AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

コリジョン・コース

上級准尉3 ウェスリー・ホルト
第227航空連隊第2大隊
テキサス州フォート・フード

空中機動の直接支援においては、詳細な計画を作成し、それを実行することが求められます。目的地と到着時刻は、あらかじめ定められています。搭載する装備品等の重量や種類も分かっているし、それをどこに卸下するのかも分かっています。関係者全員が使用する無線周波数や通信要領を理解しています。しかしながら、残念なことに、いかに周到に準備しても、不測事態は起こりえます。そのひとつは、その飛行経路が別な任務を遂行している航空機と交差すること(コリジョン・コース)です。その日の空中機動は、NVGを使用する重要な任務でした。機長と私は、緊密に連携しながら操縦を行っていました。私は、副操縦士として、右席で操縦していました。状況は厳しいものでしたが、計画どおりに降着を完了することができました。敵火力の射程外に出て、展開地に向かって帰投を始めると、リラックスした気持ちになっていました。

私は、多目的ディスプレイが映し出す経路上に沿って飛行していることを確認しながら操縦を行っていました。まだ飛行場からかなり南に離れており、僚機は共通管制無線周波数で管制塔を呼び出していました。夜空は晴れ渡っていて、前方の視程は十分に確保できていました。突然、遠くのほうで、機体上部の衝突防止灯が点滅しているのが見えました。地平線上で点滅するライトに焦点を合わせ、それがどちらの方向に向かっているのかを判別しようとしました。光が近づいてくるように見えたので、コリジョン・コースに入らないように高度を調整しました。

2番機を無線で呼び出し、前方への注意をうながしました。2番機は、それを確認したと返答し、共通周波数で当該機が我々を視認していることを確認しようとしました。私たちは、見えている機体の前か後ろのどちらかにいるはずの2番目の機体を探し続けていました。すべての搭乗員の目は、その機体を探すために前下方に向けられていました。その間に、見えている機体とその僚機は、我々と同じ空域にいることさえも分かっていないという応答がありました。そうしているうちに、見えている方の機体は、我々の左下方(約500フィート下、約0.5マイル左側)を通り過ぎていきました。その間も、我々はその機体の僚機を探し続けていました。私は、それ以上探すことをあきらめ、視線を前方に移しました。

すると、驚いたことに、2番機がまっすぐこちらに向かってくるのが見えました。直ちにそのことを報告するとともに、そんなところにいるはずのないその機体との正面衝突を回避するため、左に機体を傾けました。水平飛行に戻ると、お互いに接触せずにすれ違うことができていました。その機体のコックピットでは、誰もこちらを見ていないようでした。彼らには、お互いにどれほど急接近していたのかが分かっていなかったのです。

落ち着きを取り戻すと、展開地に向けて飛行を続け、無事に駐機し、エンジンを停止しました。その後、何が起こったのかを話し合い、作戦本部に事案の発生を報告することにしました。その結果、それは異なる前進作戦基地から派遣された2機で構成された編隊であったことがわかりました。数日後、それらの機体の搭乗員は、この事案の終始を通じて、我々を全く視認できていなかったとの情報が伝えられました。

教訓事項

この事案の教訓は、どんなに詳細に計画を立てても、常に不測事態の発生を予期しなければならないということです。我々の部隊では、作戦地域に他の編隊が進入する時期を把握し、我々の任務を通報するようになりました。また、パイロットとしての経験をどれだけ積んだとしても、クルー・コーディネーションから得られる効果にはかなわないということも学びました。私は、本来、監視すべき方向を見ておらず、またそうしていることを他の搭乗員に伝えてもいませんでした。すべての編隊が同じようにして飛行するわけではないということを忘れ、最初の機体に集中してしまっていたのです。2番機は、必ずしも我々が思っているところを飛行しているわけではありません。いずれも「 言うは易いが行い難し」なことではありますが、肝に銘じておかなければなりません。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2021年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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