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陸軍航空の情報センター

飛行前点検で何を見落としているか?

CW2(上級准尉2)デイモン・ゴエツェ(152E/ASO)
第6騎兵連隊第1大隊
カンザス州フォート・ライリー

航空学校で真っ先に教わり、それ以来すべての飛行前に欠かさず行ってきた飛行前点検ですが、皆さんは何を見落としているでしょうか。それを知るすべはありません。誰もが、チェックリストを飛行前点検手順の基本的な枠組みとして出発します。そこに、航空学校の教官操縦士(Instructor Pilot, IP)が飛行前点検の授業で指示した確認項目を積み重ねていきます。部隊に配属されれば、機体の部品について今さらIPに質問することなど到底できません。質問すれば、逆に問い返されて恥をかくだけだからです。訓練が進み、飛行時間を0.1時間でも稼ごうと整備確認試験飛行(Maintenance Test Flights, MTF)をこなしているうちに、年季の入った試験飛行操縦士(Maintenance Test Pilot, MTP)から新たに確認すべき点をいくつか教わることもあるでしょう。そうしてついに独り立ちした操縦士(Pilot, PI)、すなわち最高練度であるレディネス・レベル1(Readiness Level 1, RL1)となり、『ベビー・チャック・イェーガー』(若き天才パイロット)と呼ばれるにふさわしい腕前であることを、皆に見せつける時が来るのです。しかし実際のところ、すべてを知り尽くすことなど不可能です。ガンジーはかつてこう述べました。「経験によって得た知識は、書物による知識よりもはるかに優れており、多くの場合、より役に立つ」

勤務の中で出会う一人ひとりが、それぞれの経験から得た教訓を持っています。ニアミスや事故の経験、あるいは准尉(Warrant Officer 1, W-1)時代に年季の入ったMTPから受けた教えなど、それぞれが実体験を通じて学んできた結果、飛行前点検の手順は一人ひとり少しずつ異なっているようです。これらは、次の世代へ確実に伝えていかなければならないことです。周囲には常に豊富な知識があふれていますが、それを尋ねるには時に勇気が必要です。航空の世界では、自分の知識不足を素直に認めてしまうのが一番だと私は感じています。結局のところ、目指すべきは常に上達し、自分がなり得る最高の操縦士になることではないでしょうか。

ある日、飛行班で、手が空いた時に行えるちょっとした操縦士訓練のテーマについて、皆でアイデアを出し合っていました。そこで誰かが、飛行前点検をやってはどうかと提案しました。経験豊富な操縦士や若手の一部がどのような視線を向けたかは言うまでもありません。「いまさら、そんな基礎的なことを確認する必要があるのか」という、冷めた視線です。幸い、別の先任操縦士がこの案を後押ししてくれました。彼自身がそれまで飛行前点検で確認したことのなかった新たな点を最近学んだばかりだと、付け加えてくれたのです。この案に対する場の空気が和らぎ始めると、皆、誰かに教えられるまで知らなかったという経験談を語り出しました。ある機長(Pilot in Command, PC)からは、シートベルトのロック・アンロック用ノブの位置をずっと知らなかったという話まで出ました。機長に昇任する頃には、そんな単純なことを今さら尋ねるには手遅れだったというのです。親しい友人に打ち明けて初めて、シートベルトが誤ってロックしてしまった場合の解除方法を知ったといいます。この訓練は、このようなやり取りを経て、経験レベルを問わず全員にとって有益だという結論に至り、訓練予定表に組み込まれることになりました。

訓練当日、機付長(crew chief)と操縦士全員が、チェックリストを片手に機体のもとに集まりました。チェックリストを一項目ずつ確認しながら、飛行前点検の各段階で各自が何を確認しているかを話し合いました。適正な許容範囲や、特定の構成品に不具合の兆候が現れた際の注意点についても、MTPや機付長から意見が寄せられました。この訓練は、長年蓄積されたニアミスの経験談や教訓であふれており、それらが各人の飛行前点検で確認する視点を形作ってきたことがうかがえました。最終的に、参加者全員が教訓を共有し、より豊富な知識と、より徹底した飛行前点検の手順を身につけて訓練を終えました。

この日の訓練は、より徹底した飛行前点検の実施方法を学ぶ機会となっただけでなく、隊内における、より風通しの良い文化を醸成することにもつながりました。陸軍全体には、無能だと思われることを恐れて質問をためらった経験を持つ操縦士が多いのではないかと思います。他者の経験や失敗、そこから得た教訓を学ぶことで恩恵を受けられる若手操縦士は少なくありません。若手操縦士が同じ教訓を苦い経験を通じて改めて学ぶことのないよう、こうした知識を継続的に継承していくことが極めて重要です。

私たちは既に知識を持っています。しかし、それを共有する取り組みには改善の余地があります。また、経験不足や能力不足と見なされることを恐れずに議論できる、開かれた文化を築いていかなければなりません。誰もが同じ経験をしているわけではない以上、私たち全員に学ぶべきことがあるはずです。この記事を読んでいる皆さんも、同僚同士でこうした会話を交わし、飛行前点検に関する訓練を実施することをお勧めします。自分が何を見落としていたかに、きっと驚かされることでしょう。

CW2(上級准尉2)デイモン・ゴエツェ(152E/ASO) 第6騎兵連隊第1大隊 カンザス州フォート・ライリー

飛行前点検に関する詳細情報は、以下のリンクをご参照ください。
AH-64https://safety.army.mil/MEDIA/Video-Library/Video-Player/VideoId/573/aviation-preflight-risk-management
UH-60(CACが必要):https://safety.army.mil/MEDIA/Video-Library/Video-Player/VideoId/55

訳者注:レディネス・レベル(Readiness Level, RL)とは、米陸軍航空部隊における操縦士の練度段階です。RL3(基礎)、RL2(戦術)、RL1(最高練度・実戦レベル)の3段階に区分されます。RL1は、実戦環境に適合したすべての訓練を修了し、「完全な任務遂行能力(Fully Mission Qualified)」を有すると認定された状態を指します。

訳者コメント:本記事の主眼は、飛行前点検のチェックリストそのものではなく、経験を通じて得た知識を階級や経験年数を問わず共有する文化づくりにあります。文中の「レディネス・レベル」は米陸軍操縦士の練度区分であり、陸上自衛隊に直接対応する制度はありません。また「PI」は搭乗区分ではなく、教官なしで飛行できる練度に達した操縦士を指す用法として訳出しています。
                               

出典:What are you Missing on Preflight?, FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年06月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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