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陸軍航空の情報センター

アメリカ陸軍のヘリにインディアンの名前が付けられている理由

ケイティ・ラング
アメリカ国防総省

良く知られているとおり、アパッチ、ブラックホーク、チヌークなど、アメリカ陸軍のヘリコプターには、その名前の付け方に決まりがある。その主要なものには、すべて、インディアンの部族または人物にちなんだ名前が付けられている。

2019年1月23日、ギリシャのリトホロで実施された諸兵科連合実弾射撃演習において、ハイドラ70ロケット弾を発射する第4戦闘航空旅団第17騎兵連隊第6飛行隊のAH-64アパッチヘリコプター。ヨーロッパにおいては、各種侵略に対する即応態勢を維持するため、戦略的に配置された駐屯地を基盤とした同盟国との共同訓練が頻繁に実施されている。(撮影:2等軍曹 クリス・ボネット)

それがなぜなのか、考えたことがあるだろうか?

アメリカ軍とインディアンとの関りには、長い歴史がある。両者は、ヨーロッパ人がアメリカに定住し始めた頃から20世紀の初頭まで、インディアン戦争と呼ばれる戦いを断続的に続けていた。その一方で、インディアンたちは、200年以上にわたって、アメリカ軍で最も勇敢な兵士として活躍している。その間にアメリカで最高の勲章である名誉勲章を受賞したインディアンは、32名にのぼる。

ヘリコプターにインディアンにちなんだ名前を付けるという慣習は、かつては、正式な規則に定められていた。そして、それが廃止された以降も、そのまま引き継がれてきたのであった。

良く知られている陸軍ヘリの名称には、次のようなものがある。

アメリカ陸軍のヘリコプターが、インディアンにちなんで名付けられるようになったのは、なぜであろうか?

ある陸軍博物館の関係者によると、この命名規則の歴史は、陸軍から空軍が独立し、ハミルトン・ハウズ陸軍大将が陸軍航空での勤務を開始した1947年までさかのぼる。ハウズ大将は、陸軍機の運用に必要な教義や、地上部隊を支援する手法を検討し、それらを確立しようとしていた。

2017年6月19日、サウスダコタ州ベルフーシュ貯水池で行われたゴールデン・コヨーテ訓練演習において、負傷者役の兵士を懸吊するHH60-M患者後送用ブラックホーク。兵士たちの任務遂行能力を向上させるためには、このような実戦的訓練の実施が不可欠である。(撮影:特技兵 ミッシェル・マーフィー)

そんな中、ハウズ大将は、陸軍最初の量産ヘリが「ホバーフライ(ハナアブ)」や「ドラゴンフライ(トンボ)」と呼ばれていることを適切に思わなかった。このため、通達を発簡して、ヘリコプターにその能力にちなんだ名称を付けるように指示したのである。「高速かつ機敏なヘリコプターは、インディアン戦争中、インディアンの部族がグレートプレーンズで見せた戦い方と同じように、敵の側面を攻撃し、直ちに離脱することができる兵器なのである」とハウズ大将は述べた。

その後導入された3種類目の量産ヘリは、1970年代のアメリカ映画「M★A★S★H マッシュ」で一躍有名になったH-13であった。ハウズ大将は、ブラックヒルズ戦争で陸軍兵士たちと戦い、リトルビッグホーンの戦いで第7騎兵連隊を打ち破ったインディアンの部族にちなみ、その機体に「スー」という名前を与えた。このことが、1969年に陸軍規則70-28が制定されるきっかけになったと考えられる。

2018年8月29日、ドイツのアンスバッハにあるカッターバッハ陸軍飛行場でAH-64アパッチヘリコプターの定期点検を行う第12戦闘航空旅団第3航空連隊(攻撃偵察)第1大隊の兵士。(撮影:チャールズ・ローズモンド)

陸軍規則70-28には、主要な装備品の命名に関する基準が次のとおり規定されていた。

装備品の命名にあたっては、次の事項に着意するものとされた。

また、陸軍の航空機に関しては、「インディアンの用語、またはインディアンの部族・酋長の名前」を含めることとし、その名前の候補は、インディアン事務局から提案を受けるものとされた。

さらに、航空機以外の装備品については、次のように定められた。

この陸軍規則70-28は、その後廃止され、具体的な基準を含まない方針的事項に取って代わられたものの、そこに示されていた基準は、慣習として現在まで受け継がれている。例えば、2012年に陸軍に練習ヘリとして導入されたUH-72Aは、ノースダコタ州とサウスダコタ州にまたがる「偉大なるスーの国」を構成したラコタ族にちなんで「ラコタ」と名付けられた。

2012年6月10日、サウス・ダコタ陸軍州兵に配備された2機の新しいUH-72Aラコタは、ノース・ダコタ州のスタンディング・ロック・インディアン保留地で行われた伝統的な式典において、ラコタの長老たちからの祝福を受けた。このような儀式は、過去数十年の間、たびたび行われてきている。

2012年6月10日、サウスダコタ陸軍州兵のUH-72ラコタの就航式典において、伝統的な衣装を身にまとった踊りを披露するスタンディング・ロック・スー・ネイションの2人のメンバー。サウスダコタ陸軍州兵は、ラコタ・ネイションと協力して、居留地の住民に対する支援するとともに、そのコミュニティ活動への若者の積極的な参加に寄与している。(撮影:3等軍曹 ジャクリーン・フィッツジェラルド)

アメリカ陸軍のヘリコプターの名前には、インディアンの精神や自信、機動力、忍耐力、そして戦闘力にちなんだ思いが込められているのである。

                               

出典:U.S. Army 2020年11月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    日本も国産の装備品にアイヌに関わる名前を付けるのは、どうでしょうか?
    アイヌの歴史に詳しくないので、適切かどうか分かりませんが、「シャクシャイン」とか、「コシャマイン」とか...
    カッコいいし、「ウポポイ」と同じように、「アイヌ文化の復興・創造・発展」に一役買えるのではないかと思います。

    • 仙台太郎 より:

      アイヌ運動の後方には半島系の団体や左翼系が関わって、本当のアイヌの歴史が歪められているので要注意です