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アラスカ陸軍州兵航空部隊がダストオフ協会最優秀レスキュー賞の受賞者に決定

アラスカ州兵広報室 特技兵 グレース・ネチャニッキー

2月初旬、アラスカ陸軍州兵の第207航空連隊第2-211全般支援航空大隊G中隊第1分遣隊に所属する4名の隊員が、昨年秋のレスキュー任務の遂行に関し、ダストオフ協会(DUSTOFF Association)の2021年最優秀レスキュー賞(Rescue of the Year)の受賞者に選ばれた。

2021年9月15日午後1時30分頃、羊狩りをしていたハンターがインリーチ衛星通信機で発信したSOS信号をアラスカ州警察が受信した。そのハンターは、アンカレッジの北東40マイル、ニック川渓谷沿いのコットンウッド・クリーク付近で軽度の凍傷を負い、食料が欠乏して動けなくなっていた。2日前に始まった激しい降雪のため山から降りられなくなり、標高5,750フィート(約1,753メートル)にある50度の斜面上の1メートル四方程の岩棚に2日間留まっていたのである。

遭難信号を受信したアラスカ州警察は、アラスカ州救助調整センター(Alaska Rescue Coordination Center)を通じ、州兵に応援要請を行った。アラスカ州救助調整センターからの連絡を受けた第207航空連隊は、大尉コディー・マッキニーを機長として任務を実行することに決し、ホイスト装置を搭載したHH-60Mブラックホークを患者後送要員と共に離陸させる準備を開始した。

「電話を受けたとき、雲高はハンターがいる場所よりも低いと予報されていました。現場にたどり着けるかどうかも分からない、非常に困難なレスキュー任務となるのが明らかだったのです」と、第2-211全般支援大隊G中隊長兼州陸軍航空参謀副長でもある機長のマッキニー大尉は述べた。「私たちが考えたのは、『我々がやらなかったら、いったい誰がやるんだ?』ということでした。天候悪化時の対処要領について打ち合わせた後、たとえ現場にたどり着けない可能性があっても、とにかく離陸することに決心しました。」

マッキニー大尉、任務操縦士の上級准尉2ブラッドレー・イエルゲンセン、クルー・チーフ兼ホイスト操作員の2等軍曹ソニー・クーパー、航空救急医療士兼ホイスト救助員の1等軍曹ダミオン・ミンチャカがブライアント陸軍飛行場を離陸したのは、ハンターがSOSを発信してからわずか1時間後の午後2時30分頃のことであった。

マッキニー大尉によれば、搭乗員たちは、この時点ですでに救出任務を必ず行うと決心していたという。気象予報によれば、現地の気象はさらに悪化するものと見積もられており、この時点で救助しなければ、少なくともあと2、3日は動けないだろうと考えられたからである。「その時、山を包み込んでいる何層もの雲の中に小さな穴を発見し、そこから中に入ることができました」とマッキニー大尉は語った。「ただし、複数の雲層を潜り抜けるということは、雲が動いた場合に穴が塞がってしまう危険性がありました。このため、直ちに救助を完了し、すみやかに離脱することが必要でした。」

2022年2月17日、エルメンドルフ=リチャードソン統合基地内にあるブライアント陸軍飛行場において、HH-60Mブラック・ホークの前でポーズをとるアラスカ陸軍州兵第2-211全般支援航空大隊G中隊所属の上級准尉2ブラッドレー・イエルゲンセン、1等軍曹ダミオン・ミンチャカ、大尉コディー・マッキニーおよび2等軍曹ソニー・クーパー

雲層を通過した搭乗員たちは、ハンターの救助にダイナミック・ホイストと呼ばれる要領を用いることにした。ヘリコプターを目標上空でホバリングさせるスタティック・ホイストとは異なり、機体を長時間ホバリングさせる必要がなく、被救助者の回収をより迅速かつ正確に実施できるからである。

「目標に向かって約60から70ノットの速度で飛行しながら、ドアを開放し、ホイスト救助員を機外に繰り出します」とマッキニー大尉は説明した。「そして、ホイスト救助員を降下させながら、目標に接近するのです。」

患者後送チームは、視界が制限されるホワイトアウト状態の中でこれを行わなければならなかった。「例えるならば、卓球ボールの中にいるようなものです。周りがすべてが真っ白なので、視覚的補助目標として使えるものが全くと言ってよいほどありませんでした」とマッキニー大尉は説明を続けた。「その上、約6,000フィート(約1,829メートル)の高地において、人がやっと立てるほどの狭い場所にホイストを行うというのは、それだけでも高度なテクニックを必要とすることなのです。」

岩棚に接地したミンチャカ軍曹は、ハンターが落下しないように山側に押さえつけながら、航空救助ベストを装着させた。わずか1分ほどで、ハンターは無事にヘリコプターまで吊り上げられ、パーマー市営空港まで空輸された。

4人の搭乗員に対するレスキュー賞の授与は、5月21日、テキサス州サンアントニオで行われるダストオフ協会年次受賞式で行われることになっている。

1980年に設立されたこの協会は、陸軍の航空患者後送に参加または支援した兵士、将校、家族などのための非営利の退役軍人組織である。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2022年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    現役の頃、「ダイナミック・ホイスト」は、訓練したことはありませんでした。
    今は、こういった実戦的な訓練も行われているのでしょうか?

  2. Water より:

    60-70ノットというのは流石に厳しいのではないかと思いますが、ヘリがホバ移行する前に降下員を出すのはやっていると思います。

    海保(もしかしたら空自の救難)が結構なスピードで進入しながら船に降下員を下ろすのは見たことがあります。
    警察とか消防の方が良くやっているかもしれませんね。

    https://youtu.be/eb3FwFoXlhg

    • 管理人 より:

      コメントありがとうございます。
      動画も参考になりました。
      「ホバー移行する際に振り子運動が始まってしまうのではないか?」と心配していたのですが、そうでもないですね。