大規模戦闘作戦(Large Scale Combat Operation)における航空計画
イーグル・チーム(Eagle Team)は、ナショナル・トレーニング・センター(National Training Center, NTC)の決定的行動訓練環境(Decisive Action Training Environment, DATE)の改善を続けている。現代の戦場は、飛行大隊任務部隊(Aviation Battalion Task Forces, ABTF)に多くの課題を突きつけている。この課題の解決を困難にしているものには、空域の錯綜化、敵火力の長射程化、UAS(Unmmand Aircraft System, 無人航空機システム)の急増、敵の戦術、技術および手順(tactics, techniques and procedures, TTP)の変化、統合防空システム(integrated air defense systems, IADS)の改良、電子戦(electronic warfare, EW)能力の向上などがある。我々は、これに対抗しうるシステムをすでに保有している。しかし、それを活用するための知識は十分でない。この新しい環境に適応するためには、秘密区分が指定されたシステムへの恒常的なアクセスおよび計画立案プロセスの標準化が必要である。このような状況を踏まえ、イーグルチームは、評価・標準化部門(Department of Evaluation and Standardization)および航空訓練・教義局(Aviation’s Directorate of Training and Doctrine)の協力を得ながら、航空計画立案プロセスの適正化に取り組んでいる。
航空計画立案ツール(Aviation Mission Planning Tool)
この20年間で、航空任務の詳細な分析を行うためのツールは、劇的に進化してきた。これらのツールの多くには秘密区分が指定されており、教育訓練のための部隊からのアクセスが制限されている。ナショナル・トレーニング・センターで訓練を受ける飛行大隊任務部隊(aviation battalion task force, ABTF)の参謀たちのほとんどは、これらのシステムをまったく知らないか、概要しか知らないかのいずれかである。ほとんどの中隊の計画立案指揮所(cells)からは、航空任務計画システム(Aviation Mission Planning System, AMPS)以外のシステムにアクセスすらできない状態にある。このような状態は、現代戦を生き残るために必要な見積において、知識格差(knowledge gap)を生み出そうとしている。
知識格差(knowledge gap)
現状では、彼我の装備および地域の見積に必要な情報に秘密区分が指定され、日常的にアクセスできない。このため、ほぼ対等な敵(near peers)に対する即応体制を維持することが極めて困難な状態にある。航空任務担当将校(Aviation Mission Survivability Officer, AMSO)課程は、この知識格差を解消するという重要な役割を担っている。しかしながら、修正編制装備表の定めにより、各部隊の航空任務担当将校の増員には限りがあり、情報の一極集中が生じつつある。フォート・ラッカーの航空任務担当将校課程で教育される事項は、すべてのパイロットに周知されなければならない。大規模戦闘作戦(Large Scale Combat Operation)を遂行するためには、計画立案のために航空任務担当将校が提供できる見積のレベルを大幅に引き上げることが必要なのである。この情報およびシステムへのアクセスには、ある程度の制約があるのはやむを得ないものの、部隊が、日常業務においても、これらを利用できるようにすることが急務となっている。
航空任務の計画立案プロセス
現状において、軍事的状況判断の主体となるのは、部隊指揮(Troop Leading Procedures)および航空計画(Aviation Planning)を行う各指揮所(cells)である。いずれの指揮所についても、中隊における計画立案プロセスについての教育および指導が十分になされているとは言えない。ナショナル・トレーニング・センターでの訓練においても、中隊に対し適切な命令を下達できない航空大隊任務部隊司令部要員が散見される。計画立案プロセスにおいて、航空任務計画を具体化するためには、4つの手順が必要である。COA(course of action, 行動方針)、RP(release point, 分進点)進入、経路および任務終了後の行動に関する各見積である。これらの訓練においては、予想される入力を一覧表示し、処理の概要を表示し、使用するシステムについて説明し、予想される出力についての解説が行われている。この訓練により、パイロットたちの思考過程を整理し、大規模戦闘作戦中における拒否、劣化、破壊、宇宙運用環境(Denied, Degraded, Disrupted, Space Operating Environment, D3SOE)で勝利するために必要な計画立案能力の向上が図られている。この計画立案プロセスが確立され、航空部隊全体の教義・組織・訓練・物資・指揮および教育・人事・施設(doctrine, organization, training, materiel, leadership and education, personnel, and facilities, DTOMILPF)が充実することを願っている。将来的には、これらの見積作業について、所属駐屯地においても、より効果的な訓練が実施できるようになるであろう。
所属駐屯地における訓練
部隊訓練においては、駐屯地に所在する施設のさらなる活用を図らなければならない。各部隊は、航空計画の立案に利用可能なシステムを把握し、その取扱に習熟する必要がある。敵の脅威に関わるすべての訓練は、秘密区分を指定した上で実施しなければならない。各中隊は、決心支援一覧表(decision support matrix)、実行チェックリスト(execution checklist, EXCHECK)、同期一覧表(synchronization matrix)、情報収集器材(intelligence collection product)、地形見積システム(terrain analysis system)などを使用した訓練を実施すべきである。
任務予定表(mission timeline)、危険見積(risk assumption)、および目標設定(targeting)の各プロセスに資するためには、大規模戦闘作戦の遂行に必要なレベルの見積が不可欠なのである。イーグル・チームは、来年度も部隊の指導・訓練に邁進する。任務遂行に必要な基盤を構築するため、可能な限りの支援を行う。要望があれば連絡してもらいたい。
Above the Best in the Desert!(戦場で最善以上を目指せ!)
中佐デリク・スミスはカリフォルニア州フォート・アーウィンに所在するナショナル・トレーニング・センターの主席航空訓練官(senior Aviation trainer)、少佐チトー・キャリアンは同副主席航空訓練官兼副指導官(XO mentor)、および少佐ブライアン・ハースは同主席航空運用訓練官(senior Aviation operations trainer)である。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2021年07月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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