AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

疲労による列線勤務中の事故

マイケル・ダーレ
第101空挺師団第2旅団戦闘チーム
ケンタッキー州フォート・キャンベル

当時、我々は、イラクのモスルにあったOH-58Dを装備する部隊に所属していた。高い作戦頻度の中、多くの航空支援任務を遂行していた。そのしわ寄せを受けた整備員は、何週間も休むことなく、毎日、12~14時間の勤務を続けていた。

数ヶ月前に他の場所からモスルへと推進してきた我々の部隊は、飛行場の南端に展開していた。1ヶ月ほど経った後、コンクリート舗装された地域へと再移動し、より堅固なヘリコプター整備基盤を構築した。整備施設には、2基の小型クラムシェルターを使用していた。

作戦は継続的に行なわれ、飛行任務と整備業務が途切れることがなかった。そんな中、OH-58Dに関する技術情報が品質管理部局から発簡された。テール・ローター・ギアボックス付近にクラックが発生している機体が見つかったため、ほとんどの機体のテール・ブームを交換することになったのである。この作業は、航空整備班および武装班の隊員に大きな負担をもたらした。

その日、ある機付長が列線勤務を行っていた。彼の機体は、トランスミッションからオイル漏れが発生していた。その漏れは、エンジン駆動中しか発生せず、かつ、エンジンを停止後には、吹き出したオイルが空気流で飛び散ってしまい、どこから漏れているのかを特定するのが困難であった。トランスミッションの周辺には、同種あるいは類似のオイルが流れている配管がいくつもあり、そのことが漏洩箇所の特定をさらに困難にしていた。

その機付長は、エンジンを通常運用速度で運転している間にカウリングを見上げ、トランスミッションの上部から流れるオイルを観察していた。オイルが漏れている箇所が見えるのではないかと思った機付長は、機体の側方をよじ登った。そこが見えたと思った瞬間、身を乗り出した機付長の頭部が回転しているピッチ・コントロール・ロッドに接触した。ロッドで叩かれた機付長は、機体から地面に転落した。機付長の頭部には、額から後頭部にかけて切創が生じた。この種の事故においては、頭がふき飛ばされてしまうことも多いのだが、この機付長は幸運だった。出血して気を失っていたものの、生命を取り留めることができた。飛行場の医療施設に運ばれて応急処置を受けた機付長は、その後、ドイツ国内の病院に後送された。そして、数週間後には、部隊勤務に復帰し、当該部隊が派遣を終了するまで任務を継続することができた。この事故の間接的要因には、夜間における運用が続いていたため、十分な休息が取れていなかったことがあったと考えられる。

教訓事項

飛行部隊は、派遣間においても、休日を適切に設定し、整備員に過度な負担がかからないようにしなければならない。特に、夜間運用は、昼間運用よりも、整備員に大きな負担をもたらす。下士官兵は、兵士たちの状況を把握し、可能ならば、2個部隊を編成して、交互運用をしながら整備作業を行えるように着意すべきである。指揮官は、兵士たちと起居を共にし、彼らが単に忙しいだけなのか、それとも危険な状態に陥っているのかを見極めなければならない。兵士たちの命を守るためには、指揮官の「存在、認知、行動」が不可欠なのである。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年11月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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