ペン・フレアによる火災の発生
任官したばかりの頃、韓国北西部の凍てついた大地に囲まれたダムの堤敷で2週間を過ごしました。中尉だった私は、3機のブラック・ホークとその搭乗員で構成される前方支援医療チーム (forward support medical team, FSMT) を指揮していました。我々の任務は、旅団規模の演習において患者後送支援を訓練することでした。その演習間に、別の演習参加部隊でストーブによるテントの火災が複数回発生しました。私のチームにとって、それは幸いなことでした。私たちが引き起こした小さな森林火災が関心を引かずに済んだからです。
私のチームは、訓練担当士官および下士官、教官パイロット、整備試験パイロット、安全担当士官、航空救命機器担当下士官、衛生兵、機付長などで構成されていました。私たちは、想定上の負傷者をレベルIIIの医療施設に後送し、すべての訓練課目を終了しました。その後に設定されていた予備日を利用して、AARを行い、実施した手順を確認して、任務遂行能力を評価することができました。加えて、部隊訓練、整備作業などを行うこともできました。
その部隊訓練の一環として、ダムで搭乗員を対象としたペン・フレアの発射訓練を行いたいという要望が航空救命機器担当下士官および安全担当士官からありました。航空救命ベストのペン・フレアの使用期限が近づいていて、チームのほとんどの要員がそれを実際に使ったことがなかったからです。これは大変貴重な機会でしたし、そこは安全に訓練できる場所であるとも思えました。
偶然にも、チームがペン・フレアを発射する日に、大隊長の訓練視察を受けることになりました。私は、大隊長を旅団支援地域と作戦本部(tactical operations center, TOC)に案内しました。作戦本部を出ると、ダムでペン・フレアの発射訓練を実施中であることを誇らしげに報告しました。その状況を視察していると、突然、チーム員たちがダムの方向に走り出しました。なぜだろうと思いましたが、そのうちにチーム員たちが走ってゆく方向の森から煙が立ち上るのが見えました。私は、大隊長に確認に行くことを報告しました。チームのHMMWV(高機動多目的装輪車)に飛び乗り、森へと向かいました。
「火のない所に煙は立たぬ 」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、まさにその通りでした。それから1時間に渡って、凍った地面の上で燃えている枯れ葉などの消火にあたらなければなりませんでした。幸いなことに、火が小さいうちに消し止めることができました。韓国の郊外で山火事を起こすようなことがあれば、旅団の演習に大きな影響を及ぼすことになります。私たちは、その後も数時間、火災の発生した地域の監視を続け、再燃しないことを確認しました。
訓練に際しては、火災発生を防止するため、ダムに向かってペン・フレアを発射することにしていました。しかし、フレアにはフィンが付いていないため、予期しない方向に飛んで行く場合があったのです。風が吹いていたこともあって、火災が発生してしまったのでした。ペン・フレアの発射訓練を行う際には、許可された訓練地域で行い、弾着範囲を十分に確保しなければなりません。あの時、別部隊がより大規模な火災を起こしていなければ、もっと大きな騒ぎになるところでした。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2022年10月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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3件のコメント
3機のブラックホークを用いた訓練支援を中尉が任されるというのがスゴイと思いました。
ペン・フレアのような装備が陸自搭乗員に必要だとも思いました。
中佐が、他に大きな火災事故があったおかげで助かった、という気持ちを素直に書いているのも面白いと思いました。