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陸軍航空の情報センター

FM 3-21.38 Pathfinder operatiions

米陸軍のLZ派遣班に関する教範です。

計画・編成・実施および脅威、航空管制、回転翼機着陸地域、機外搭載、投下地域について、記載されています。

【部分訳】

第4章 ヘリコプター降着地域

ヘリコプター降着地域(helicopter landing zone, HLZ)には、1つ以上のヘリコプター発着地(helicopter landing site)が設定される。各発着地には管制センターが設営され、ほとんどの場合、有人または無人の分進点(release point)を設定する。各発着地には、個々の航空機が着陸するための1つ以上の着陸点(landing point)を設定する場合がある。

第I節 発着地の選定

地上部隊指揮官は、支援航空部隊と協力して、地上戦術計画を支援できるヘリコプター降着地域を選定する。

考慮事項

4-1. 戦術的考慮事項は、支援対象となる地上部隊の実際の任務に応じて適用されなければならない。これらの考慮事項を適用する責任は、地上部隊指揮官およびその参謀にある。LZ派遣班(pathfinder)は、地上戦術計画を理解し、地上部隊を適切に支援して、任務の達成に寄与しなければならない。

戦術的考慮事項

4-2. 戦術考慮事項には、以下のものが含まれる。

技術的考慮事項

4-3. 技術的考慮事項は、昼間または夜間のヘリコプター降着地域運用の技術的な考慮事項である。技術的考慮事項の適用は、LZ派遣班の責任である。ヘリコプターの最小着陸地積やヘリコプター間の最小距離は、多くの要因で変化する。航空部隊の作戦規定(SOP)にこれらの要件が明記されていない場合は、LZ派遣班長は航空部隊指揮官の指導に従う。最小着陸要件に関する最終的な決定は、航空部隊指揮官が行う。地図、航空写真、地上または空中偵察に基づいてヘリコプター発着地を選定するに際し、LZ派遣班は以下の要因を考慮する(図4-1、4-2ページ)。

ヘリコプターの数と種類

4-4. 多数のヘリコプターを同時に着陸させるため、部隊指揮官は近くに別の発着地を準備するか、同じ発着地に順次着陸させることができる。また、多用途ヘリコプターに比較して、機外貨物を懸吊した輸送ヘリコプターには、通常、より大きな発着地が必要となる。必要な発着地の大きさは、同時に着陸する必要がある航空機の大きさと数によって決定される。着陸点、すなわち接地点(touchdown point, TDS)は、特定の航空機が使用する地上の特定の場所である。着陸点の大きさは、以下に基づき、航空部隊指揮官によって決定される。

図4-1 着陸点の大きさ

4-5. 図4-1は着陸点の大きさを示す。標準的な着陸点の用途と航空機の種類は表4-1に記載されている。標準的な着陸点の大きさは表4-1に記載されている。

4-6. LZ派遣班は、発着地において、着陸点の中心から中心までの最小距離を測定する。LZ派遣班は、航空機のサイズが異なる場合、最も大きな基準で着陸点を分散し、着陸点の中心から中心までサイズ5では100メートル、サイズ6では125メートル、サイズ7では150メートルの間隔を設ける。

4-7. 航空部隊指揮官は、調整の間、LZ派遣班に対して着陸点のサイズを一段階縮小する権限を与えた可能性がある。着陸点の縮小は、ヘリコプター降着地域を任務遂行に適したものにするための最後の手段である。着陸点の大きさは、すべての要因を慎重に考慮した上で、計画的に縮小されなければならない。異なる種類の航空機が当該着陸点を使用する場合、機外搭載を行う航空機よりも、まずは多用途(軽量)航空機の大きさを縮小すべきである。

着陸
着陸点の最小直径ヘリコプター/運用の種類
サイズ180フィート(25メートル)OH-6やOH-58Dなどの小型観測ヘリコプター
サイズ2125フィート(35メートル)UH-1H、H-65、AH-1Wなどの小型多用途および攻撃ヘリコプター
サイズ3160フィート(50メートル)UH-60、H-2、AH-64などの中型多用途および攻撃ヘリコプター
サイズ4265フィート(80メートル)CH-47、H-3、CH-53などの輸送ヘリコプター、または事前調整による
サイズ5328フィート(100メートル)機外搭載輸送ヘリコプターおよび機種等不明の航空機
サイズ6410フィート(125メートル)機外搭載(ロングライン)の輸送ヘリコプター
サイズ7492フィート(1,505メートル)暗視装置(NVG)を使用した機外搭載ヘリコプター
表4-1 着陸点の用途

