AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

適切な整備を行うために

パイロットの能力は操縦している機体の能力で決まり、その機体の能力は整備する隊員の能力で決まる。

整備に関連する航空事故の原因には、2つしかない。誰かが職務を怠ったか、正しく遂行しなかったかのどちらかである。一部の例外を除き、整備ミスは防ぎうるものであり、許しがたいものである。回避できないはずがない。適切な整備とは、適切に訓練された隊員が適切な手順に従って整備を行っている状態をいう。定められた手順に従わないことは、航空事故のためのステージを準備することに等しい。

事故の責任をパイロットに押し付けるのは、簡単なことである。パイロットの操縦ミスは、統計的に航空事故の原因であることが多いがゆえに事故調査の焦点とされがちである。しかし、たとえ事故の主因が操縦ミスであっても、整備ミスが副因となっている場合は少なくない。例えば、次のような事例がある。あるUH-60において、No.1エンジンが停止したが、副操縦士の緊急操作手順が不適切であった。その結果、ローター回転数が低下し、高度が低下して墜落するに至った。

当該機は、整備記録に記載されていた飛行制限を遵守していなかった。その飛行制限とは、No.1燃料タンクの残燃料が400ポンド未満の状態では飛行してはならない、というものであった。つまり、No.1エンジンへの燃料供給が停止する可能性がある状態で飛行していたのである。

取扱書によれば、着陸進入中に低燃圧警報灯が点灯した場合には、エンジン・フュエル・システム・セレクター・スイッチを直ちにクロスフィードに切り替えなければならない。しかし、当該機の副操縦士はそれを行わず、No.1エンジンが停止してしまった。しかも、もう一方のエンジンも停止するのではないかと気にするあまり、機体の操縦や飛行計器の監視への注意配分がおろそかになってしまった。

これだけを聞くと、典型的な操縦ミスによる事故のように思えるが、実はそうではない。確かに、No.1エンジンは、燃料の枯渇により停止した。 しかし、その原因は、No.1燃料タンクのブースト・ポンプに燃料配管が接続されていなかったことにあった。外れた配管が燃料タンク内で空気中に露出し、燃料系統が空気を吸い込んでしまったのである。(訳者注:UH-60の場合、燃料タンク内のブースト・ポンプが機能していなくても、空気を吸い込まない限り、サクション・フィード(エンジンのポンプで燃料を吸い上げること)でエンジンの運転を継続できる。)

燃料配管が、いつの時点で、何のために切り離されていたのかは不明である。飛行部隊の整備員は、燃料系統に問題があることを整備記録に記載する前に、適切な故障探求および是正措置を行うべきであった。

単なる不注意が原因の場合もある。何かを本来の場所とは異なる場所に置き忘れてしまい、何らかの問題を生じさせてしまうというような単純な整備ミスによる事故があまりにも多すぎる。実にさまざまな物があらゆる所に置き忘れられてきた。ボルト、ワッシャー、工具、ウエス、飲み物の空き缶さえもが、ドライブシャフトの下で見つかったり、操縦系統を拘束させたり、エアダクトを塞いだりしてきた。あるUH-1で発生したクラスC事故においては、DDフォーム1577-2(修理可能票)がエンジン・インレット部の6時方向のストラットとバリアブル・インレット・ガイド・ベーンの間から発見された。当該機には、改良型のパーティクル・セパレータが装備されていた。そのタグは、その改修を行った際に取り外されたパーティクル・セパレータに取り付けられているべきものであった。

幸いなことに、当該機の搭乗員は幸運に恵まれていた。エンジンに重大なコンプレッサー・ストールが発生したのは、訓練飛行から帰投し、飛行場上空でホバリングしている最中であった。出力を失った機体は、ヨーイングしながら高度を下げ始めた。パイロットがエンジン故障時の緊急操作手順を適切に行ったおかげで、機体はさらなる損傷を受けることなく着地できた。

機体に搭載されている部品が正常だとは限らない。機体に取り付けられていることは、必ずしもそれが正しい部品であることや正しく取り付けられていることを意味しない。以下は、そういった事例のひとつである。

あるUH-1が対地高度約10,000フィートで整備確認試験飛行を実施中、後席に搭乗している機付長が機体の異状を感じ、パイロットに報告した。計器に異状は見られず、操縦系統の反応も正常であったが、パイロットは緊急操作を実施し、着陸してエンジンをシャットダウンした。点検の結果、オイル・クーラー・ファン・タービンが破損し、ファン・コンパートメントの壁面全体に打痕が生じていた。

当該オイル・クーラー・ファンの故障は、取り付けられていたレデューサー・フィッティングが不適切なものだったため、ファンを駆動する空気流が設計上の制限を超えたことが原因であった。当該機のオイル・クーラー・ファン・アンド・シュラウド・アセンブリは、事故発生の134時間前に取付・点検が行われたものであったが、その後の検査が定められたとおりに行われていなかった。整備実施規定には、フィッティング・オリフィスの直径が.255 inを超えてはならないことが明記されていたが、取り付けられていたオリフィスの直径は.680インチであった。

適切な整備を行うためには、次のことが必要である。

部隊は、一体のものでなければならない。航空機を操縦する隊員とそれを整備する隊員の関係が「俺たちとあいつら」では、最高の飛行部隊とは言えない。それは、相互に信頼を育むものでなければならない。航空機が離陸した時、パイロットが任務遂行に必要な能力を持っていると感じ、整備員がそのために必要な役割を果たせたと感じるようになってこそ、最高の飛行部隊と言えるのである。


整備員としての誓い

私は、整備技術者として、
私に職務遂行のための技術的資格を与えてくれた軍に対し、
私の整備技術に自らの命と安全を預けてくれる搭乗員や搭乗者に対し、
私をプロの整備士として、そしてプロの戦士として育ててくれた部隊に対し、
私をチームの一員として、頼りにしてくれている同僚整備員に対し、
そして、職務をプロフェッショナルにやり遂げたいと願っている自分に対し、
以下の責任を果たします。

全ての飛行の安全を確保するために、最高レベルの整備作業を行います。常に自信をもって整備作業を実施し、疑問がある場合は上司に相談します。
職務に専念し、自己研鑽に努め、専門的特技能力の向上を図ります。個人的な欲求や意見が職務遂行に影響を及ぼさないように心がけます。
心身の状態が整備ミスにつながる可能性がある場合には、整備作業を行いません。
プロの整備員にふさわしい作業を行えるよう、整備工具および器材を最高の状態に保ちます。

私は、自分自身および同僚に対し、プロの整備員としての名誉にかけて、これらの原則を遵守することを誓います。


UH-60を整備する第25戦闘航空旅団の隊員(出典:CAB conducts aviation maintenance, US Army, https://www.army.mil/article/49046/cab_conducts_aviation_maintenance)
                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 1991年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    古い記事ですが、共感を覚える内容だったので翻訳してみました。