PEO(航空)におけるMOSAの旅
MOSA( Modular Open Systems Approach, モ ジュラー・オープン・システム・アプローチ)は、これまでも、そしてこれからも陸軍航空の流行語であり続けるに違いない。それは、PEO(航空)(Program Executive Office Aviation, 航空計画管理室)の優先事項であるだけではなく、陸軍航空関連企業全体に相乗効果をもたらそうとしているからである。将来の戦場において勝利をおさめるためには、高度な柔軟性と適応性を有する技術を迅速に導入して航空機の近代化を進めなければならない。財政的制約が増大する中、将来の要件性能達成の手段をもたらすMOSAの重要性はますます高まりつつある。PEO(航空)がMOSAの旅を始めた理由は、この手法がもたらす柔軟性と適応性にあった。
MOSAの旅はまだ終わっていない。 MOSAが有する利点は、その実行に伴い、ますます明白かつ具体的になりつつある。MOSAの当初からの主要メンバーは、この手法を航空だけではなくPEO全体に広めることに大きな関心を寄せている。国防総省の指導者たちは、慎重に調整されたMOSAおよび企業統制が、持続可能な政府を実現するだけでなく、航空産業基盤に必要な変化を推進することにも役立つと考えている。新たなマイルストーンに到達したMOSAの旅は、様々な課題に取り組み続けることで、さらに刺激的なものとなろうとしている。今後のマイルストーンをより明確に理解するため、まずはMOSAのこれまでの歩みを振り返ってみたい。
これまでの歩み
2020年10月、航空プログラム・エクゼクティブ・オフィサーがタイガー・チームの立ち上げを決定し、PEO(航空)の業務の中心にMOSAを据える変革が開始された。そのチームに求められたのは、MOSAを進めてゆくための詳細なロードマップを作成することであった。そのためには、航空企業から優秀な人材の派遣を引き抜き、困難な職務を遂行させることが必要であった。3か月間の昼夜を分かたぬ検討の結果、PEO(航空)の任務に関連する技術および運用面に対する9つの異なる取り組みを提唱する、最初のMOSAロードマップを採択した。このマイルストーンの達成により、陸軍航空の上級指導者たちは、MOSAが単なる流行ではなく真の変化をもたらすために必要な推進力であると認識するようになった。そのロードマップを実行する組織としてPEO(航空)に創設されたのが、MOSAトランスフォーメーション・オフィス(Transformation Office, TO)であった。
上級指導者たちからの支持と航空6部門(Aviation 6-Pack)からの支援を受けたMOSAトランスフォーメーション・オフィスは、PEO(航空)の内部変革に重要な役割を果たした。PEOはただちに、MOSAに関する堅固な方針と詳細にわたる指導要領を確立し、所員に対する教育を実施して変革の促進を図った。この方針および指導要領の制定は、PEO(航空)の目標を明確にし、プロジェクト・マネージャーたちに業務の指針を与えた。また、関連企業全体に適用されるモジュール化の決定事項の多くを公開することにより、MOSAの効果の向上を図った。具体的には、E-MSC(Enterprise Major System Components, 主要構成品)を明示し、各構成品のCSM(Component Specification Models, 構成品仕様モデル)を策定した。このCSMの構築は、PEOおよび 企業全体の適切な関係者が要求事項を議論し、必要に応じて調整を行い、各種の構成品の仕様を決定する上で重要な役割を果たした。
それから約1年後には、PEO(航空)全体にも変化が生じ始めた。関連する2つの重要なMSCである航空ミッション・コンピューティング環境(Aviation Mission Computing Environment)および通信・データリンクおよび制御(Comms/Datalinks/Controls)における成果が、PEOおよび関連企業の業務を大きく促進させたのである。同時期に、FLRAA(Future Long Range Assault Aircraft, 将来型長距離強襲機)プログラム・マネージャー・オフィス(Program Management Office)は提案要求書を発出し、企業選定を行ったが、その内容にもMOSAの影響が強く表れていた。このことは、陸軍航空がMOSAに全力で取り組んでいることを関連企業に示した。PM UAS(Unmmand Aircraft System, 無 人航空機システム)は、複数の企業との間にFTUAS(Future Tactical Uncrewed Aircraft System, 将来型戦術UAS)に関するOTA(Other Transaction Agreement, そ の他 の取引契約)を短期間で締結した。この契約の締結により、MOSAは企業が次の計画段階に移行するために達成すべき評価基準としての地位を得るにいたった。
