Wikipediaを編集(翻訳)してみた
「ドリーム・マシーン」の翻訳出版の方が少し落ち着いてきたので、Wikipedia の編集(翻訳)にも手を出し始めました。まだまだ、不慣れなところはありますが、備忘録を兼ねて、その手順などを書きとめておきたいと思います。
準 備
Wikipediaの編集や翻訳については、Wikipediaのヘルプに手順が極めて詳細に書かれているのですが、正直言ってとっつきにくいです。何か解説書はないのかと探したところ、「Wikipedia ウィキペディア 完全活用ガイド」という本を見つけました。
2006年出版の本なのですが、現在は出版されていないようで、中古しか入手できません。それなりの価格が付いていて、自分の場合は、5,000円で購入しました。Wikipediaを使ったり、編集したりするための心構え的なことが分かりやすく書かれています。編集に必要な具体的操作手順などはほとんど書かれていませんし、現在のWikipediaのバージョンとは合致しない部分もありますが、これを読んでからはヘルプの内容が理解しやすくなりました。自分としては、5,000円の価値はあったと思っています。
また、Wikipediaの編集には、独特のマークアップを使う必要があるのですが、それを理解するには、HTMLの知識や経験が役に立ちます。HTMLを全く知らない人には、ちょっとハードルが高いかもしれません。
手順の概要
現在のWikipediaのバージョンでは、「コンテンツ翻訳」(ベータ版)の機能を使用することができます。英語版Wikipediaの翻訳したいページを開いた状態で、「Language」の「日本語」をクリックすると、「Translage from English」のボタンが現れます。標題を入力してからボタンをクリックすると「ページの翻訳」という画面が現れます。「日本語」が表示されていない場合は、個人設定画面のベータ版機能で「コンテンツ翻訳」をONにして下さい。「ページの翻訳」画面が現れれば、あとは左側に表示される英語を見ながら、右側に日本語訳を入力するだけで、翻訳ができちゃいます。機械翻訳の機能も付いています。Wikipediaの他のページなどへのリンクを設定したい場合も、設定したい語句を選択するだけで、自動的にリンクの候補が表示されます。簡単ですよね。
ただし、現状では、日本語から英語に翻訳する場合は、英語版のWikipediaで新規記事を作成するしかないようです。また、英語版で記事を新規作成した場合は、公開前に「review」を受ける必要があり、Draftとして保存したのち、公開までに2カ月ほど待たされることになります。
「簡単ですよね」と書きましたが、本当はもうちょっと手間がかかります。参考訳文や用語集などを利用するためには翻訳メモリソフトを使う必要がありますし、公開後にソースを直接編集しなければならない部分もあります。以下、これらについて、もう少し詳しく説明することにします。
なお、日本語から英語への翻訳も同じ要領で行えるのですが、こちらは英語版に500回以上の編集経験を有する「experienced editor」でなければ、投稿ができないようになっています。
OmegaTを用いた翻訳
Wikipediaの「ページの翻訳」では、参考訳文や用語集が使えなくて、日頃、翻訳メモリソフトで翻訳を行っている自分には不便この上ないです。そこで、「ページの翻訳」を使う前に、OmegaTにWikipediaのページを読み込んで、翻訳を行っています。
まず、OmegaTに英語→日本語のプロジェクトを作成します。そのプロジェクトに「MediaWikiから原文ファイルを追加」を行ってください。MediaWikiのURLを入力する欄に英語版Wikipediaの翻訳したいページのURLを入力して読み込むと、拡張子がUTF8のソースファイルが自動的に作られます。
ソースファイルを開くとWikipediaのマークアップを含んだ英文が標示されます。ただし、見出しのマークアップによって、文節の区切りに問題が生じる部分がありますので、文節化規則を追加します。自分の場合、現時点で必要性を感じているのは、次の3つの項目です。
- 分割する/しない:する(チェックを入れる)
前方の正規表現:\n
後方の正規表現:なし(空欄にする) - 分割する/しない:する(チェックを入れる)
前方の正規表現:</ref>\s*
後方の正規表現:[A-Z] - 分割する/しない:する(チェックを入れる)
前方の正規表現:\.
後方の正規表現:<ref
あとは、参考訳文、機械翻訳、用語集、辞書を使いながら、通常の手順で翻訳します。この時、マークアップは、無視して構いません。どのみち、「コンテンツ翻訳」にペーストした後に修正することになります。
翻訳ができたら、訳文ファイルを生成して、OmegaTでの作業は終わりです。訳文ファイルをワードかエディターで開いて、必要に応じ校正を行います。(自分は、ワードの校正機能を活用しています。)
コンテンツ翻訳を用いた編集
Wikipediaの「ページの翻訳」画面を開くと、「This page does not exist in 日本語 yet. Do you want to create it?」というフォームが表示されますので、日本語のタイトルを入力します。一度入力したタイトルを変更するのには、いろいろと手間がかかりますので、慎重に考えたうえで入力してください。特に()を使う場合、全角の()の使用は禁止されています。半角の()を用い、その前後に半角のスペースを入れることになっていますので注意してください。
タイトルの入力が終わると、左側に原文が表示され、右側に日本語が入力できる画面が表示されますので、1段落ずつ、ワードなどから必要な部分をコピー&ペーストします。次に、英文のリンクされている語句を参考にしながら、リンクを設定し、公開します。公開すると、編集の要約や言語間のリンクが自動で設定されます。
ソースの編集
現状の「コンテンツ翻訳」では、Infobox(各ページの右上に表示される記事の要約)がうまく翻訳できません。この部分は、原文ソースの一番上に記載されているので、原文から「ソースの編集」画面にコピー&ペーストしたうえで、必要な部分を修正(翻訳)します。この際、なぜかイメージのリンクだけが、そのままでは表示されません。 次の例のように、ファイルへのリンクとサイズを直接指定してやる必要があります。ウィキペディアコモンズに改めてアップロードしなければならない場合もあるようです。
[[File:VMX-1_Logo.png|150px]]
その他にも、現状の「コンテンツ翻訳」では、上手くいかない部分が時々生じます(テンプレートなど)。その部分については、「ソースの編集」で修正が必要です。それでも、特にリンクの設定が非常に簡単にできるので、「コンテンツ翻訳」を使わない手はないと思います。
その他
Wikipediaでは、ページの修正を行うたびに、その都度、履歴が公開されます。よって、ページを公開する前に、プレビューを活用して、よく内容を確かめる必要があります。Wordpressを使っていると、更新するのに慣れてしまっていますので、注意が必要です。
翻訳したページを公開すると、他の方から、「脚注による参照が不十分であるため、情報源が依然不明確です。」というようなコメントが付けられてしまうことがあります。原文がその状態なので、翻訳者としては何とも対応が難しいのですが、情報源を見つけられた場合には追加するようにしています。
最後に、自分の翻訳したページは、Wikipediaの利用者ページにリストアップしてありますので、参考にしていただければと思います。
発行:Aviation Assets 2018年02月
備考:本コラムの内容は、今後、修正される可能性がありますので、ご了承ください。
アクセス回数:28,827
コメント投稿フォーム
5件のコメント
翻訳したWikipediaのページに「北鎮記念館」を追加しました。
OmegaTの分節化規則に関する記述を修正しました。
自分の翻訳したページのリストを「利用者ページ」へのリンクに修正しました。
英語版への翻訳を投稿する際の制限事項について、記述しました。
「英日翻訳ウィキペディアン養成セミナー」の紹介を追加しました。