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陸軍航空の情報センター

ライフルからドローンへ

UASの調達についてM-16から学ぶべきこと

少佐 ダラス ・ダーラム

比喩的にも文字どおりにも、沈みゆく太陽と向き合うRQ-7シャドウ。写真:上級准尉3 ランス・ルデュック(アメリカ陸軍)

ボブ・ディランは「時代は変わりつつある」と書き残しています。前例のない技術の変化とそれに伴う教義の進化を目の当たりにできる今は、軍隊に所属する者にとって刺激的な時代です。おそらく、ウクライナにおけるUAS(uncrewed aircraft systems, 無人航空機システム)と遠隔操縦機の急速な増加ほど、このことが顕著に表れている分野はないでしょう。より身近なところでは、アメリカ陸軍は最近になってRQ-7 シャドウと RQ-11 レイヴンを売却することを決定しました。陸軍のUASの 1 つの章が終わりを遂げ、待望のFTUAS(Future Tactical UAS, 将来戦術無人航空機システム)の登場が早まることが期待されています。

従来の UAS を急速に廃止される中、代替機の選定が喫緊の課題となっています。シャドウズとレイヴンズが提供してきた偵察能力を失うわけにはいきません。FTUAS の配備はまだ遠い将来の話ですが、陸軍のすべての旅団や師団にとっては改革のチャンスなのです。市販の既製品(COTS)システムから 3D プリントまで、陸軍はウクライナで学んださまざまな教訓を活用しようとしています。FTUASという長期的な解決策を検討しつつも、緊急性を考慮した短期的または暫定的な解決策が必要なように思えます。ただし、それにはリスクが存在します。そこに潜む問題点は、M-16ライフルの開発という1957年に経験した調達に見いだすことができます。

過去の教訓

第2次世界大戦後、M-14ライフルが誕生しました。しかし、それは第2次世界大戦で名声を博したM-1ガーランドの後継としては不十分であることが判明しました。M-14は、M-1よりわずかに軽量でしたが、自動射撃モードの制御が難しいという問題を開発当初から抱えていました。製造の遅れにより、スプリングフィールド兵器廠での開発後3年間の生産数は、わずか4,245丁にとどまりました。アメリカ陸軍は、この能力のギャップを埋めるための解決策を必要としていたのです。

幸運なことに、当時の軍事企業は陸軍向けの未来的なSPIW(Special Purpose Individual Weapon, 特殊目的個人兵器)の設計を自発的に進めていました。しかし、その開発が長引く中、東南アジアでの戦争が勃発すると、陸軍は十分な量のM-14を保有していないことに気づきました。暫定的な武器が必要なのが明らかでした。そこで登場したのがAR-15だったのです。

1967年9月8日、サイゴン近郊でM-16A1ライフルを発射する第502歩兵連隊第2大隊の小銃手。写真:ロバート・C・ラフーン(アメリカ陸軍、国立公文書館所蔵)

大陸軍司令部(Continental Army Command, FORSCOM および TRADOC の前身)からの要請に応えて、当時AR-15 と呼ばれていたM-16を設計したのは、ユージン・ストーナーでした。その設計は、第2次世界大戦後の研究に合致したものでした。その研究では、陸軍にとって伝統的であった .30 口径(7.62mm)のライフルでは大きすぎることや半自動小銃よりも全自動小銃の方が効果的であることが明らかになっていました。.22口径(5.56mm)の弾丸を発射し、重量は6ポンド(約2.7キログラム)未満で、全自動と半自動の両方の射撃モードを備えたAR-15は、陸軍の従来の兵器体系や、長距離での正確な射撃を重視する教義から逸脱した兵器でした。このため、射撃に関する従来からの伝統に固執する多くの敵に直面しました。しかし、このライフル銃は数人の革新的な人々によってを支持され、国防長官(当時)のロバート・S・マクナマラの決心を仰ぐことになりました。

マクナマラは難しい決断を迫られました。問題を抱えたM-14計画の実現を追求するのか、それとも待望のSPIWが完成するまでの暫定対策を模索するのか? 1963年、マクナマラはM-14の生産をすべて中止し、SPIWの供給を待たずに少数のAR-15を調達することに決定しました。XM-16E1と呼ばれるようになったAR-15の試験、改修および供給が直ちに開始されました。