MOSAの適用範囲は、新機種だけではない。一部の既存機の近代化にもMOSAは活用されている。プロダクト・マネージャーたちは、一部の既存機に戦略的にMOSAを利用し、モジュール化および オープン性を進めるための重要な決定を行うべきタイミングの評価において著しい進歩を遂げた。
MOSAシナリオ、MOSA技術的性能測定、MOSA適合化計画、MOSA主導の知的財産戦略など、MOSAの最適化および先駆的な実行手法が、新型機および既存機のいずれにおいても確立されつつある。PEO(航空)は指導要領の改善を継続し、教訓事項を直ちにプログラムに反映させている。教訓事項の迅速な反映は、詳細な指導要領および目標の設定に大きな効果をもたらしている。
これからの歩み
PEO(航空)におけるMOSAの将来は、その全てにおいて明るい。航空上級指導者たちによる関与および 協力は、MOSAの実施を継続する原動力として、陸軍機の経済的な近代化に貢献している。
短期的には、悪視程環境、大型ディスプレイ、電力系統およびデジタル化などのE-MSCに関する業務がさらに進捗する。また、既存の機体をより安価に最新化し、新型機用に開発された技術および機能を活用するため、既存機への適用も進められる。さらには、より多くの競争を活用し、あらゆる規模の革新的企業の参入を促進するため、MOSAおよび検証目標の明確な定義および調整が図られ、機体購入時の契約範囲にも変化がもたらされることが期待されている。
まとめ
PEO(航空)におけるMOSAの歩みは、より効率的かつ効果的な調達組織となるために必要な要求事項の的確な認識を発端とした変革の物語であった。MOSA戦略の適用範囲の拡大は、PEO(航空)による将来の航空機に高度な柔軟性と適応性を備えた技術改善を迅速な適用という相乗効果をもたらす。多くの人から注目されるこの冒険の旅に、さらに多くの人が参加して共に歩むことを期待している。
マット・サイプ氏は、アラバマ州レッドストーン工廠航空プログラム・エクゼクティブ・オフィスのMOSA(Modular Open Systems Approach, モジュラー・オープン・システム・アプローチ)トランスフォーメーション・オフィスの所長である。
【訳者注】MOSAとは(Google AIが開発した言語モデルであるBardによって生成されたものです。)
アメリカ陸軍航空における「Modular Open Systems Approach」(モジュラーオープンシステムアプローチ)とは、航空機やそのシステムをモジュール化することで、オープンで相互運用性の高いシステムを構築するアプローチです。
従来の航空機システムは、機体、エンジン、センサー、武器など、各コンポーネントが密結合した構造でした。そのため、コンポーネントの更新や交換には、機体全体の改修が必要となり、コストや時間がかかりました。また、異なるメーカーのコンポーネントを組み合わせることが難しく、相互運用性も低いという問題がありました。
「Modular Open Systems Approach」では、航空機やそのシステムを、機能ごとにモジュール化します。各モジュールは、標準化されたインターフェイスで接続されるため、異なるメーカーのモジュールを組み合わせて使用することができます。また、各モジュールは、アップグレードや交換が容易なため、機体全体の改修を必要とせずに、最新の技術を導入することができます。
アメリカ陸軍は、このアプローチを採用することで、以下のメリットを期待しています。
・コスト削減
・運用の効率化
・技術の迅速な導入
・相互運用性の向上
「Modular Open Systems Approach」は、アメリカ陸軍の次世代戦闘機「F-35 Lightning II」や、次世代ヘリコプター「Future Vertical Lift」などに採用されています。
具体的には、以下の点に特徴があります。
・モジュール化: 航空機やそのシステムを、機能ごとにモジュール化します。
・標準化: 各モジュールは、標準化されたインターフェイスで接続されます。
・オープン性: 異なるメーカーのモジュールを組み合わせて使用することができます。
・アップグレード性:各モジュールは、アップグレードや交換が容易です。
このアプローチは、アメリカ陸軍航空の近代化に重要な役割を果たすと考えられています。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2023年10月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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2件のコメント
規格が統一化されたハードウェアを用途や予算によって入れ替えたり追加できるパソコンに発想が似ているなあと、素人ながらに思いました。
まったく同感です。
何十年も前にその発想を生み出したIBM、インテルそしてマイクロソフトはすごいですよね。