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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧-AH-64のテール・ローター・ドライブシャフトの損傷

AH-64 Tail Rotor Driveshaft Break

フェーズ点検終了後の整備確認飛行を実施するため、ホバリング移動を行っていたところ、No.4ドライブシャフトのボルトが脱落し、ドライブシャフトの結合が外れてテール・ローターの推力が失われた。機体は、右方向に旋回し始め、マストを中心に450度旋転して、地面に激突した。

飛行の経過

500時間ごとのフェーズ点検において、No.4テール・ローター・ドライブシャフト・セクションのボルトの取り付けおよびその後の点検が適切に実施されていなかった。

試験飛行操縦士(maintenance test pilot, MTP)は、振動解析を行うための地上運転を数回にわたって実施した。振動解析の結果が許容内になったり許容外になったりを繰り返したため、試験飛行操縦士は、振動解析器材のアクセロメーター(加速度計)に不具合が発生していると考えた。

このため、アクセロメーターを交換した後、地上試運転を再開した。それでも、振動解析器材のMSPU(近代化通信プロセッサ・ユニット)からの信号に一貫性が得られなかったため、振動解析器材の配線およびアクセロメーターの故障探求を行った。

その後、計器速度10ノット以下でホバリング移動している間に、機体の右への旋回が始まった。旋回の速度は急速に高まり、機体は450度旋転した後、地面に激突した。機体は、横倒しにはならず、主脚およびテール・ブームで支えられた状態で停止した。

搭乗員の練度

試験飛行操縦士は、50飛行時間の試験飛行を経験しており、総飛行時間(すべて連続)は1,284時間であった。副操縦士の総飛行時間は1,167時間であり、そのうち連続した飛行時間は210時間であった。

考 察

航空の世界に間違いは許されない。この航空機の損傷は、人的要因によってもたらされたものである。人員の負傷がなかったことは、不幸中の幸いであった。この事故から得られる教訓は、整備員が適切な手順を履行しなかったことと、このような事故を防止するための施策が効果を発揮しなかったということである。

整備実施規定に基づく整備は、その有効性がすでに実証された基本的事項である。しかし、読者の皆さんにもすでにお分かりのとおり、この事故は整備作業を行った整備員だけの責任によるものではない。この事故の原因は、現場の整備員から指揮官までの整備上の指揮系統にある。過密な航空機の運用は、整備員に大きな負担となっている。陸軍がその作戦可能率を維持するためには、適切な指導監督を行うとともに、具体的な手順を指示することが重要である。

派遣先において部隊の人員交代が行われる場合には、最小限の経験しか有しない試験飛行操縦士が着隊する場合もある。その場合、陸軍航空における支援に関し、より経験の豊富な試験飛行操縦士による指導や助言が必要なのである。また、試験飛行操縦士および整備員は、試験の結果に一貫性がない場合、電子診断機器に注意を集中してしまいがちであることを認識しなければならない。スターター・スイッチをONにするパイロットが安全に飛行を完了するために最も重要なことは、飛行および地上運転を実施する前に、整備記録の確認や飛行前の点検を確実に実施することである。書類や飛行前点検における疑問点が、残ったままにならないようにしなければならない。そのためには、担当した検査員を確認し、回答を得なければならない。陸軍航空に「当てずっぽう」が存在する余地はないのである。そのためには、担当の整備員が持つ専門知識を最大限に生かせるように着意しなければならない。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2018年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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