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陸軍航空の情報センター

UH-1の思い出

Aviation Assets管理人

写真:陸上自衛隊HP

はじめに

UH-1は、1956年に初飛行し、1959年にアメリカ陸軍に採用された多用途ヘリコプターです。最初のうちは、患者後送機として使われていましたが、時間が経つにつれて、兵員輸送機としても使われるようになりました。そして、1965年にベトナムで歴史上初めての大規模な空中機動が行われると、より多くの機体が調達されるようになりました。製造元のベル社の工場からは、まるでドーナツのようにUH-1が出荷されていたといいます。
日本の陸上自衛隊も、1962年にUH-1B、1972年にUH-1H、1991年にUH-1Jを導入し、2009年までに350機以上の機体を調達してきました。2023年3月現在の保有機数は112機で、陸上自衛隊が保有する航空機の中で最も機数が多くなっています。全国の航空科部隊に配備されたUH-1は、国内における訓練や災害派遣、そして、パキスタンでの国際緊急援助活動など、さまざまな場面で活躍をしてきました。

なんてったってシーソー・ローター

UH-1の特徴は、何と言っても、メイン・ローターにシーソー型ローターが用いられていることです。このローターの特徴は、2枚のローター・ブレードを結合しているローター・ハブが、公園にある遊具のシーソーのように一方が下がるともう一方が上がるようにローター・マストに取り付けられており、かつ、その支点がおもちゃのヤジロベエのようにローター・ハブよりも高い位置に設けられていることにあります。このため、回転中にローターに加わる力をうまく逃がすことができ、他の方式のローターに比べて、構造を簡単にすることができるのです。その代わり、操縦性があまり良くないのと、「パンパン」という独特な音を発生しやすいという欠点があります。この音は、「ベル・ノイズ」と呼ばれて嫌われていますが、私は、その単気筒エンジンのオートバイのような頼もしい音が大好きです。

ブレード交換に欠かせない野球バット

メイン・ローター・ブレードは、人の腕の太さほどもあるピンでハブに固定されています。ブレードを交換する時に、このピンを抜き差しするのは簡単ではありません。特に差し込む時は、ブレードの穴とハブの穴をピッタリと一致させてから差し込まないと絶対に入りません。中途半端な状態でピンを叩き込んだりとすると、間違いなく途中で引っかかってしまい、入れることも抜くこともできなくなってしまうのです。私が整備員だった頃は、ベテランの整備員が、野球のバットを差し込んで、「コンコン」と叩いて修正していました。「よし」と言われたならば、ピンを一気に押し込みます。「スコン」と入った時の感覚が忘れられません。

スタビライザー・バーは機械式の安定装置

ローター・ハブには、ローター・ブレードと直角に交わるように、スタビライザー・バーと呼ばれる両端におもりのついた棒が取り付けられています。スタビライザー・バーは、綱渡りをする曲芸師が持つ棒と同じような働きをします。機体が傾いても、スタビライザー・バーは、常に同じ軌跡で回転しようとするのです。そのスタビライザー・バーとブレードは、ピッチ・リンクと呼ばれるロッドでつながっています。このため、機体が傾くと、その傾きの度合いに応じてブレードの迎え角が変更され、機体の姿勢を元に戻すように働きます。UH-1には、電子式の安定性増大装置や自動操縦装置は付いていませんが、このスタビライザー・バーがあるおかげで、高い安定性を保てるようになっています。

エンジンキーはあるの?

一般の方から「ヘリコプターって、エンジンキーってあるの?」と聞かれることがよくあります。その答えは、「あるものも、ないものもある」ということになります。UH-1の場合は、UH-1BやUH-1Hにはありませんが、UH-1Jにはイグニッション・キーと呼ばれる、エンジンキーと似たものが付いています。計器盤の右席側にあるこのキーは、エンジンを始動させる前に鍵を差し込んで「オン」にするのは自動車と一緒ですが、バッテリーからの電力でエンジンを回転させるスターターのスイッチは、これとは別にコレクティブ・スティックに付いています。さらに変わっているのは、エンジン始動の途中で始動用燃料の供給を止めるために、イグニッション・キーを「オフ」にしてしまうことです。このため、飛行中は、イグニッション・キーが「オフ」というヘンテコな状態になっています。

乗り心地の良いのはどこ?

