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陸軍航空の情報センター

視界ゼロからの生還

退役上級准尉4(W-4)ブライアン・K・カルフーン
モンタナ州リビー

その夜の任務は、AH-64Dのレディネス・レベル3練成訓練を行う局地飛行であり、3時間の夜間飛行を実施して、NVS(Night Vision System, 夜間暗視システム)の基本操作を習得することでした。私とその副操縦士がクルーとして飛行するのは、これが4回目でした。それまでの3回の任務は、1時間のフード(視野制限装置)訓練を含んだ昼間の飛行でしたが、問題なく終了していました。副操縦士(PI)の陸軍機飛行時間は300時間以上、そのうちNVS飛行時間は100時間以上でした。これに対して私は、陸軍機1,600時間以上、NVS飛行時間は700時間以上を有していました。この任務では彼がPI(Pilot, 副操縦士)、私がIP(Instructor Pilot, 教官操縦士)を務めることになります。これ以外の今回の飛行に関する背景情報は次のとおりでした。

ノータム(航空情報):テキサス州フォート・フッドのロバート・グレイ陸軍飛行場-PAR(Precision Approach Radar, 精密進入レーダー)使用不能。

搭乗員の休養:前日に24時間以上の休養を取得済み。

飛行前ブリーフィング:本任務を低リスクとして説明および承認済み。

気象ブリーフィング:シーリング(雲底高度)は高度5,000フィートでスキャッタード(まばら)、7,000フィートでオーバーキャスト(全雲)。視程は5法定マイル、局地的なレイン・シャワー(にわか雨)あり。風は北東から風速10~15マイルで、レイン・シャワーによる視程低下あり。

私たちは離陸3時間前に集合し、任務ブリーフィングと机上検討を行いました。この地域におけるIIMC(Inadvertent Instrument Meteorological Conditions, 意図しない計器気象状態)発生時の対応手順を含む、標準的な搭乗員ブリーフィング項目をすべて確認しました。

日没の30分後、フッド陸軍飛行場を単機で離陸した私たちは、超低空飛行訓練のため基地の東側に向かって飛行を開始しました。私はNVG(Night Vision Goggles, 暗視眼鏡)を使用し、PIはより地形判別に優れたPNVS(Pilot Night Vision System, パイロット暗視センサー:機首にセンサーを搭載した赤外線映像装置)を使用していました。

超低空飛行訓練空域に到着しましたが、降雨により視程が悪化しており、訓練を行うには安全なレベルではないと判断しました。天候の回復を期待して低高度訓練空域を離脱した私たちは、フォート・フッドの西側へ移動しました。そこは小雨で視程は良好でしたが、空域回廊(コリドー)内では、オーバーキャストの雲底が対地高度(AGL)1,500フィートであると見積もられました。

私たちは訓練空域内の未舗装の簡易滑走路に到着しました。SA(Situational Awareness, 状況把握)を向上させるため、その簡易滑走路の周辺で超低空飛行のタスクを実施しました。約40分間にわたり、半径わずか4キロメートルの範囲で超低空飛行を行っていましたが、雨が強まり、NVGでは思うような視界が得られなくなりました。私はTADS(Target Acquisition and Designation Sights, 目標捕捉・指示照準装置:操縦用のPNVSに対し、主に目標捕捉・攻撃に使用されるセンサー)に切り替え、PIはPNVSを使用し続けました。

訓練を終了すると、その簡易滑走路を離脱し、地域慣熟訓練として数キロメートル北にある近隣の地物に向かって飛行しはじめました。超低空飛行高度で北へ向かっている間に、視程が1法定マイル(約1.6キロメートル)未満に低下したため、フッド陸軍飛行場へ帰投し、今夜の訓練を終了する旨をPIに伝えました。

