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陸軍航空の情報センター

決断の時

コーリ・クレイン陸軍上級准尉4
アイオワ州兵第248航空支援大隊B中隊第4分遣隊
アイオワ州ダベンポート

州兵のCH-47ヘリコプター中隊は、州および国家の非常事態や海外派遣のために召集される可能性が常にある。2008年にハリケーン・グスタフがメキシコ湾岸を襲った際には、かつてない規模の動員が行われた。

高高度訓練場での訓練、サウス・ダコタ州エルズワース空軍基地での年次訓練、そして地元アイオワ州での洪水対応など、その年は多忙を極めていた。次の訓練に向けて準備していた8月のある日、グスタフの発生が確認された。そのハリケーンは、その数年前に発生したカトリーナと同じように、ニューオーリンズに大きな被害をもたらす可能性があった。

ハリケーンが到来するまでに必要な部隊や装備品をニューオーリンズへ送るため、州兵に召集がかかった。CH-47×1機の派遣要請を受けた我々は、8月30日にアイオワ州ダベンポートを出発した。悪天候のためアーカンソー州サーシーで一泊した後、ルイジアナ州へ向かった。サーシーから出発した我々は、ニューオーリンズからの国内最大規模の民間人空輸作戦に投入された。

最初の任務は、緊急の医療処置を必要としない民間人の入院患者をルイジアナ州バトン・ルージュまで輸送することだった。ニューオーリンズとバトン・ルージュのルイジアナ州立大学の陸上競技施設との間を2往復した後、グスタフを避けるためミシシッピ州ジャクソンに移動した。その翌日には、予想される嵐の進路からさらに離れるため、ミシシッピ州メリディアンに移動した。

悪天候のため、そこで一晩足止めされた後、天候が回復したのでバトン・ルージュまで戻ることになった。天候はVFR(有視界飛行方式)での飛行がかろうじて可能な状態だった。雷雨が予報されていたためIFR(計器飛行方式)での飛行は不可能だった。メリディアンを離陸した我々は、低シーリングなどの気象条件を避けるため、ミシシッピ州ガルフポートまで南下し、そこから西へ転進する計画を立てた。その計画では、ガルフポートから西に向かってバトン・ルージュまで飛行し、そこで任務を命じられるまで待機する予定だった。

飛行は順調に進み、気象予報も好転しているように思われた。このため、ブリーフィングで示された時間よりも早くバトン・ルージュに到着したかった我々は、計画より早い段階で西への転進を開始してしまった。その結果、重大な気象上の問題に直面することになった。

我々には2つの選択肢があった。1つ目は180度旋回して東へ戻り、良好なVFR気象状態の中を計画どおりに南下するというものだった。2つ目はGPSに読み込ませてあったウェイ・ポイントをたどりながら、現在の飛行経路を維持するというものだった。GPSには、ミシシッピ州ハッティズバーグにある2つの空港が読み込ませてあった。まだVFRの条件内にあった我々は、前進の継続を決心してしまった。その時点では、どの空港に着陸するかを決めていなかった。

雲が低くなり、地面が高くなっていった。状況は、悪化する一方だった。地図上で見つけた、空港の1マイル手前まで続く川に沿って飛行する5名のクルー間のコミュニケーションは、ほぼ超低空飛行時のそれに変わっていた。この時になってもまだ、その空港に着陸するかどうかを決めていなかった。

その後、状況はさらに悪化し、雲を避けるため高度を500~600フィートまで下げなければならなかった。視程は1マイル未満になった。さらに、空港が近づくにつれて雨が降り始め、視界がほとんど遮られる状態になった。約4マイルを川に沿って飛行し、空港まで1マイルの距離に入ると、着陸準備を開始した。それでもまだ、着陸するかどうかについて、議論されることはなかった。クルー全員が眼の前のことだけに集中する、行き当たりばったりの飛行になっていたのである。

我々が陸軍規則95-1に従い、合法的なVFR気象条件下で着陸したかどうかは、定かではない。午後になると天候はさらに悪化し、任務を中断して、もう一晩を過ごすことになった。ハッティズバーグを出発した後は、バトン・ルージュ、そしてニューオーリンズにたどり着き、それから1週間は、そこの海軍航空基地が我々の拠点となった。任務が完了した後も、アイオワへの帰路で同じように気象判断が必要となった。この時も我々の気象判断は、指揮系統によって何ら疑問を挟まれることなく承認された。

未知の状態へ突き進むのではなく、その場に留まって気象判断を行うという選択肢が、常に与えられるとは限らない。ちなみに、我々の中に、この任務以前にアーカンソーより南を飛行した経験のある者は誰もいなかった。私は、この経験から得た教訓を残りの軍歴の間、ずっと忘れることがないだろう。いかなる移動や任務であっても、徹底した任務計画とブリーフィングが必須である。加えて、リスクマネジメントを徹底してクルーを万全の状態に保ち、引き際を見誤らないことが大切なのである。

訳者注:記事の中の地名をプロットした地図はこちらに保存してあります。
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出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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