UH-1HやUH-1Jの後席には、増槽燃料タンクを取り外せば、最大11名の人員が搭乗することができます。パイロットのすぐ後ろには、1人掛けの椅子が2つあります。この座席は、いわば上座として扱われていて、キャビンに搭乗する者のうち、偉い人が座ることが多いです。その後方には、5人掛けの椅子があります。前にある1人掛けの椅子に比べると貧相に見えますが、実は高さも柔らかさもこちらの方がちょうど良く、私は好んでこちらに座っていました。そのさらに後方には、横向きの2人掛けの椅子が左右に1組ずつあります。こちらは、一旦座ってしまうと、着陸するまで前方に移動できなくなるのが不便です。

スリング・フックは振り子式

機体の中央下部には、機外に荷物をぶら下げるためのスリング・フックが装備されています。UH-60やCH-47のスリング・フックは、機体の下面に固定されていますが、UH-1のそれは、トランスミッションのすぐ下のフレームから、コードのついた電球のようにぶら下がっており、機体の下面には、人が入れるくらいの穴があって、振り子のように揺れ動くことができるようになっています。しかも、回転式のイスのように、クルクルと回転するようにもなっています。このため、吊り下げた荷物が揺れたり回転したりしても、機体にその動きが伝わりにくく、安定した飛行ができるのです。

ホイスト装置は部隊装備

モーターの力でケーブルを巻き上げ、人を吊り上げて救助するためのホイスト装置は、部隊ごとに数台が装備されており、必要に応じて機体に取り付けるようになっています。キャビンの前後左右4か所に取り付け箇所がありますが、右側には増槽タンクを取り付けていることが多いため、左側に取り付けるのが一般的です。取り付けには、2~3名の人員と10分程度の時間が必要ですので、レスキュー待機に割り当てられた機体には、あらかじめ取り付けておくようにしています。ホイスト装置は、UH-60やCH-47にも装備されていますが、UH-1は機体重量が軽いのでローターから吹き降ろされるダウンウォッシュが弱く、高度10メートル程度の比較的低い高度で救助作業ができるという利点があります。

地上移動はちょっとマヌケ

UH-1の降着装置には、左右にスキーのように曲げられたパイプが付いている、スキッド式が用いられています。機体を地上で移動させる場合には、地面に接しているスキッドに油圧式ジャッキが付いたホイールを取り付けて、スキッドを地面から浮かせて行います。燃料を満タンにしたUH-1の重量は、3トンを超えますので、通常は、人力ではなく、けん引車と呼ばれる車両を使って引っ張ったり、押したりして動かします。でも、車輪は左右の2ヵ所にしかありませんので、テール・ブームの後端に付いているテール・スキッドを人が持って、上下に動かして機体のバランスを取りながら進む必要があります。車で引っ張っている航空機を人が歩きながら支えているのは、初めて見た人にはちょっとマヌケに見えるかも知れません。しかし、車輪式の降着装置を持つ機体と違って、けん引車のハンドル操作がそのまま機体に伝わるので、機体の方向を細かく調節でき、狭い場所に突っ込むことが可能です。

機中泊はおすすめできません!

野外においては、航空機を監視するため、隊員が交替で仮眠をとりながら見張りを行う必要があります。UH-1の機内は、椅子を取り外したり、畳んだりすれば、かなりのスペースができますので、ゆったりと仮眠できそうな気がしますが、実は、そうでもありません。ブレードが風にあおられるたびにマストに当たったり、降着装置がたわんだりするので、機体が揺れ、ギシギシと音を立てます。しかも、胴体は自動車以上に気密性や断熱性がありませんので、冬は寒く、夏は暑いです。もちろん火を使うわけにもいきません。というわけで、テントの方がずっと快適です。

おわりに

2019年3月、UH-1の後継機となる新多用途ヘリコプター試作機XUH-2が防衛省に納入されました。UH-2は、エンジンが双発になり、メイン・ローターが4枚ブレードになってシーソー・ローターではなくなってしまいましたが、基本的な構造はUH-1と同じですので、きっと故障が少なくて使いやすい機体になることでしょう。ただし、すべてのUH-1が退役するのは、まだ先のことになります。しばらくの間は、心地よい「ベル・ノイズ」を聞けそうです。

           

出典:Aviation Assets 2024年05月

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4件のコメント

  1. nish shin より:

    なんといっても、このヘリは映画「地獄の黙示録」の戦闘シーンの印象が強力です。
    米軍の騎兵隊という軍種が、今も馬をヘリに乗り換えて残っているというのも驚きでした。

  2. Lightstaff より:

    ヘリと言ったらUH-1が一番に頭に浮かぶな!
    どこを飛んでいてもすぐに分かるあのローター音が良い!