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陸軍航空の情報センター

航空事故発生状況: UH-60Mのハード・ランディング

VMC(Visual Meteorological Conditions, 有視界気象状態)で進入中のUH-60Mが接地する際、PC(Pilot in Command, 機長)の過大な操作により、ハード・ランディングに至った。メイン・ローター・ブレードがテールブーム後端の第3セクション・ドライブシャフトに接触し、当該ドライブシャフトがインターミディエイト・ギアボックスの付近で切断された。

発生前の状況

事故機は事故発生時、昼間の地域慣熟訓練飛行を実施していた。その任務は、その日の2つ目の任務であった。第1の任務は、コールド・ロード(エンジン停止状態での搭乗・降機)およびホット・ロード(エンジン運転状態での搭乗・降機)訓練を実施する歩兵部隊の兵員を輸送することであった。その後、搭乗員は基地に戻り、制限空域内での単機による地域慣熟飛行という第2の任務を開始した。計画された経路は、基地を出発し、制限空域を反時計回りに横断する規定飛行ルートに入り、複数のFLS(Flight Landing Strips, 飛行場外離着陸場)でアプローチと着陸を実施した後、基地に帰投するというものであった。その飛行スケジュールは1週間前に編隊飛行として承認され署名されていたが、それには単機による地域慣熟飛行が含まれておらず、大隊長の承認を欠いたものであった。

事故機の搭乗員が当該飛行任務を計画したのは、前日のことであった。PCは資格を有する現役のUH-60Mパイロットであり、事故発生時は操縦桿を握っていた。ブリーフィングは任務ブリーフィング士官によって行われた。RAW(Risk Assessment Worksheet, リスク・アセスメント・ワークシート)には、慢心と地域への慣れ、および搭乗員の任務日の後半に実施される局地慣熟飛行であることが危険要因として記載されていた。本任務を低リスクと判断した中隊長は、AR(Army Regulation, 陸軍規則)95-1「航空飛行規則」および任務承認手順に従い、FMAA(Final Mission Approval Authority, 最終任務承認権者)としてRAWに署名した。

発生状況

事故が発生したFLS付近で地域慣熟飛行を実施していた事故機のPCは、アプローチがFLSの砂利部分へのエア・アサルト・ランディングになることを搭乗員に伝達した。PC(操縦桿を握った状態)は、ファイナル・アプローチを確立した際、エア・アサルト・ランディングはDVE(Degraded Visual Environment, 視程制限環境)着陸と似ていると述べた。PCはFLSのアプローチ端まで降下を続け、航空機右側のクルー・チーフはテール・ホイールが地面に接触する直前にテール・クリアを、次いでテール・ダウンをコールした。最初にテール・ホイールが高い降下率で地面に衝突し、その直後にメイン・ランディング・ギアが接地した。この衝撃とパイロットの操縦入力が組み合わさり、メイン・ローター・ブレードがテール・ブームに接触し、航空機のテール・ブーム、メイン・ローター・ブレードおよび関連するテール・ローター・ドライブシャフト・コンポーネントに重大な損傷を発生させた。

安全調査委員会は、PCがコレクティブを急激に下げるとともに、それに合わせてサイクリックを速やかに中立にする操作を怠ったため、メイン・ローター・システムが航空機のテール・ブームに接触し、事故に至ったと結論付けた。

発生後の状況

メイン・ローター・ブレードがテール・ブームに衝突した後も、No.1およびNo.2エンジンは運転を継続し、約5分間にわたってメイン・トランスミッションおよびテール・ローター・ドライブシャフトの残存セクションを駆動し続けた。事故機の搭乗員は、ワーニング、コーションおよびアドバイザリの内容を把握した後、通常の手順でエンジン・シャットダウンを完了した。事故後の火災は発生せず、搭乗員に負傷者はなかった。

事故機の搭乗員は、エンジンをシャットダウンし、全てのメイン・ローター・ブレードが停止した後、降機した。搭乗員は飛行運用班に通報し、部隊の航空事故対処計画を発動した。事故機の搭乗員全員が薬物検査および医学的評価のため航空医療・衛生施設(Aviation Consolidated Aid Station)に搬送された。

搭乗員の飛行履歴

PCは総飛行時間が537時間、PCとしての飛行時間が52.8時間、UH-60Mでの飛行時間が458.2時間、NVG(Night Vision Goggles, 暗視ゴーグル)の飛行時間が176.7時間であった。副操縦士は総飛行時間が311時間、UH-60Mでの飛行時間が228時間、NVGの飛行時間が80時間であった。

考察

陸軍においては、過去10年間で、エア・アサルト訓練を実施中の同種事故が3件発生している。過去の事例においては、空中機動作戦中のDVEでの着陸時に、ブラウン・アウトまたはホワイト・アウト状態での着陸を試みた結果、操縦可能な状態での地面への衝突に至っていた。

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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