな財政上の負担を防止し、今後何年にもわたって連隊の即応性を維持することを可能にした。加えて、ブロックIIの部隊配備は、MH-47を支援するために世界中で使用されている前方支援パッケージ(Forward Support Packages, FSP)の完全な見直しを行う機会をもたらした。このことが、海外展開中の航空機の即応性を維持しつつ、前方支援パッケージの維持費を低減することを可能にした。

テクノロジー

現在の作戦環境においては、新しいテクノロジーを記録的なスピードで開発することが求められる。このことは、完璧とは程遠い装備が戦術部隊に配備されるという結果をもたらしている。最初のMH-47GブロックIIが配備されて以降も、3つの異なるバージョンの共通アビオニクス・アーキテクチャ・システム(Common Avionics Architecture System, CAAS)、悪視程環境操縦システム(Degraded Visual Environment Pilotage System, DVEPS)、次世代戦術通信(Next Generation Tactical Communications, NGTC)および複数の自己防護装置(Aircraft Survivability Equipment)のアップグレードなどの大幅な改修が行われてきた。最初に配備された15機のMH-47Gには、現在、5種類の形態が存在している。この形態の管理は、整備員および搭乗員の双方にとって大きな負担となっている。しかし、これらの複雑なシステムを完全に完成させてからブロックII初号機の生産を開始していたならば、配備スケジュールは許容できないほどに遅延していたであろう。こういった頻繁なアップデートやアップグレードによる部隊指揮官の負担増大は、今日の航空科部隊が受け入れなければならない現実のひとつなのである。

試験

最初のMH-47GブロックIIが配備されてから3か月後には、艦上運用における耐腐食性の試験を実施した。同じく6か月間で、最も要求の厳しい環境下における6機のブロックIIの試験を継続しつつ、ナショナル・トレーニング・センターにおける特殊作戦部隊による初の訓練を支援した。このことは、この機体の運用だけではなく、維持基盤にも負担を強いることになった。2つの別々の任務部隊から250マイル以上離れた場所に整備拠点を開設しなければならなかったからである。新型機を配備のために運用を一旦停止するという従来の要領では、ソフトウェアの問題、新しい構成品の故障、機体に負荷をかけなければ発見できない問題など、避けることのできない障害の発生を先送りにしてしまう。配備開始からわずか16か月でMH-47GブロックIIの運用を開始できた最大の要因は、故障が発生しても安全な環境において、新型機を限界まで追い込んだことであった。これらの問題の早期発見と効果的な情報発信を図ることにより、システム統合管理オフィス(Systems Integration Management Office, SIMO)、テクノロジー・アプリケーション・プログラム・オフィス(Technology Applications Program Office, TAPO)、陸軍特殊作戦航空コマンド航空整備局(ARSOAC Aviation Maintenance Directorate, AAMD)、航空計画管理室(program executive office-Aviation, PEO-AV)、およびアメリカ陸軍特殊作戦航空コマンド(U.S. Army Special Operations Aviation Command, USASOAC)司令部との連携を確立し、新型機の配備を成功させるために必要な資材を確保し、指示を発出することができた。

この際、システム統合管理システムおよび連隊標準化班による2年間にわたる広範な検証を実施し、チェックリスト、緊急操作手順およびIETM(Interactive Electronic Technical Manual, 対話型電子整備実施規定)の精度の高い修正を行った。また、指導者養成課程を創設し、関係する特技者に対する教育訓練を実施して、資格を付与した。さらに、改修および改良が実施されるたびに、すべての関係者をその問題に取り組ませ、知識、訓練および装備の違いによって生ずるギャップを克服してきた。航空特殊作戦部隊の規模は小さいが、新型機の配備および改修においては、大規模な部隊と同レベルの資材を割り当て、専門家を派遣することが重点である。大隊レベルにおいては、新しい器材を運用環境に動的に統合する要領を標準化し、その訓練を主導的に実施しなければならない。第160特殊作戦飛行連隊において、各中隊レベルの特技者が、過去2年間にわたり、悪視程環境操縦システム”の使用に関する搭乗員訓練マニュアル(Aircrew Training Manual, ATM)に示された操作要領の修正を行ってきたのは、その一例である。

維持基盤

多くの新型機の部隊配備において最も大きな問題となることのひとつが、その維持である。ブロックIIの部隊配備においては、それに合わせて採用されたボトムアップ・アプローチが大きな効果をもたらした。格納庫で勤務する航空整備員からプログラム・オフィス、さらには設計上の決定を下すエンジニアに至るまで迅速なフィードバックを可能にするオープンなコミュニケーション・ラインを構築できたたことは、MH-47Gの部隊配備に計り知れない恩恵を与えてくれた。加えて、新しいMSG-3(Maintenance Steering Group-3)システム(訳者注:航空機の整備スケジュールの効率化を目的とした整備計画の策定手法)の理解および習熟に特別な重点が置かれた。この新しいシステムの導入は、航空機の検査だけではなく整備全体に関わる考え方を従来のものから大きく転換させることになった。その成功には、現場の整備員(wrench turners)とMH-47GBlockII用のMSG-3を書き上げたチームとの間の直接的なコミュニケーションが不可欠であった。

結論として、複雑な技術と厳しいスケジュールに加えて、高い国外展開頻度によってもたらされる課題にもかかわらず、MH-47GBlockIIの部隊配備はこれまでのところ成功を収めている。これまでの陸軍における新機種の配備とは異なり、この機体の配備にはあらゆるレベルでの協力体制が不可欠であった。テクノロジー・アプリケーション・プログラム・オフィス、システム統合管理オフィスおよび陸軍特殊作戦航空コマンド航空整備局の素晴らしいチームワークと戦術部隊レベルからの毎日のフィードバックを組み合わせることで、新機種を配備しながらも世界中に運用展開できる態勢を生み出すことができた。今後の新機種の配備で成功を収めるためには、運用部隊は、配備プロセスの不完全さを受け入れ、効果的なボトムアップ・アプローチの推進することにより、迅速な配備によって生じる問題点の克服を図ることが必要なのである。

ジョン・ファーロウ少佐(ペンネーム)は、ケンタッキー州フォート・キャンベルの第160特殊作戦航空連隊(空挺)の中隊長である。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年06月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    「能力が低くても完成度の高い装備品を創意工夫しながら戦う時代は終わりを告げ、たとえ完成度が低くても能力の高い装備品に改善を加えながら戦わなければ勝てない時代になった」ということなのではないでしょうか。