AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

細部が重要

上級准尉4 ケビン・ヘイズ
第1軍事情報大隊
ヴィースバーデン、ドイツ

チヌークを操縦し始めた頃、ある上級准尉がこう言いました。「完璧な飛行など存在しない。」何回もの海外派遣を通じて経験を積んだ今になって、やっと彼の言ったことが理解できるようになりました。飛行を開始すると、状況は良くも悪くも変化するものです。そこで重要になるのは、適切な計画です。些細なことが成功と失敗を分ける場合があるのです。イラク派遣の9か月目に私が経験した事故は、まさにそういったケースでした。

よく語られる危機一髪の話は、そのほとんどが器材に起因するものです。しかし私の事故は人為的ミスによるものでした。事故報告書に「人為的ミス」と書かれるほど、ショックなことはありません。その事故が発生したのは、私にとって4度目の海外派遣でのことでした。イラクのバラドで15か月間の交代勤務に就いていた私の中隊は、4機ずつのチヌーク編隊を編成して空挺大隊を支援していました。私は、その編隊長の中の1人に指名されていました。

平均すると4日ごとに強襲作戦を行い、UH-60およびAH-64の搭乗員との連携を密にするとともに、編隊内での相互の信頼関係を築いていました。ある日の任務が、中隊のSOP(standing operation procedure, 作戦規定)に定められたタイムラインに沿って付与され、計画され、ブリーフィングが行われた後、砂嵐の発生により延期となりました。その任務の開始は、作戦地域の砂嵐が収まるまで、72時間も遅れることになりました。

その間、我々搭乗員は、TTP(tactics, techniques and procedures, 戦術、技術および手順)を見直し、特殊作戦航空連隊の任務実施状況を把握して、我々が無用なリスクが生じさせていないかを確認しました。その結果、一部のLZ(landing zone, 降着地域)への着陸要領を変更する必要があると判断されました。この新しいTTPは、事故が発生した任務で使用するLZにも適用されることになりました。

やがて天候が回復しました。その夜は、月照度25パーセントの晴天でした。私の編隊は、他の編隊とともに任務開始の準備を整えました。使用するLZに関する変更事項を含む飛行任務ブリーフィングを実施した私は、中隊長から任務「実行」の決心を得ました。複数機による任務であり、地形が複雑であることから、正確な進路誘導、タイミングおよび間隔の保持が必要でした。

私の機体のLZは、右側に位置する2番機のLZから左側にかなり離れた位置にありました。編隊の各機には、RP(release point, 分進点)からそれぞれのLZに向かう機首方位角が示されていました。ブリーフィングで説明したTTPの変更により、私の機体のLZ着陸地点は、元の着陸地点から350メートル移動していました。この変更は、距離的にはわずかですが、2番機との経路の競合を回避するため、2番機が進入するまで元の機首方位を維持し、その後新しいLZに進入することになっていました。

3日間にわたってこの任務を再検討してきた私は、LZカードを暗記し、変更されたLZが400メートルも離れていない開かつ地内にあることを理解していました。時間、調整及び通信のすべてが計画どおりに進んでいました。RPには予定時間から45秒以内に到着しました。33名の兵士と補給パレットを搭載した私の機体は、2番機との経路の競合を回避した後、LZへの進入を開始しました。変更前のLZを視認した後、変更されたLZである開かつ地に向かって進入および着陸を開始しました。

それは、前輪が接地した際に起こりました。機体が深い溝に落下し、右前方の降着装置が破断し、機体下部の無線アンテナが引きちぎられました。幸いなことに、負傷者はなく、地形のおかげで降着装置が損傷しても機体は水平状態を保っていました。卸下を行った後、機体を点検し、状況を報告してから基地に帰投し、積み上げられた倉庫用パレットの上に着陸しました。それからは事故調査の時間でした。

教訓事項

この事件は、回避することができたのでしょうか? おそらく、LZ内の適切な接地位置を決定するため、古い画像を使用するのではなく更新された現地の画像を要求すべきだったのでしょう。入手した画像には、機体が落下した溝が写っていたでしょうか? 今となっては分かりません。ただし、重要なのは少なくともそれを行う時間があったということです。実践における計画の立案に際して、時間は非常に重要な要素です。しかしながら、任務を繰り返して慣れが生じると、細部を見逃しがちになるのです。

完璧な飛行など存在しないことは誰もが知っていますが、航空の世界では常に細部が重要なのです。緊要な場面に直面したならば(あなたにも、その時は必ず訪れます)、計画立案を周到に行い、出発前にチームが最高の計画に従って行動できていることを確認しなければなりません。些細なことであっても、それがもたらす結果は重大なものとなる可能性があるのです。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    現役の頃、ある上司(航空隊長)は、常日頃から「The devil is in the details(悪魔は細部に宿る)」と指導されていました。
    そのとおりだと思います。