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陸軍航空の情報センター

テクニカルトーク:携帯電話と機内モード

軍属 デイブ・クリップス

写真提供:米陸軍開発司令部システム即応性総局

民間旅客機に搭乗する際、なぜ携帯電話を機内モードに設定する必要があるのか疑問に思ったことはありませんか?

搭乗ドアが閉まり、航空機が離陸のために地上滑走を始めた後も、あるいは離陸後でさえ、携帯電話で通話を続けている人を見たことがあるかもしれません。それでも航空機は問題なく作動しています。携帯電話は航空機の航法システムや通信システムに悪影響を及ぼしているようには見えませんし、ましてやより重要な飛行システムに影響を与えているようにも見えません。

まず、携帯電話の動作原理から始めましょう。携帯電話は、電源が入っているとき、「私はここにいます」というメッセージに相当する信号を発信して、携帯電話網への接続を常に求めています。携帯電話基地局は、その信号を「聞く」と、携帯電話との接続(ハンドシェイク)を確立します。携帯電話から基地局への信号と基地局から携帯電話への信号の周波数はわずかに異なっており、接続されている各携帯電話には他のすべての接続されている携帯電話とは異なる周波数が割り当てられます。(注:各基地局には利用可能な周波数の数に限りがあるため、使用量が多い時間帯には通話が困難になることがあります。)携帯電話は、接続を確立できない場合、「私はここにいます」という信号を送り続け、携帯電話基地局が応答するまで徐々に信号強度を上げていきます(声を大きくすることに似ています)。FCC(Federal Communications Commission, 連邦通信委員会)は、携帯電話やその他の携帯電子機器の信号強度を制限していますが、機内の電子機器に影響を与えるのに十分な無線周波数エネルギーが放出されます。ほとんどの状況では、飛行安全性に影響を与えるような干渉は生じませんが、通信システムにパチパチという音を引き起こす場合があります。小型航空機の場合は、電源が入っている携帯電話と影響を受けやすい電子機器との距離が旅客機よりもはるかに短いため、悪影響を受ける可能性が増大します。これが陸軍が陸軍機内での携帯電話の使用を禁止している主な理由です。

航空機内で電源が入っている携帯電話は、携帯電話網にも影響を及ぼします。旅客機のように高高度を高速で飛行する場合、航空機は特定の基地局との接続が可能な有効範囲を急速に通過します。電源が入っている携帯電話は接続を求めて声を大きくします。そして、基地局の範囲内に入っても、基地局までの距離が縮まる速度が速すぎて声を下げることができません。その結果、携帯電話は基地局の範囲内に入っても大声を出し続け、その信号はその送信周波数の近くの周波数で動作している他の接続を妨害します。したがってFCCは、飛行中は携帯電話を電源オフにするか機内モードにすることを義務付けており、その規則は、搭乗便の客室乗務員によって徹底されています。

これまで、飛行中の携帯電話の使用が航空機に与える影響と携帯電話網への影響について説明してきましたが、もう一つのより個人的な理由があります。携帯電話から信号を送信するにはエネルギーが必要であり、声を大きくしなければならないとき(接続を探している間、常に行っています)、エネルギー消費率が増加します。これによりバッテリーの消耗がはるかに速くなります。充電器を持ってきていなかったり、座席に電源コンセントがなかったりした場合には、着陸後に目的地まで行くために配車サービスを利用しようとしても、携帯電話のバッテリーがなくなっているかもしれません。

テクノロジーは常に進歩しており、旅客機が携帯電話基地局として機能できるようにする新技術が間もなく利用可能になります。欧州連合(European Union, EU)は2024年にその機能の提供を開始していますが、FCCはまだ承認していません。この機能が利用可能になれば、電話および動画・音楽視聴サービスの機内での利用が可能になります。これは一部の航空旅行者には歓迎されるかもしれませんが、私たちの多くは飛行中に外界から遮断された静かな時間を楽しんでいます。耳の遠い親族と何時間も話している人の隣に座ることを楽しみにしているわけではありません。

デイブ・クリップス氏は、アラバマ州レッドストーン工廠に所在するシステム即応性総局(Systems Readiness Directorate, SRD)の主任耐空性技術者です。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2024年02月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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