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陸軍航空の情報センター

航空事故回顧-ルイジアナ州兵UH-60MのIIMC(予期せぬ天候急変による計器飛行状態)

任務開始前

事故発生部隊は、イラク自由作戦への展開中に、ノースカロライナ州キャンプ・ルジューンの海兵特殊作戦コマンド(MARSOC)への航空支援を経験していた。海兵特殊作戦コマンドは、2015年3月9日から12 日までの間のフロリダ州エグリン空軍基地 (AFB) での訓練に際し、ルイジアナ州陸軍州兵にヘリコプターの派遣を直接要請した。当該任務の調整および計画は、2015年2月に陸軍航空支援施設の要員によって行われた。訓練支援の申請は、州兵航空士官 (SAAO) から州兵局 (NGB) に対して行われ、州兵局の航空安全部長によって承認された。2015年3月9日から12日に予定されていた訓練のリスクは、すべての兵員座席の取り外しが要求されたことから、高リスクと判断された。リスクの最終承認権者は、州兵航空士官であった。

ハルバート・フィールド空軍基地の気象予報(任務実施用のものであって、任務計画用のものではなかった)によれば、現地時間1600から2300の間は、1,000および5,000フィートにブロークン・シーリング(とぎれとぎれの雲)、8,000および10,000フィートにオーバーキャスト(全雲)、視程が7法定マイル(約11キロメートル)と予報されていた。その後、300および1,200フィートにオーバーキャスト(全雲)、視程は雨により1マイル(約2キロメートル)から、霧により1/2マイル(約1キロメートル)まで悪化すると修正された。

飛行

2015年3月10日、事故機の搭乗員は、デスティンフォート・ウォルトン・ビーチ空港を離陸し、エグリン空軍基地訓練施設に向かった。その後、ハルバート・フィールド空軍基地の周辺でケービング・ラダー(梯子)およびヘリキャスティングの訓練を実施して、海兵特殊作戦コマンドを支援した。昼間の反復訓練を異状なく完了すると、デブリーフィングおよび夜間の反復訓練の準備のため、テスト・エリア15に帰投した。

現地時間2017、2 機のUH-60Mがテスト・エリア15を離陸した。離陸後2分もしないうちに、後続機は、長機を見失ったものの、テスト・エリア15に無事に帰投した。それから2分ほど後、IMC(instrument meteorological condition, 計器飛行気象状態))に遭遇した長機のUH-60Mが空間識失調に陥り、海面に墜落した。

飛行後

後続機は、2145に第1陸軍航空支援所(AASF)およびエグリン・レーダー管制所(ERCF)への通報を行った。レーダー管制所は、直ちに捜索救難活動を開始した。エグリン空軍基地はランプ・チェック(搭乗員の確認)を実施し、沿岸警備隊は、サンタ・ローザ海峡の捜索を開始した。0128、捜索を支援していた海兵隊員が海峡内で当該機の残骸を発見した。3月13日、機体が回収された。3月16日、最後の搭乗員が発見された。

要因

霧は、飛行に関わる気象災害の中で、最も遭遇する頻度の高いもののひとつである。霧が形成される速度は、その危険性をさらに高める可能性がある。霧は、空気が露点まで冷却された場合や、水面付近で水分が加えられた場合に形成される。気温と露点温度の差が2.2℃以下の場合は、特に注意しなければならない。また、地表面と海水面との間で温度が大きく異なる沿岸地域で発生しやすい。

当該機の搭乗員は、ブリーフイング時に任務担当士官から示され、最終任務承認権者に承認された最低気象条件を下回ってもなお、任務を継続したものと推定される。また、計器飛行状態への対応が適切に行わなわれなかったため、空間識失調に陥り、機体を回復困難な姿勢になったものと推定される。

考察

空中部隊指揮官または機長が、AR 95-1 FLIGHT REGULATIONS(運航管理規則)によって示されたり、任務担当士官によって示され最終任務承認権者から承認されたりした最低気象条件を下回る状況下で、任務の開始または継続を判断することは、予想していなかったリスクを受容することを意味する。最終任務承認権者は、リスク判断権者でもあることを忘れてはならない。

特に海岸や広い水域の上空または付近の飛行を計画する場合は、目的地や代替目的地での霧の発生を予期しなければならない。目的地が海風の吹く海岸にある場合には、代替目的地は、内陸部の、できれば丘や尾根の反対側に選定すべきである。尾根や山脈は、霧が内陸に進入するのを防ぐための障壁となる。

現代の通常および特殊作戦機のほとんどは、多軸自動操縦機能を有する高度な飛行制御システムを装備している。計器飛行方式への移行が必要となる可能性がある場合は、自動操縦を利用可能な状態にしておくべきである。それは、貴官とその部下たちが無事に帰投し、明日以降も飛行できることにつながるであろう。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2022年10月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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