帰投の無線連絡をしてから30秒も経たないうちに、電波高度計に故障が発生しました。私は、エリア・アドバイザリー周波数を使って、当該空域にいる全機に基地へ帰投することを通報しました。別のAH-64Dパイロットから、同じチェックポイントへ向け低高度で並行進入中であるとの応答がありました。さらに別のCH-47からは、チェックポイント「ヘンリー」におり、超低空飛行訓練空域へ向かっていたものの、視界不良のためフッド陸軍飛行場へ引き返すとの連絡が入りました。

私たちはチェックポイント「ヘンリー」の北5キロメートルの進入回廊の上空を、平均海面高度(MSL)1,800フィート(対地高度850フィート)で飛行していました。その時、そのCH-47が同高度で自機に接近しているのが見えたと思ったPIは、「12時の方向、同高度にトラフィック(他機あり)、左旋回せよ!」と叫びました。私は「私からは見えない!」と応答しました。

私は困惑しました。チェックポイント「ヘンリー」は左20度の方向にあるはずだったからです。もしトラフィックがいるなら、右旋回すべき状況です。激しい雨の中、異なる角度からは視認できるかと思った私は、右へ10度旋回しました。再びPIが「12時の方向、同高度にトラフィック、左旋回せよ!」と叫びました。私は「ネガティブ(視認できない)、トラフィックは見えない」と答えました。PIはさらに大きな声で、左旋回かブレイク・レフト(左急旋回)が必要だと警告しました。彼には何かが見えているに違いないと思った私は、衝突を避けるため、60度から90度のバンク角で左旋回を行いました。

旋回中に毎分1,500フィート以上の降下率で降下したため、突然、雲に入り、IIMCとなりました。私は空間識失調に陥りましたが、機体の姿勢を左右水平にし、アティチュード・ホールド(姿勢保持)を作動させることができました。しかし、テール・ローターが発生させた揚力により、アパッチのテール(尾部)が持ち上げられていました。多機能表示装置のフライト・ページを確認すると、機首下げ25度、トルク56パーセント、真対気速度(KTAS)130ノットを示していました。高度は1,100フィートMSL、地形高度は950フィートMSLである(対地高度が150フィートしかない)ことを確認しました。これはもう、墜落するに違いないと思いました。しかし、トルクを95パーセントまで上げながら、サイクリックを後方に引き、機首上げ20度の姿勢を作ると、高度2,000フィートMSLまで上昇することができました。

PIが「対気速度08ノット。必要なら操縦を替わる」と言いました。差し迫った危険は脱したと感じた私は、「いいや、私が操縦する」と答えました。サイクリックを前方に操作して増速した後、当該地域におけるIIMC手順を開始しました。ロバート・グレイ陸軍飛行場(フッド陸軍飛行場の南西15キロメートルほどの場所にあり、民間空港と滑走路を共用しているため計器進入設備が充実している)の進入管制官を呼び出して緊急事態を宣言し、ランウェイ15にGPS進入するためのレーダー誘導を要請しました。ところが、進入の途中で雲を抜けることができ、滑走路が視認できるようになりました。有視界飛行が可能になった私たちは、進入中止を要請し、フッド陸軍飛行場へ引き返して、無事に着陸しました。

教訓事項

これは作り話ではなく、私の実体験です。あの夜、私は生きて帰れないかもしれない状況に陥っていました。IPである私は自分のフライトとクルーの安全に責任を負っていました。私が学んだ教訓は、頼りになるのは自分自身、自分の技量、そして訓練だということです。私と同じように、助けとなる人が誰もいない時が来るかもしれません。そんな時、あなたを無事に帰投させてくれるのは、あなたの記憶、技量、そして訓練です。パイロットの皆さんは、マニュアルを勉強する時間を惜しむべきではありません。いつの日か、あなたの命は、何をすべきかを知っているかどうかに懸かるかもしれないのです。

ちなみに、PIがこちらに向かってくると信じ込んでいた航空機は、地上の車両のライトがキャノピー・ガラスに反射したもので、CH-47ではありませんでした。私は、それを避けようとして、あわや機体を墜落させてしまうところだったのです。

飛行安全!(Fly safe!)

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年01月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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