初期設計段階のそのライフルは、直ちにベトナムに供給されましたが大失敗に終わりました。その原因は、国防省の指導者が設計を完成させるよりも暫定的な解決策としてライフルの生産を急いだためであり、その革新的な機能によるものではありませんでした。実際、この「暫定的な」武器は、60年以上たった今でも陸軍の標準的な歩兵用ライフルの基礎となっています。現代の M4 カービン銃は大幅に進化しましたが、その系譜の源がXM-16E1 にあることは明らかです。

それでは、この歩兵用ライフルとクアッドコプターやドローンとの間にいったい何の関係があるのでしょうか? 現在のシャドゥとレイヴンUAS は、 当時のM-14 ライフルと同じ立場にあるのです。M-14 は第2次世界大戦前の技術に基づいた時代遅れのシステムであり、イギリスの EM2 やベルギーの FAL などの同盟国のライフルから大きく遅れたものでした。同様に、シャドウとレイヴンズも、これまで軍に多大な貢献をしてきましたが、その時代はもう過ぎ去ってしまっています。

現在のUAS保有部隊は、1963年の歩兵部隊と同じような状況にあります。つまり、保有する旧式な装備品の量が不十分であるにもかかわらず、将来の後継装備品の開発スケジュールが確立できていないのです。このような伝統と未来の間のギャップを埋めるためには、何が必要なのでしょうか?

マクナマラが1963年に選択したのは、M-16を速やかに戦闘部隊に供給することでした。そのライフルの供給速度を重視しつつ洗練された設計を追求するため、各軍種を統括する技術調整委員会が立ち上げられました。

その委員会は 7 か月で M-16 を完成させましたが、いくつかの不適切かつ不完全な改修により、ベトナムの戦場では故障が頻発する事態となりました。しかし、SPIWは結局実現することがなく、陸軍は そのM-16 を永続的な装備品として採用することになってしまったのです。

教訓を生かす

マクナマラは状況を一時的に解決するためにM-16を導入しましたが、その結果は期待外れなものでした。古いUASと新しいUASの間のギャップを埋めるにあたって、過去の暫定的なシステムと同じ失敗を繰り返してはなりません。「暫定」は供給を速めることにはつながりますが、品質の低下を招く可能性もあるのです。その場合、基準を満たさない暫定的なシステムが永続的なシステムになってしまう場合も少なくありません。結局のところ、「手の中の 1 つは、藪の中の 2 つに値する」のです。軍事用語で言えば、「運用者が保有する 1 つの装備品は、開発中の 2 つの装備品に値する」ということです。

この物語はもう一つの重要な教訓を与えてくれます。M-16は陸軍が小火器開発の岐路に立っている時に生まれました。そのライフルは、それまでの研究によって裏付けられてはいましたが、それまでの陸軍の伝統を打ち破るものでした。その最大射程は500ヤードで、M-14の約半分しかありませんでした。また、それまでの木材に代わってプラスチックで作られており、小さな.22口径の弾丸を採用し、陸軍のスプリングフィールド兵廠ではなく民間企業において設計されました。

UAS の運用も、同じような岐路に立っています。シャドゥなどの従来のシステムは滑走路を必要としていましたが、将来の UAS はそのような縛りを受けないものになります。これは歓迎すべき改善ですが、同時に簡単には受け入れられないパラダイムシフトももたらされるのです。たとえば、UAS を消耗品として分類できるでしょうか? ウクライナでの作戦は、そうすべきであることを示しています。2023年には、ウクライナのドローンは毎月1万機が失われたと推定されています。しかし、将来の小型 UAS は、「使い捨て」という考え方を受け入れられるような価格となるのでしょうか? このことはほんの一例に過ぎません。UAS を成功させるには、空域、訓練、戦術のすべてにおいて直面するであろう劇的なパラダイムシフトを受け入れなければならないのです。

航空業界のイノベーションにとって、今はまさに緊要な時期です。UAS の専門家たちは戦争における次の進化を見据えた独自の態勢を整えています。UAS開発の進展には、過去の調達での失敗から学ぶことが欠かせないのです。

免責事項:この記事で述べられている見解は著者のものであり、陸軍省、国防総省、または米国政府の公式の方針または立場を反映したものではありません。

ダラス・ダーラム少佐は、本稿執筆当時、コロラド州フォートカーソンの第 4 歩兵師団のG3 航空担当士官(副 )であり、現在はアラバマ州フォート・ノボセルの第 1-13 航空大隊の副隊長として勤務しています。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年10月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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