AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

風防の汚れ

上級准尉2 デーヴィッド・ボーモント

誰でも一度や二度は、車のフロントガラスが汚れたままで道路を走った経験があると思います。車の場合は、ガソリンスタンドにちょっと寄って、ガラスをきれいにしてから、また走り始めれば良いだけのことです。航空の世界でも、そのように簡単にいけば良いのですが...これからお話するのは、離陸前に風防の清掃状態を確認することについての私の失敗談です。

それは、イラクにおいて、日の出前の早朝に離陸して、その日のうちに帰投する任務でした。飛行前点検で、風防が前回の飛行のまま清掃されていないことに気付きました。機付長にそれを知らせた後、飛行前準備を続けました。その機付長は、風防を清掃するための道具を取りに戻ったのですが、その間に次のシフトの要員と交代してしまいました。交代した機付長は、我々が機体の最終点検を行っている最中に現れました。ところが、その機付長には、交代時の申し送りの際に風防の汚れのことが伝達されておらず、その時点では、私は別なことに集中していました。

地上試運転が終了し、FLIR(forward looking infra red, 近距離暗視装置)を設定して、出発準備が整いました。私と副操縦士兼射撃手のどちらもが、キャノピーが汚れたままであることを忘れていました。清掃が必要なことを分かっていた前のシフトの機付長は、その時にはすでに自室に戻っていたのだと思います。もし、NVG(night vision goggle, 暗視頑強)の調整をコックピット内で行っていたならば、風防の汚れに気づいたかも知れませんが、それは、飛行前点検の後、コックピットに座る前に終わらせてしまっていました。

我々は、離陸し、任務の前半を終了しました。任務の後半を実施中に水平線が明るくなり始めました。太陽が水平線から姿を現す前の段階で周囲が十分に明るくなったので、NVGをOFFにしました。その時、風防の清掃を確認していなかったことに気づいたのです。飛び散った虫、埃、全面を覆う汚れで前が見えないような状態でした。太陽が昇るにつれて、状況はますます悪化することが目に見えていました。

僚機とは、横並びの編隊で飛行していましたので、それを確認するのには問題がありませんでした。問題だったのは、混雑したバクダット空域を飛び交う別な機体を発見することが困難なことでした。東に向かって飛行するように指示された場合は、特に苦痛でした。前面の風防を通して前方を見なくて済むように、機体の軸線をわざとずらして飛行しました。1時間以上にわたって、そこに何があって、どこに向かっているのか、目を細めて確認することを繰り返しながら飛行し、やっと任務を終了しました。

この事例は、事故には至りませんでしたし、つまらない話のように思われたかも知れませんが、貴重な教訓を与えてくれました。風防の汚れという単純なことが、パイロットの負担増加に極めて大きな影響を及ぼしたのです。飛行や任務から集中力が削がれ、風防の外側に何があるかを判別しようとすることに追われてしまいました。障害物を発見するのが困難な状態で飛行することは、事故につながる可能性も十分にありました。

皆さんへの無料レッスンです。「風防の外側および内側が清浄に保たれていることを確認しましょう。」普段あまり重要視されていない簡単なことですが、それを忘れた日には大変な思いをすることになるのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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