AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

不測事態対処計画および初動対処計画の整備

上級准尉4 ロバート・L・モーラン
事故調査、報告および追跡係
アメリカ陸軍戦闘即応センター
アラバマ州フォート・ラッカー

安全担当将校として新しい飛行部隊に到着した際に、PAP(pre-accident plan, 不測事態対処計画)やMRP(mishap response plan, 初動対処計画)が整備されていないことに気づいたことがある。その飛行部隊では、民間の飛行場だった頃に用いられていた計画がそのまま引き継がれていたが、軍に適したものとなっていなかった。そんなことがあって、良いはずがない。飛行部隊には、事故が発生し、初動対処が必要な時に、実際に役立つ計画が整備されていなければならないのである。

事故や不安全が発生したという情報があってから、計画に不備があることに気づきたいと思う部隊はないであろう。その計画がPAPであれ、MRPであれ、救命活動を主体とした、効率的、効果的かつ詳細な戦略が定められていなければならない。関係者に対し、事故発生時における役割と責任を確実に把握させるためには、計画に基づく体系的な予行と、その結果に基づく計画の見直しが必要である。予行に際しては、事故発生時に何らかの役割を有しているすべての個人または機関を参加させ、実際の事故に近い状況で行うように着意すべきである。

飛行場管理部隊から飛行部隊までの各級指揮官は、それぞれの計画を調整・統合し、対応要領を改善できるように着意しなければならない。飛行部隊の運用将校は、DA PAM(Department of the Army Pamphlet, 陸軍省パンフレット)385-90陸軍航空事故防止プログラムに従い、部隊安全将校の助言を受けつつ、その計画を策定・管理しなければならない。これらの計画に基づき、四半期ごとに予行を実施し、その結果を文書化して関係各部隊に問題点を把握させなければならない。しかしながら、訓練や予行を終了した後に実施すべきことは、その結果を文書化するだけではない。詳細な検討会を実施し、効果的な管理手段と実行要領を確立することも重要なのである。どれほど周到に計画され、予行が繰り返されたとしても、必ず改善の余地が存在するはずなのだ。

航空安全担当将校および事故調査担当者である私には、適切な対応計画を立案し、訓練し、実行することの重要性を未だに認識できていない部隊があることが理解できない。2018年度のFORSCOM(United States Army Forces Command, アメリカ陸軍総軍)の航空装備管理動向調査バージョン23.1によれば、調査対象の現役、州兵および予備役部隊のうち効果的なPAPを整備できていたのは、全体の約49パーセントに留まった。各部隊は、PAPおよびMRPの必要性および重要性を今一度認識しなおす必要がある。飛行場管理部隊と民間救難機関の間で現地における対処要領を調整し、不測事態が発生した際に何が活用できるのかを把握しておかなければならない。

航空部隊と地上部隊の間では、初動対処の実施要領が異なるが、多くの類似点も存在する。例えば、すべての計画において、関係者の救助のために重要なのは、第1報および第2報の通報である。部隊の計画は、安全将校の技術的助言を受け、第3科の運用担当者が策定する。部隊は、完全な予行を実施し、その結果を文書化するなどの点である。

作戦命令を起案する際には、状況判断の手順に従い、その計画を策定するのも地上部隊と同様である。事故防止計画の各部隊の任務(作戦計画の第4条)を末端隊員レベルまで徹底するために有効な手段としては、予行、PACE(primary, alternate, contingency and emergency, 主計画、予備計画、不測事態対処計画、緊急事態対処計画)、隊容検査および事前ブリーフィングがある。SOP(standard operating procedures, 作戦規定)の内容は、部隊の自主裁量によるところが大きいが、陸軍規則385-10第15ー10に記載されている事故防止計画に沿ったものでなければならない点も同様である。

貴官の所属する部隊がPAPやMRPの整備を行う際には、DA PAM 385-90を参考にすべきである。PAPやMRPの更新が行われていない場合には、それを開始するためのきっかけとして、指揮官交代時の状況報告を活用することも一案である。次の野外訓練または実行動が始まる前に、自分たちの部隊の計画の周知徹底を完了しなければならない。PAPやMRPは、通常運用だけを目的としたものではない。戦闘訓練センターでの訓練や国外派遣における運用のためにも必要なのである。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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