着陸隊形

4-8. ヘリコプターのパイロットは、着陸隊形を飛行隊形に合わせるべきである。発着地の制限に対応するために必要以上に隊形を変更すべきではないが(図4-2、4-4ページ参照)、そうせざるを得ない地域に着陸しなければならない場合もある。着陸点は、隊形で示された順序と同じ順序で設定される。

地表条件

4-9. LZ派遣班は、発着地として、地表面が固く、ローター・ウォッシュによって問題を引き起こす可能性のある埃、砂、破片がなく、障害物が取り除かれた場所を選定する。

硬い地表面を選ぶ

4-10. LZ派遣班は、ヘリコプターが泥に埋まったり、過度の粉塵を巻き起こしたり、雪を吹き飛ばしたりするのを防ぐため、航空機の重量を支えることができる硬い表面の着陸点を選定する。着陸点の表面は、完全に積載されたヘリコプターが着陸し、再始動し、再び離陸することができ、しかも地面に沈み込むことがないようでなければならない。地表面がこれらの条件を満たさない場合は注意喚起を発し、航空機はホバリングで終了するか、エンジン出力を維持したまま接地しなければならない。任務遂行上、航空機が完全に着陸する必要がある場合、例えばFARPや機内積載物を卸下するような場合は、別の発着地を選定しなければならない。

地表レベルまでの障害物除去

4-11. LZ派遣班は、ローターが巻き上げる可能性のある物を着陸点から排除する必要がある。これは「地表レベルまでの障害物除去」と呼ばれる。火災のリスクがない限り、平坦な場所であれば0.3メートル(1フィート)未満の草は除去する必要がない。乾いた土地の場合は、散水することで埃を抑えることができる。雪を除雪した後、しっかりと踏み固めることで、舞い上がる雪の量も減らすことがでる。ローターウォッシュにより、地面の砂埃や砂(ブラウンアウト)、または雪(ホワイトアウト)が巻き上げられる。これにより、特に夜間には地面や他の航空機が見えにくくなる可能性がある。発着地を視界不良状況下で運用しなければならない場合、LZ派遣班はこれらの状況を記録し、必要に応じて注意喚起や無線誘導を提供する。LZ派遣班は、また、発着地から障害物を除去しなければならない。空中に舞い上がった破片はローター・ブレードやタービン・エンジンを損傷させる可能性がある。

図4-2 標準的な飛行および着陸隊形

障害物の周囲を清掃する

4-12. 地上部隊は、航空機が着陸できるよう、着陸点の表面を可能な限り改善しなければならない。一般的に、障害物とは、航空機を損傷させたり着陸を妨げたりする可能性のある18インチ以上の切り株、岩、穴、またはその他の物体を指す。航空機が着陸する接地点内には、障害物があってはならない。ただし、LZ派遣班が地上の障害物を除去できない場合でも、ヘリコプターが着陸せずに一部のヘリコプター運用を行うことができることに注意する。その場合においても、ヘリコプターが着陸する場合と同様に、エリアを整備して印をつける必要がある。ヘリコプターには注意喚起が与えられ、着陸を妨げる地上の障害物の上空でホバリングする。

地面の傾斜

4-13. LZ派遣班は、比較的平坦な地面のある発着地を選ぶ。ヘリコプターが安全に着陸するためには、傾斜が7度を超えないようにする必要がある(図4-3、4-6ページ)。可能な限り、パイロットは下り坂ではなく上り坂に着陸するべきである。すべてのヘリコプターは、地面の傾斜が7度以下の場所に着陸でき、注意喚起は必要ない。斜度が7度を超える場合、着陸用のスキッドを使用する観測ヘリコプターや多用途ヘリコプターは、ホバリング状態で停止し、人員や物資の積み下ろしを行わなければならない。斜度が7度から15度の間の場合、車輪式降着装置を有するヘリコプターである大型多用途ヘリコプターや輸送ヘリコプターには注意喚起が出され、上り坂で着陸する。斜度が15度を超える場合、すべてのヘリコプターに注意喚起を出し、ホバリング状態で停止して、人員や物資の積み下ろしを行わなければならない。

注: 斜度をパーセンテージまたは度数で示す場合、すべての測定値をフィートまたはメートルのいずれかに統一すること。地図上で標高がメートルで表示されている場合、3を掛けてフィートに換算する。標高がフィートで表示されている地図の場合、3で割ってメートルに換算する。

