危険を回避せよ!
その日の飛行は、フォート・リバティーの飛行空域で行う、ごく一般的な訓練任務のひとつに過ぎませんでした。私たちは北部訓練場(Northern Training Area, NTA)と呼ばれる場所で、空軍戦闘管制官の訓練を支援するための夜間のチーム飛行を行ないました。すべての任務が順調に終了して着陸すると、機長たちは降機し、被支援部隊と訓練成果を確認し合いました。
任務の終了予定時刻が近づいていましたが、被支援部隊との確認はどうしても行わなければならないものでした。機体に戻ってきた機長たちは、予定よりも10分遅れていたので直ちにシートベルトを締め、離陸を開始しました。
北部訓練場は(フォート・リバティー内にあって、空軍が運用している)ポープ陸軍飛行場のクラスC空域の中心部にあり、私たちが飛行した地域はその飛行場の北約3マイルの場所にありました。そこから(フォート・リバティーの南東側にある)シモンズ陸軍飛行場に帰投する際には、通常、ポープ陸軍飛行場の外側を管制空域の下をくぐりながら飛行する経路を使用します。しかし、固定翼機の離発着状況によっては、飛行場内を横断して直接進入することが許可される場合もありました。
長機の副操縦士だった私は、自機位置(飛行場の北約2マイル)をポープ陸軍飛行場に通報し、シモンズ陸軍飛行場への直接進入を要求しました。管制官からは、要求を了承するという返信があり、加えて1機のC-130がランウエイ23に着陸するため8マイル手前のファイナルを飛行中であるという情報提供がありました。そして、飛行場の北1マイルに到達したならば再度通報するように指示されました。
北部訓練場からシモンズ陸軍飛行場に直接進入する経路は、ランウエイ23のアプローチ・エンドから東に約0.5マイルの位置を通過します。ポープ陸軍飛行場の北1マイルに到達したことを管制官に通報すると、C-130が4マイル手前を最終進入中なので「迅速に」横断するように指示されました。OH-58Dを知っている人なら誰でもわかることですが、この機体の「迅速さ」は高性能機のそれとは程遠いものです。それでも、私たちはC-130が到着する前に滑走路のセンターラインを越えようと最善を尽くしました。
しかし、センターラインまで約4分の1マイルの地点で、C-130が目視できる状態になりました。あまりにも近すぎるので、このまま進入を続けることは良い結果をもたらさないと判断しました。私は、僚機に注意喚起した後、C-130を避けるために右方向に180度の急旋回を行ないました。その後、管制塔に対し、着陸機を避けるために飛行場北側で待機したことを通報しました。
教訓事項
この事案は、致命的な結果を招いたものではありませんでしたが、いくつかの教訓を与えてくれました。まず、「急がない」ということです。このような状況に陥ってしまったのは、計画からの遅れを取り戻そうとしたためでした。計画をより周到に行って、遠回りして帰投しても問題が生じないようにしておくべきでした。
第2に、「航空管制官の許可に盲目的に従わない」ということです。管制官がパイロットよりも経験豊富であるとは限りません。自分自身が「良くないアイデアだ」と直感的に思った行動は、そのとおりのものである場合が多いのです。与えられた許可に同意できない場合は、ちゅうちょせず別の要求を行ない、自分や他の搭乗員を危険から守るべきなのです。
訳者注:2023年6月2日、フォート・ブラッグ(Fort Brag)はフォート・リバティー(Fort Liberty)に改名されました。この改名は、人種差別を行っていた南軍関連の名称を変えていく取り組みの一貫として行われたものです。
出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年05月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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