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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

予防着陸を躊躇するな

上級准尉4 スティーブン・サンド
第2航空連隊第4大隊C中隊
大韓民国キャンプ・ハンフリーズ

フォート・ブラグの飛行部隊で試験飛行操縦士として勤務していた私は、AH-64Aに搭乗し、ノース・カロライナ州中部の山岳地帯上空で昼間の有視界編隊飛行を行っていた。フォート・ブラグで勤務するのが2回目であった私は、その山岳地帯の地誌に十分に習熟していた。天候は良好で、前席の副操縦士に操縦を任せた私は、編隊の中の1機として「お気楽」に飛行していた。
 訓練規定1-238タスク番号1026に示された要領で見張りを行いながら飛行していると、突然、ロ-ター回転と同一周期の垂直方向の振動が発生し始めた。副操縦士は、「何が起きたんだ!」と叫んだ。窓の外で回転しているローター・ブレードを確認すると、1枚のブレードの軌跡が他よりも10センチ位低くなっていた。
 私は、直ちに副操縦士と操縦を交代し、操縦性を確認した。操縦系統は全て正常に作動していた。また、振動レベルが増加する傾向も見られなかった。私は、編隊長に不具合の発生状況を通報するとともに、副操縦士に最も近い飛行場を探すように命じた。
 副操縦士が地図を取り出そうとしていると、編隊の別の航空機から「3時の方向4マイルに飛行場がある」という無線連絡があった。私は、「了解!右旋回する」と応答した。そちらの方向を見ると、すぐにその飛行場を視認できた。
 ここで、皆さんはおそらく「なぜ、すぐに着陸しなかったのか?」と思うことであろう。もちろん、私もそのことは十分に考えた。飛行場よりも手前に、予防着陸に適した場所はいくらでもあったのである。しかしながら、試験飛行操縦士であった私は、ブレードの交換が必要であろうことを考えると、機体までトラックで近づける場所に着陸しなければならないと考えていた。また、操縦系統は正常に作動しているので、操縦不能状態に陥る可能性は低いと思われた。このため、振動レベルが大きくなった場合には、直ちに着陸することを予期しつつ、飛行場まで飛行することに決心した。
 最終アプローチの最中に州兵部隊の整備格納庫が見えたので、その前方のタクシー・ウエイに着陸した。着陸後、エンジンを停止しようとしてパワー・レバーを後方に引いた途端、副操縦士が「何かがブレードから飛んだ!」と叫んだ。
 エンジンが停止してから、1本のメイン・ローター・ブレードのチップ・キャップが半分にちぎれて、機体前方15メートル位のところに落ちているのを発見した。チップ・キャップを点検すると、前縁側の金属部分が紙のように薄くなっていた。腐食により金属が薄くなり、空気がチップ・キャップ内部に入り込んで、外板がバナナの皮をむくようにはがれたものと推定された。

教訓事項

重要なことは、「この体験から何を学ぶか?」ということである。この不安全を経験してからというもの、飛行前点検時、メイン・ローターのチップ・キャップに以前よりも注意して点検するようになった。また、試験飛行操縦士であることが、行動方針決定の思考過程に及ぼす影響についても、考えるようになった。航空機整備にたずさわる将校として、常日頃から、航空機が予防着陸した場合の回収要領を考えておくべきではあるものの、緊急状態が発生したときに、整備の容易性を考慮して着陸点を選定するのは、不適切である。あの場合、最も近い着陸可能地域に直ちに着陸すべきであった。
 今回の不安全が大きな事故に至らなかったことは、たまたま幸運であったにすぎない。多くの航空事故がエラーの連鎖により発生している。飛行場以外の場所に予防着陸を行う場合には、進入経路上に電柱、電線、樹木、灌木及び建造物がないか、十分に注意しなければならない。これらの障害物を回避するための最も有効な方策は、とにかく速度を落とすことである。速度を落とすことにより、障害物を発見し、着陸を中止したり、着陸地点を変更したりする時間的余裕が得られるのだ。
 緊急事態においては、決して、計画通りの飛行をすることに固執してはならない。もしもあなたが「お気楽」に飛行することがあっても、生き残るためには正しい状況判断が必要なことを決して忘れてはならない。

出典:KNOWLEDGE, August 2010, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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