【注意】
可能な限り、航空機を下り坂に向けて着陸させないこと。

図4-3 地面の傾斜の判断
地表の傾斜を度数で表す場合

おおよその傾斜角度は、勾配に57.3を掛けることで計算できる。この方法は、20度未満の傾斜角度においては妥当な精度がある。

地表の傾斜をパーセントで表す場合

地表の傾斜率を求めるには、垂直距離(VD)を水平距離(HD)で割り、100を掛ける。

傾斜率(%) =(VD / HD)* 100

垂直距離とは、発着地の両端における地表の標高差のことである。数値を切り上げて整数にすること。

LZ派遣班の斜面着陸ルール
  • 小型多用途ヘリコプターおよび観測ヘリコプターは7度を超える斜面に着陸しないこと。
  • 大型多用途ヘリコプターおよび輸送ヘリコプターは地面の傾斜が7度から15度の間である場合、注意喚起を与えること。
  • 車輪式降着装置を有するヘリコプターを横斜面に着陸させる際は、常にパイロットに注意喚起すること。

接近及び離脱方向

4-14. 理想的には、特に夜間の着陸または離陸時には、ヘリコプター・パイロットは通常、風上を向き、最も低い障害物の上を通り、発着地の長軸に沿った進入または離陸経路を選択する。離陸方向は、着陸方向の左右45度以内でなければならない。

卓越風

4-15. 常にヘリコプターを風に向かって着陸させるよう努めること。着陸方向から左右45度以内の風向きは向かい風とみなされる。ヘリコプターの性能に応じて、ある方向からの進入が適切な場合、または利用可能な着陸区域を最大限に活用するため、パイロットは0~9ノットの横風または0~5ノットの追い風で着陸することができる。風速が9ノットを超える場合、パイロットは風上に向かって着陸しなければならない。同様の考慮事項が発着地からの離陸にも適用される。接地時の横風は、速度が9ノットを超える場合を除き、進入および離陸時ほど注意を要しない。風は大型機よりも小型機に対してより大きな影響を与える。

接近・離陸経路の障害物比

4-16. 進入および離陸に樹木、送電線、または急峻な山岳などの高い障害物が隣接するヘリコプター降着地域の場合、計画者は10対1の障害物比を想定する。すなわち、ヘリコプターが10フィートの樹木の真上を直接進入または離陸しなければならない場合、着陸点には100フィートの水平クリアランスが必要となる。航空部隊指揮官と調整済みの場合、資格を有するLZ派遣班は障害物比を5対1以下に減らす権限を持つことがある。障害物比の削減は、接地点サイズの縮小に次いで、任務遂行のためにヘリコプター降着地域を適切にする最後の手段である。障害物比は、すべての要因を慎重に考慮した上で、慎重に、そして可能な限り最小限の削減にとどめて減少させる。障害物比は、まずヘリコプターが最も軽くなるルート上で減少させるべきである。例えば、航空部隊の任務が投入作戦である場合、進入時に積載状態となり、進入及び着陸時に最大の出力を必要とするため、可能な限り長いグライド・パスが求められる。兵員および装備を卸下した後は、航空機は軽量となり、より短い離陸経路を使用することが可能となる。この場合、LZ派遣班は離陸端の障害物比を減少させ、進入端では10対1以上の比率を維持する(図4-4参照)。

図4-4 最大進入角(昼間)

夜間進入

4-17. 夜間進入及び離脱経路内において、着陸点の中心から3,000メートル(9,843フィート、図4-5)の距離までにおいて、最大障害物角度は4度を超えてはならない。3,000メートルでの障害物の最大高さは210メートル(689フィート)となる。現場での簡易計算式は、垂直障害物1メートルにつき、着陸点の中心から障害物まで14メートルの距離が必要ということである。すなわち、ヘリコプターが直接樹木の上を通過して進入または離脱しなければならない場合、着陸点は高さ20メートルの樹木から280メートル離れていなければならない。夜間作戦計画におけるもう一つの考慮事項は、ヘリコプターの進入及び離脱経路区域と、その区域内の最大障害物高度である。これらの基準は、発着地への進入経路と発着地からの離陸経路の両方に適用される。まず、進入及び離脱経路となる区域を定義しなければならない。

図4-5 最大進入角(夜間)

進入・離脱経路

4-18. 進入及び離脱経路は、着陸点の中心から外側に延びる16度(277ミル)の範囲である(図4-6参照)。「V」字型の進入経路及び離脱経路は、図中の破線及び点線で示されている。4度の最大障害物角度は、着陸点中心から3,000メートルの距離まで、進入経路及び離脱経路内の全域(濃淡両方の網掛け部分)に適用される。

