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陸軍航空の情報センター

テクニカルトーク:電波影響範囲(HIRTA)情報の根拠

カレン・コンプトン

航空機搭乗員であれば、電波影響範囲(High Intensity Radio Transmission Area, HIRTA)情報を把握し、その重要性を理解しているはずである。ところで、その情報自体は、何に基づいて作成されているのであろうか?

電磁環境がもたらす作用(electromagnetic environmental effects, E3)は、電磁干渉(electromagnetic interference, EMI)、電磁両立性(electromagnetic compatibility, EMC)、電磁感受性(electromagnetic vulnerability, EMV)などの多くの性状を有している。これら3つの性状は、いずれも航空機の安全運航に影響を及ぼすため、航空機の新規開発または改修のたびに評価され、その後も新規開発または改修された電子機器が取付、搭載または運用されるたびに繰り返されている。その評価は、器材単体の試験と機体全体の試験によって行われる。

電磁干渉(EMI)試験は、主に器材単体で行われる。専用の実験室において、運用中にさらされる可能性のあるさまざまな周波数や強度の電磁波に対する感受性だけでなく、機体上の他の機器に影響を及ぼす可能性のある電磁波の放出性についても確認される。この試験の結果、ボンディング(接地)、ケーブルのシールド、コネクタのフィルタリングなど、電子機器の感受性や放出性を低減するための設計変更が必要と判断される場合も少なくない。

電磁両立性(EMC)および電磁感受性(EMV)試験は、新型または改修された電子機器を航空機に初めて搭載する場合に実施される。これらの試験は、各機種に固有のものであることに注意しなければならない。電磁両立性(EMC)および電磁感受性(EMV)試験で搭載機器に作動不良が生じた場合は、耐空性情報( Airworthiness Release, AWR)が発行され、警告、注意または着意事項が搭乗員に提供される場合もある。

電磁両立性(EMC)試験(加害ー被害機器試験とも呼ばれる)は、機体レベルで行われ、搭載されているの電気・電子機器の電源を順次に投入して作動させ、それぞれの機器が他の搭載機器に及ぼす影響の有無を確認するものである。この試験で問題が発見された場合は、搭載機器の再配置、ボンディングやケーブルへのシールドの追加などの設計変更が必要となる可能性がある。

レッドストーン試験センターにおいて電磁感受性(EMV)試験を実施中のCH-47F

電磁感受性(EMV)試験も機体レベルで行われ、さまざまな周波数および強度の電磁エネルギーを生成できる非常に特殊な施設に航空機を配置して行われるものである。すべての飛行および任務システムの電源が投入され、機体の外に設置されたアンテナが発するさまざまな周波数および強度の電磁波にさらした状態での異常の有無が確認される。自己防護装置(Aircraft Survivability Equipment, ASE)などの特定の任務システムに関しては、試験間の作動状態および誤作動の発生を監視するための専用機器が用いられる場合もある。

この電磁感受性(EMV)試験をすべての周波数および強度領域について行うのは非現実的である(しかも、多大な費用および時間を要する)。このため、機体および搭載機器の既知の高感受領域に対する試験のみが行われる。また、友軍、敵軍および民間の電波発生機器などが発する電波の周波数帯が用いられる。

電磁感受性(EMV)試験の結果に基づき、飛行および安全上緊要な系統に影響を及ぼす電波発生機器からのスタンドオフ距離が計算される。そして、このスタンドオフ距離に基づいて、陸軍が運用する機種ごとに電波影響範囲(HIRTA)情報が作成される。電磁感受性(EMV)試験には、数カ月の期間が必要で、多大の時間および費用を必要とするため、主要な改修が行われた場合および複数の改修が同時に行われた場合のみに実施されるのが通例である。このため、電波影響範囲(HIRTA)情報は、たとえ数年前に設定されたものであっても、直近の電磁感受性(EMV)試験に基づいたものである限り、引き続き有効である。

友軍および敵軍の電波発生機器は急速に発達しており、干渉を引き起こす可能性のある機器についての情報がすべて提供されているわけではないことに注意しなければならない。いかなる送信機および関連するアンテナの周囲においても、最低限のスタンドオフ距離を確保する着意が必要がある。

カレン・コンプトンは、アラバマ州レッドストーン工廠に所在する戦闘能力開発コマンド航空・ミサイルセンターのシステム即応局任務機器部門の電気技師である。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2021年10月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    現役の頃は、この記事でいうところの電磁両立性(EMC)試験を電磁干渉(EMI)試験と呼んでいた気がします。

  2. 管理人 より:

    出典などの表示にエラーが生じています。現在、修復作業中ですのでご了承ください。