クルー・チーフは、オスプレイの飛行に不可欠
MV-22Bオスプレイが、ローターを上に向けて着陸する際、パイロットからは、機体の後方、側方および下方を確認できない。そういった場合、オスプレイの周囲を監視し、側方または後方ハッチから機外の見張を行ってパイロットに警告を発するのは、クルー・チーフの役割である。クルー・チーフは、これ以外にも、機体の整備、貨物の搭載、搭乗者の安全の確保など、コックピットの外で起こることすべてに責任を有している。
クルー・チーフがいなければ、サーキット・ブレーカーなどのパイロットの手が届かないところにあるスイッチ類を操作したり、飛行中に機体の不具合を排除したりできない、と第3海兵航空団第163海兵中型ティルトローター飛行隊「リッジ・ランナー」所属のパイロットであるマット・ボールドウィン少佐(ワシントン州ベルビュー出身)は説明した。「クルー・チーフなしで飛行することは、窓のない車を運転するようなものなのです」とボールドウィンは語った。「クルー・チーフが搭乗していることによって、後席に自動車整備士を乗せて運転するような安心感が得られるのです」
機体に貨物を積み込んだり、武装システムによる射撃を行うことも、クルー・チーフの任務である。搭載貨物の重量重心を確認し、機体への固縛を行うとともに、搭乗者が緊急時の対応やシート・ベルトの正しい着用法を理解していることも確認する。飛行要領は、日々違っていて、任務のたびに新しい冒険が生まれる、と第163海兵中型ティルトローター飛行隊所属のジェイソン・L・ホッツェ3等軍曹(テキサス州フォートワース出身)は説明した。「クルー・チーフは、責任の重い仕事です」とホッツェは言った。「ただし、クルー・チーフになることで得られることも、非常に多いのです」
クルー・チーフになれば、整備および飛行安全に関する資格を得ることができる。また、武装操作教官および関連する指導員としての資格も与えられる。飛行援助の要領を身に着けることは、機体の整備に関する技能を向上させることにもつながる、とホッツェは説明した。クルー・チーフは、航空機の命名法から武装システムの取扱まで、すべてのことを知らなければならないからである。「一番大変なことは、何でも知っていなければならないことです」とホッツェは語った。「私は、取得可能な最高の資格をすでに与えられていますが、そのためには、たくさんのマニュアルを隅から隅まで勉強しなければなりませんでした。重要なことは暗記していなければなりませんし、分からないことを調べることができなければならないのです」
海兵隊以外の軍種にも、射手、ロード・マスター、整備員など、航空機に搭乗する職域は多くあるが、それらは、それぞれ別々の飛行任務に応じた特別の役割を持っている。オスプレイのクルー・チーフは、任務遂行に必要なことは、何でもできなければならない、とホッツェは付け加えた。
オスプレイにクルー・チーフがいなければ、パイロットや搭乗者、そして地上戦闘員の安全を十分に確保することは、不可能だと言ってよいであろう。