図4-6 進入・離脱経路

夜間運用

4-19. 夜間作戦時には、パイロットが着陸点に近づくにつれ、16度の範囲だけでなく、安全な進入のためにより広い区域を必要とする。したがって、濃い色の網掛け部分で示された進入および離脱経路の最小幅は、着陸点の幅と同じかそれ以上でなければならず、最大2フィートの高さまでクリアにされていなければならない(図4-1参照)。最小幅エリアの長さ(寸法X)は、着陸点の大きさによって異なる(表4-2参照)。UH-60ブラック・ホークを例として用い、夜間進入経路および離陸経路の基準を明確にする過程を追ってみよう。表4-1では、UH-60ブラック・ホークはサイズ3のヘリコプターとして識別されている。次に、障害物がなく、草が最大2フィートの高さに刈り込まれている必要がある着陸点エリアを決定しなければならない。表4-2は、サイズ3の着陸点に必要な直径として50メートルを示している。したがって、夜間進入経路および離陸経路の最小幅は50メートルである。この最小幅距離は、着陸点の中心から180メートルの地点で16度のV字型範囲(夜間進入・離脱経路)と交差する。換言すれば、夜間の最大障害物角度は、進入・離陸経路の全域に適用される。すなわち、矩形のくさび型範囲(図の濃い影の部分)及び16度の「V」字型範囲(薄い影の部分と点線)の両方に適用される。

表4-2 最小幅エリアの長さ

注意: 最小着陸要件については、航空部隊指揮官が最終決定を下す。その決定は、空気密度、斜面、および地表条件の影響に基づいて行われる。これらの要件は、任務計画の早期段階で口頭で示される。

長軸方向

4-20. 発着地の長軸方向から進入することにより、パイロットが接地点と障害物をより適切に識別し、最適な飛行経路を選択し、着陸点を超えて飛行することを防ぐことができる。また、LZ派遣班は発着地で利用可能なスペースを最大限に活用することができる。

密度高度

4-21. 密度高度は、高度、気温および湿度によって決定される。これらの条件がそれぞれ増加するにつれて、航空機の揚力能力は低下する。計画立案者は、密度高度が上がるにつれて降着地域の大きさも増加することを覚えておく必要がある。これはまた、LZ派遣班に接地点の大きさや障害物比率を減少させる権限を与える際に、航空部隊指揮官が考慮すべき事項となる。

積載量

4-22. ほとんどのヘリコプターは、完全に積載された状態では垂直に上昇も下降もできない。その場合、軽量の積載量の場合と比較して、より広い区域とより良好な進入路または離陸経路を必要とする。積載に関するその他の考慮事項は以下のとおりである:

障害物

4-23. これらには、地上での航空機の運用を妨げる可能性のあるあらゆる障害物が含まれる。発着地には、高い木、送電線、または同様の障害物が存在してはならない。LZ派遣班は発着地内のあらゆる障害物を除去または低減しなければならない。これには、安全な着陸を妨げる可能性のある0.45メートル(18インチ)を超える岩、切り株、穴、および厚い草や低木が含まれる。除去または軽減できない障害物は(できれば赤色の)標識を設置し、パイロットに注意喚起する必要がある。標識の接地は以下のように行われる。

代替発着地

4-24. 敵の行動、不利な地形、または戦術的もしくは兵站的状況の変化により、代替発着地が必要になる場合がある。地上部隊指揮官は通常、戦術計画作成時にこれを選定する。地上部隊指揮官(またはその代行者)は、航空部隊指揮官と発着地のLZ派遣班の推奨に基づいて、それらの使用時期を決定する。地上部隊指揮官は、代替発着地の使用に関する指示を最速の手段でLZ派遣班に伝達する。LZ派遣班も航空部隊指揮官も、支援を受ける地上部隊指揮官がその権限を委任していない限り、自らの判断で代替降着地域に変更することはできない。

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発行:Headquarters Department of the Army 2006年04月

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5件のコメント

  1. 管理人 より:

    現行版であることを確認しました。

  2. 管理人 より:

    現行版であることを再確認しました。

  3. 管理人 より:

    現行版であることを確認しました。

  4. 管理人 より:

    最新版であることを確認しました。

  5. 管理人 より:

    こういう教範は、陸上自衛隊にも絶対必要だと思います。